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奴隷じゃないペン

「おーい」


 ブレイブペックルの豹変に困惑していると、アルトがこっちに近づいてきた。


「絆くん、何かブレイブペックルに命令したかい?」

「え? ロミナと一緒にアクセサリー作りを指示したけど?」

「やはりそうか」

「何か知ってるのか?」

「ああ……万能なブレイブペックルなんだけど唯一の短所があってね」


 アルトは凄く不機嫌そうにしているブレイブペックルにペックルカウンターで指示を出して移動させる。


「人を小間使いみたいに扱いやがって、奴隷じゃないペン!」


 なんか歩調すらも態度が悪いなー……。

 しかし……その台詞は地味に痛い!

 ペックル達全員の総意にも聞こえかねない!

 後、お前は人ではなくペックルだ。


「ストレスゲージの上がりが物凄く速いんだ。だから何かさせる場合はしっかりと見ておかないとあっという間に増える」

「なんと……そんな短所があるのか」


 性能が高い代わりって奴か。

 勇者ならもっと耐えろよと思わなくも無いが、なんともゲームらしい短所だな。

 とはいえ、無難な設定だと思う。


「うわ……指示を出して放置したらあっという間にヤバイ事になりそう」

「間違いないね。そしてストレスゲージが50%を超えると、あんな感じで露骨に態度が悪くなる。随分と独特のAIをしているよ」


 一体どんな設定なんだ?


「バックストーリーか何かがあるのかもしれないけどね。調べた限りだと図書館を建てれば少しはわかりそうだね」

「知りたい様な知りたくないような」

「まあ、ブレイブペックルは何もさせなくても全てのペックルの能力を二割あげてくれるし、ストレスを下げる為に放置するのが一番なんだけどね」


 いる事に意味があるタイプか。

 宝の持ち腐れなペックルだなぁ。

 しかもアルトみたいなしっかりと全ペックルの様子を確認している様な奴がいないといけないとか。

 ちなみに城建設だけど五分の一くらい進んでいるって所かな。

 まだまだ先は長そうだ。


「で、ブレイブペックルにアクセサリーを作らせたそうだけど」

「ああ、コレだ」


 オレイカルスターファイアブレスレットをアルトに見せる。


「ははは、ロミナくんが廃業になりそうな代物だね」

「アルト……君はまだ懲りていないのかな?」


 ロミナが指をボキボキと鳴らし始めた。

 死の商人VS鍛冶師の対決第二ラウンドが幕開けしそうな雰囲気だ。


「ドレイン強化は闇影くん用かい? いや、絆くんの事だから……手持ちの素材で何かしたと言う所か、そのついでに闇影くんの機嫌を取れそうな物があったとか」


 本当に一言多い奴だな。

 俺もふざけておこう。


「名推理だよ、アルトくん」


 アルトが苦そうな顔になった。


「その闇影くんはどこにいるのかな?」

「君の様に賢い商人は嫌いだよ」

「直後にその弓で撃ちそうな悪ふざけはやめてくれないかな?」


 撃ってもダメージは無いけどな。

 まあいい。


「未実装の技能、付与をついでにブレイブペックルにさせたんだ」

「なるほど……とは言え、ブレイブペックルに何かを作らせる時は僕に一言相談してからにしてもらって良いかい?」

「了解」

「そもそもロミナくんは鍛冶系の熟練度に意識を向けているけれど、基本的なLvを疎かにしていないか? 何だかんだ言って腕力とかも影響するだろう? ちょうどいいから硝子くんや紡くんにあげてもらってはどうだ?」

「確かに……上がりが悪いのもLvの所為かも知れない。良いかもしれないね」


 そんな訳で、優秀なアクセサリー量産計画はもう少し時間を掛けて作らせる事になり、ロミナは硝子達の方へ手伝いに出た。




「絆くん、ちょっと良いかな?」

「なんだ?」

「この島なんだが、開拓を進めていると、やはりと思う点が増えて来ているよ」


 で、島の開拓は着実に進んでいる。

 アルトが俺の代わりに色々とペックルを運用してくれたから、見違えるほど発展した。

 俺が釣りに使っていたナマズの居た池周りなんて完全に舗装されて池が噴水みたいな感じになっていたし、空き家になっている住居がそれこそ無数にある。

 しかし、なんでこんなに家を建てているんだろうか?


「僕の推測なんだけど、おそらくここは第三都市に相当する場所なんだと思う」

「ふむ……その根拠は?」

「絆くんも見ていただろうけど、空き家の数だね。ペックルが運営する物もあるんだけど、ロミナくんの工房の様に商店にするのが目的としか言いようのない設備とか、必須建築に含まれている」


 必須建築は建てなきゃいけない建物の事らしい。

 要するにペックルの『これこれを何軒建てるペン』って事だ。

 微妙にゲームシステムの匂いを感じる仕様である。


 プレイヤーに都市を作らせるとか何を考えているんだ運営とは言いたくなる。

 とはいえ、そういうシステム自体を組み込むのは面白い。

 一般的なネットゲームとは趣向が異なるんだろうな。

 これもゲーム開始から終了まで一律でプレイヤーを管理しているから出来る事なのかもしれない。


「他に自由に家を建てる事が出来ない土地も存在するよ。敷地は確保できているけどね」


 アルトは島の地図を出して説明する。

 自由に出来ない土地ね。

 普通に考えれば後々何かイベントが発生するとか、そんな所だろう。


「後は海辺に桟橋を設置させられて家を建てた。こっちも空き家が多い」

「……マイホームか何かか」

「借り工房があるんだから当然だろうね」

「セカンドライフプロジェクトなんだから当然か」

「しかもリゾート地の様な側面が強いからね。青い綺麗な砂浜もあって、第一都市の海辺よりも遥かに好きな人がいると思うよ」


 まー……元々このゲームはセカンドライフプロジェクトって名目なんだから自由に家を買ってゆっくりする事も出来るんだろう。

 そんな住むに適した場所を俺達に作らせるって魂胆はよくわからないし理解しがたい所はあるけど、開拓ってフレーズに面白さを感じる人がいるのは、他のゲームでも証明されているしなぁ……。

 実際、俺も結構楽しんでいるし。


「どちらにしても順調だよ。城とやらもいずれは完成するし、出来上がったらどうなるか見ものだね」

「早く島から出たいもんだ」

「巻き込んで置きながらその台詞? まあ良いけどね」


 なんて感じで俺達の日々が過ぎて行った。



 そんなある日の事だ。

 海辺でボケーっと釣糸を垂らしていると……突如視界に映写機の様な演出が掛った。


「な、なんだ?」


 しかも帰路の写本を使用した時と同じ様な浮遊感。

 何処かへ飛ばされている?


 じー……ってフィルムを回す様な音と共に5……4……と謎のカウントダウンが開始される。

 メニューを開いて装備を弄る余裕はある様だからいざって時に備えて変更した。


 2……1……。


 バキン!

 と波が発生する時と同じ様な音が響いてガラスの弾ける演出と共に視界が開ける。

 ここは……島の外れにある海岸沿いの丘か? 若干開けた場所だ。


「絆さん」

「お兄ちゃん」


 紡と硝子が近くにいた俺に声を掛けてきた。


「い、一体なんだ!?」

「これは一体?」


 驚きで狼狽するアルトと状況確認を取るロミナ。


「わーお」


 驚いているのかボケっとしているのかよくわからないしぇりるが声を上げた。

 船作り中だった様で木槌を持っている。

 島内にいる全員が強制で転移させられたって事か?


「いきなり何が起こったんだ?」


 装備品をチェックしつつ状況を確認する。


 29:24


 視界には謎の目減りする時間が映し出されている。

 開始制限時間30分って事なんだろうけど、何が起こっているのか確認しなきゃ動きようがない。

 とは言っても、どうせ何かしなきゃいけないだろうから辺りを再確認。


 ……開けた場所のど真ん中で、ブレイブペックルが横になった体勢のまま浮かんでいる。

 意識が無いって感じだろうか?

 割とシュールな光景だ。


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[一言] 「うわ……指示を出して『放置たら』あっという間にヤバイ事になりそう」 「間違いないね。そしてストレスゲージが50%を超えると、あんな感じで露骨に態度が悪くなる。随分と独特のAIをしているよ…
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