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第三都市

「じゃあそれで決定……っと」


 ギルド名をディメンションウェーブ対策委員会と入力して決定する。


「今、島主に呼ばれたプレイヤーは全員、ギルドに加入したペン」


 などと元サンタペックルが宣言すると俺達の前に帰路ノ写本らしき物が光と共に現れる。


 領地帰還ノ書

 ギルド領地に帰還出来る。永続アイテム。

 倉庫使用不可。


「島から出ても、いつでも帰って来てほしいペン。ペックル達は島主様達をいつでも歓迎するペンよ」

「これって、カルミラ島に帰る事が出来る道具って事で良いのかな?」


 領地ってカルミラ島だし。

 ……これってもしかしてカルミラ島以外にもこの手のイベントがあるんじゃないか?


「だろうね。しかし……これは便利なアイテムだね。使っても無くならない転送アイテムは便利だ」


 アルトはタダって言葉が好きそうだもんな。


「後は……島主様には更なる報酬があるペン」

「ん?」


 元サンタペックルが俺に手をかざす。

 すると俺の視界にメッセージが表示される。


 エクストラスキル・カモンペックルを習得!


 なんだそのスキルは。


「いつでもペックルを呼ぶ事が出来るペン。御用があったらお手伝いをするペン」


 いやー……別にペックルなんて必要ないと思うんだけどな。


「後は既に解放済みだからこれが出来るペン!」


 カモンペックルがパワーアップ!

 カモンブレイブペックルに変化!


 玉座の間で控えているブレイブペックルに視線が向く。

 いつでも応じますとばかりに敬礼された。

 ……ペックルって戦闘でも使えるのか?

 あ、確認したらしっかりとステータス周りが追加されている。

 やはりというか、ブレイブペックルは他のペックルよりもステータスが高い。

 防御系ばっかりだけどな。


「後は……開拓をしてくれた島主様からボクに名前を授けて欲しいペン」

「サンタペックルに名前を授けろって事だよな? じゃあサンタペックルで」

「まんまです。可哀想ですからしっかりと名前を授けましょうよ」


 硝子が名付けようとした俺に注意してくる。

 そうは言ってもなぁ……。

 俺は基本的にゲームではデフォルトネーム派だし。

 ……よし、デブペ――


「では開拓人鳥でどうでござる?」

「呼ぶ方の身になれよ、闇影。しかもそれはペックルの性質そのままじゃないか!」

「ではダークペックルでどうでござる? 後はキングペックルとか」

「キングペックルは良いな」

「それもそのまんまの名前じゃないですか!」

「ペックルの王様……絆くんのゲーム経験からデブペックルを出さないだけマシかもしれないね」


 それはさっき考えた。

 でもデブじゃないし。

 ……後で体形をいじったり出来そうだけどさ。

 というか、笛で呼ぶ方のペックルの方がデブっぽいだろ。


「もっと洒落た名前は無いんですか? サンタ帽子を被っていた子なんですよ? 授かり物と言う事でギフトとか」

「サンタクロースとか?」


 ふむ……。


「じゃあクリスマスからクリスで」

「南国で季節感ないですけど、サンタ帽子を愛用していたから良いですよね」


 硝子も納得。


「イエス・キリスト」

「名前負けするから却下」


 しぇりるはしぇりるで凄い名前を提案するもんだ。

 そんな訳で元サンタ帽子ペックルの名前はクリスと入力した。


「わかったペン! これからクリスと名乗るペン!」


 おお、発音まで俺達と一緒だった。

 中々良いAIをしているじゃないか。


「これで開拓は一区切りしたペン! じゃあ行くペンよ!」


 どこに?


『第三都市カルミラが解放されたペン! ここではギルドを作る事が出来るし、専用育成NPCペックルを雇用できるペン! 第一都市の港にある交流船からみんな挙って来てほしいペン!』


 なんて声がシステムメッセージで表示された。

 これは全体メッセージで、サーバー内の全プレイヤーが確認出来る様だ。

 やっぱりそうだったのか。


「予想通り都市解放のクエストだったって事だね」


 で、システム欄に色々とヘルプが追加されている。

 ギルドのシステム説明から作り方。

 専用育成NPCペックルの雇用と育成方法等。


 ギルドはカルミラ島の城にある受付で申請し、金銭支払う事で設立する事が出来る。

 前提条件として3人以上が入居出来るマイホームを持っていないといけないようだ。


 ……マイホーム。

 そんなの俺達持ってたっけ?

 ロミナやアルトは持っていそうだけどさ。


 それぞれ家にしていた建物か?

 確認すると俺達のギルドの家はカルミラ島になっている。

 全部俺達の家って扱いか?

 一応、俺の領地って扱いだからかもしれない。

 更に言えば城がマイホーム設定にされているような……随分と豪華なマイホームが出来たもんだ。


「これから島がどんどん賑やかになっていきますね」

「そうなんだろうな」


 南国で謎の開拓を強引にやらされ、都市解放クエストだったと後に判明したのは、納得しかねる所はあるが、良い。

 しかしなんだろうか、解放された自分達の楽園を他者に踏みにじられる様な、この変な感覚は。

 これはアレだな。

 既に一ヵ月以上滞在している場所に見知らぬ連中がやってくると聞いて、縄張りを荒らされる様な感覚と言うのが正しいかもしれない。

 島から出たかったのに、いざ島から出られる様になると出たくなくなるこの気持ち。

 天邪鬼か。


「絆くんもやっと島から出られると言うんじゃないかい?」

「そうなんだけど、うーん……」


 いざ出られる様になってもやる事を考えると微妙な所?

 まあ、外から人が来るのを城から見守りつつ、様子を見たら良いかな?

 どっちにしても俺の釣り生活にそこまで変化は無いと思う。

 で、ある程度余裕が出来たら第二都市の方へ釣りをしに行く!


「まあ良いや。じゃあ来島してくる連中に備え……るのかな? 今日ものんびりと生活して行こう」

「絆さんは相変わらずですね」


 硝子が呆れとも信頼とも言えるニュアンスで呟き、その日は解散となった。



 で、翌日からが色々な出来事が目白押しで起こり始めた。

 まず島に来たプレイヤー連中だな。

 船にぎゅうぎゅうになって乗ってきたらしい。

 ああ、もちろん交流船以外にも製造された船で来る事は可能になったそうだ。


 新しい都市という事で装備品や近くの狩り場をチェックする為に島中や島近隣を巡るプレイヤー達。

 装備品に関してはペックルが開いた武具店に始まり、ロミナが開いた店が大盛況となっている。

 ロミナ曰く、失敗作の武具さえも飛ぶように売れるのは圧巻の光景だったとか何とか。


 やはり島の外の連中はロミナと比べて二周りくらい腕が下だそうだ。

 強さに関しても同様。

 もちろん、近隣の海域でモンスターが出現する様になり、今の俺達からしたらそこそこの経験値をくれる。


 目玉はインスタントダンジョンだろう。

 入場料が設定出来て、プレイヤー達は挙ってダンジョンに挑むようになった。

 オープニングセレモニーと言った様子で祭り状態だったっけ。

 人が多くて酔いそうだった。


 商人も金の匂いに釣られて我先にって感じで市場区画は元より、いろんな所で出店を開いていたっけ。

 領主権限で変な所に店を開く事は出来ない様にしたけどさ。



 次が都市解放三日目辺りだったかな?

 俺は見てしまった。


「ふは……ふは……フハハハハハハハ!」


 アルトが城の……俺達のギルドの倉庫に集まる金銭を数えながら高笑いをしている光景に遭遇してしまった。

 島の施設利用、道具の売買等、税として徴収する金銭が俺の財布を通じてギルドの倉庫へと入って行くのだが、アルトに管理を任せている。

 元々そこまで俺は金を使用するライフスタイルをしていないからなぁ。


「これは良い! 完全に大成功の商売ドリームだ!」

「そ、そうか。よかったな」


 要するに金がいっぱい入って嬉しいみたいだ。

 楽しそうで何よりって感じだな。

 そのままアルトがハイテンションで俺に声を掛けてきた。


「絆くん、反応が薄いね。よくわかっていないのかい?」

「まあ」

「それは残念だ。これがゲームである事が非常に惜しいくらいの金が秒単位で流れて来るのは、商売人としても興奮を隠さずには居られないと言うのに……」


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