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紐なしバンジー

「で、アルトが消えた後は?」

「もう誰も頼る事が出来ないと拙者! 狩り以外宿に閉じこもってたでござる!」


 あー……そうなるのか。

 これについては本気で謝罪したい。

 悪意で闇影を追い詰めた訳じゃないのだが、結果的にそうなってしまった。

 ゲームは楽しくするのが俺の信条だ。

 紡の時にも思ったが、みんなが楽しめないプレイスタイルは自分自身でも看過出来ない。


 しかし、狩りに行く余裕はあったのな。

 通りで新しい魔法やスキルを覚えている訳だ。

 コミュ障の割に神経が図太いな、コイツ。


「某、途中で変な夢を何度も見たでござる! 突如語尾がごじゃるになって影武者をしていたり、なんか人相の悪い勇者を影ながら見守っていたりする夢を見たでござる。どっちが現実でござるか!?」

「何を言っているんだ、お前は!?」


 これはヤバイ。

 孤独過ぎて謎の幻覚を見るにまで至っている。

 それ以前の問題として『ごじゃる』の前に『某』とか一人称が安定していない。

 自分なのか拙者なのか某なのかハッキリしろ。

 実は相当追い込まれているんじゃないだろうか?


「もう余は絆殿達とは四年間くらい会っていなかった様な気がするでござる!」

「さすがにそれは気の所為だ」


 精々一カ月半行ったら良いくらいだろう。

 多分……間違いなく……おそらく。

 俺も勇者になったり、迷宮に監禁されたり、釣りしたり釣りしたり釣りしたり、ブレイブペックルみたいな奴と冒険した夢を見たけど、そんな事は起こっていない。


「後、一人称をなんとかしろ。キャラを安定させるんだ」

「孤独というのは人をここまで追い詰めるものなんですね……」


 闇影が想像以上にやばいので、とりあえず安定化を図る。

 キャラクター的に拙者が安定するか?


「ともかく、闇影、やっとお前をこの島に呼び出す事が出来た訳だ。急に呼び付けて申し訳なかった」


 頭を下げて、本気で謝る。


「むしろ呼ばなかった事を怒っているでござる!」

「本当にすまなかった。言い訳をさせてもらうと、ペックルが悪さをしなきゃロミナは呼ばなかったはずだから、責任はペックルにあると思ってくれ」

「ここまで来て責任転嫁をするんですか!?」

「橋から突き落とすしかないね」


 アレをやれってのか?

 それで許してくれるならやるが、正直勘弁願いたいんだけどな。

 割と何度も落下しているし。

 だが、アルト。その時はお前も一緒だ。

 闇影を追い詰めようとしたのはお前なんだからな。


「心臓に悪過ぎるでござる! 昨夜なんて夜中に床から大きな手が出て来て襲いかかってきたでござるよ!」


 なんだそのイベント。

 開発者悪質過ぎだろ。

 しかもそっちのイベントまで俺の所為にされそうだぞ。

 大体俺が悪いのは認めるが、ホラーイベントについては否定させてくれ。


「これもある意味、運営の悪ふざけって事なのかもしれないな。イベントをクリアしたメンバーが一人……また一人と消えて行き、そして……みたいな」

「些かフラグが適当過ぎる所があると思うがね」


 ロミナがツッコミを入れる。

 まあな。

 幽霊船をクリアした際のパーティーメンバー限定とか制限を掛けた方が良かっただろう。


「ボッチがクリアしてしまう可能性を懸念したとかじゃないか? 開拓に適した人材も呼べるようにって感じで」

「まあ絆くん達を見れば不仲になりそうな要素がゴロゴロと転がっているからね」


 確かにそうだよな。

 リミテットディメンションウェーブに参加したプレイヤー全員で開拓をするって方が自然な流れだと思う。

 長期クエスト的な感じでさ。

 どうして分散させたんだろうか。

 分散させるにしても個々が別の場所に流されていて、クエストを達成しながら合流するとか、やり様はあると思うんだが。


「これぞセカンドライフとでも運営が開き直りそうな話題だね」


 内容的にありそうで怖い話だ。

 ゲームとして大丈夫なのかね。

 世の中にはPvPを謳うゲームなんかもあるし、その辺りはゲーム内容や運営の方針とプレイヤーが合うかどうかという面は否定出来ないんだよな。

 仕様だと言われればそれまでだしさ。


「ともかく、そんな恐怖を植え付けてしまった闇影には罪滅ぼしの品々を献上しようと思う」

「な、なんでござるか?」


 俺はロミナと一緒に闇影の為にと特注した装備群を渡す。


「こ、これはなんでござるか! 装備するだけで今までの三倍近く能力値が伸びるでござるよ!」


 まあ、突き詰めた訳だしなー。

 そもそもロミナの話では装備の桁がまだ少ないから驚異的に見えるだけで、今後もドンドン伸びて行くって予測を立てている。

 武器の攻撃力が30程度だったとして、今の装備の攻撃力が90だったら間違いなく三倍だろ?

 ゲーム開始がそんなものでも、ゲーム終了時は2500くらい攻撃力があるなんてゲームはそう珍しくない。


「絆殿達がここまでの代物を拙者にくれるにはきっと何か裏があるはずでござる!」


 あ、滅茶苦茶警戒している。

 闇影、よくわかっているじゃないか。

 しかしコイツ、全部装備しやがった。

 かなり要求スペックが高いはずなんだが……エネルギーも溜め込んでやがるな。

 今まで同類だと思っていたが、実はコイツ硝子並にプレイヤースキルが高いとか、そういう展開だったりするのか?


「やったね、絆くん! 理解ある仲間だね!」


 アルト、親指を立てるな。

 そのネタ好きなのか?


「理解されているのを喜べばいいのか……きっと、嘆けば良いのでしょうね」


 硝子の台詞が痛いね。


「闇ちゃんがどれくらい強くなっているのか見物だよね、お兄ちゃん!」


 確かにな。

 そこまで能力が上がっているならば俺達が直面している問題も容易く突破出来るかもしれない。

 だが、見物って、なんでお前はそんなに上から目線なんだ。


「闇影くん、このカルミラ島という開拓地は寄り道クエストかもしれないが、前線組が戦っている場所よりも先の場所なのは間違いないと思う。その装備は私達が努力して作りあげた品なんだ。どうか協力を頼めないだろうか?」

「そう言えば……みんな装備が変わっているでござる。拙者も何か出来るでござるか?」

「場合によっては紡の代わりに呼んだんだけどな」


 もちろん紡と闇影だったらどっちにするかの経緯も説明したぞ。

 俺が如何に合理的であったか、ナチュラルにクズな感じで展開された。

 闇影が凄く微妙そうな顔をしているのはこの際無視だ。


「わかったでござるよ……幽霊船での出来事からバラバラだったのがこうして集まりに混ざれたのを素直に喜ぶでござる」


 そんな訳で闇影は俺達が渡した装備を受け取り、着替えた。

 よし、上手く丸め込めたぞ。

 ……いや、別にそこまでクズに成り下がるつもりはないが。

 ノリ的な意味で。


「今なら何でも出来そうでござる。絆殿、拙者に何をしてもらいたいでござるか?」

「ああ、紡がやらかした所為で出現した隠しボスに挑んでもらいたいんだ」

「隠しボスでござるか。燃える展開でござるな!」


 俺はラースペングーの支配領域となっている場所の上空を指差す。

 闇影も何処か悟ったのか息を飲むようにしてから頷いた。


「そんな訳で、待ち望んだ助っ人、闇影のデビュー戦だな」

「ところで橋から突き落とす罰ゲームはいつやるでござるか?」


 チィ! 闇影、覚えていやがったか!

 ちなみに罰ゲームをさせられたのは言うまでもない。


 レッツ紐なしバンジー!

 もちろんアルトも紐なしバンジー!

 ついでに紡も紐なしバンジー!


 こうして首謀者達は橋の下に消えたのだった。



 3……2……1……。

 ラースペングーの支配域の前にある光の玉にアクセスするとカウントダウンが始まり、再戦が出来る。

 前回と同じくブレイブペックルが横になっている所から始まるみたいだ。


「そうそう、建設した図書館にブレイブペックルの伝説って本が閲覧できたよ」

「ああ、あの建てると同時に本が収まっていた図書館か」

「蔵書は一部だけだよ。ちなみに書記のペックルが建設後に説明した話によると、島中に書物が埋まっていたり釣れたり、特定のペックルが持っていたりするそうだよ」


 何だその謎のシステム!

 まだ謎の資料が見つかるのか?

 きっと釣れるペックルみたいに本が出るんだろうな。


「本を拾うと図書館に転送されるから安心してほしい」


 水中から出現する本が図書館に……濡れて大変な事になりそうだけど、そこはゲームだから大丈夫なんだろう。

 そもそもそこを気にしたらモンスターが装備をドロップするのもおかしいしな。


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― 新着の感想 ―
[一言] ごじゃる忍者に人相の悪い勇者か…。 心当たりがありますね。
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