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ブレイブペックル

「絆さん! お願いします!」

「おう! ルアーダブルニードル!」


 ドラゴンゾンビの喉辺りにルアーを食いこませて硝子が攻撃をチャージする。


「お兄ちゃん。私も合わせるよー! 前より楽に倒せそうだね!」


 紡も硝子と合わせて攻撃を放つ様だ。


「輪舞零ノ型・雪月花!」

「紅天大車輪!」


 硝子と紡が畳みかけるように技を放つ。

 更に時間差でしぇりるがいつの間にか接近して、攻撃をした。


「ボマーランサー」


 ドラゴンゾンビの硬直が解除されるまでの間に俺達は畳みかけ、更に弱らせる。

 後は半ば作業だったかな?

 HP低下による凶悪化したドラゴンゾンビだったけど、硝子と紡のお陰で対処しきる事が出来た。

 俺の方もエンシェントドレスのお陰でダメージを軽減出来たからな。


 途中で脱げそうになって危なかったけど……コレ、訂正しないと俺が変態じゃないか?

 エネルギーが減って脱げそうになっただけだ。

 ダメージを受ける度に破けてサービスシーンになる訳じゃない。

 そもそも脱げても、残念中身は男ですよー! と声高々に叫んでやる。


「GYAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO――」


 やがて……ドラゴンゾンビは一際強い咆哮を放った後……土煙りを上げてその場で倒れた……。


「ふう……前よりも手早く倒せたね。お兄ちゃんも地味に役に立ったし」

「お前は一言余計なんだよ」

「損耗も少なく、良い勝利だと思いますよ」

「……ブイ」


 ま、勝てたなら良いか。

 で、ドラゴンゾンビがポロっとアイテムをドロップする。

 えーっと……腐竜の核か。

 それと邪剣ラースブレイド?

 装備可能Lvと言うかエネルギーが随分と高めだな。

 性能はそこまでは……って所みたいだ。


「最初に倒した時も落としたけど……ドロップ率高めなのかな?」

「ロミナさんに打ち直して鎌にしてもらいましたよね」

「うん。素材にする事は出来たからどうにかね。このままの方が性能が良いのは分かってるんだけど」

「俺達の中で剣を本腰で使う奴っていないしな」

「お姉ちゃんかなー?」

「あー……確かに」


 奏姉さんってあんまり突出した武器選ばないもんなー。

 もしくはいろんな武器を効率よく使いこなしていくタイプ。

 最終的に癖の無い剣とかに収まる人なんだよね。

 まあ、どうするかは後回しにするか。


「ほんじゃさっそく解体するぞ」

「お兄ちゃん、よろしく!」

「はいはい」


 そんな訳でドラゴンゾンビの解体を俺は始める。

 よくよく考えてみればドラゴンなんて現実に存在しない生き物をどうやって解体するんだとは思うけど、とりあえずとばかりに腹をケルベロススローターで切り裂いて、身と骨を切り分けていく。

 元々死体だったからか、討伐後の身はかなり柔らかくなっているっぽいな。

 それでもドラゴン故に素材の質は高そうだけどさ。


 腐竜の骨、腐竜の腐肉、腐竜の逆鱗、腐竜の核、腐竜の翼膜、腐竜の角、腐竜の牙、腐竜の頭骨、腐竜の骨髄……。


 どっかのハンティングゲームの素材みたいだな。


「よーし解体完了。後でロミナにどんな物が作れるか尋ねるとして」


 討伐後のフィールドを見渡すと扉があるのに気づく。

 確かこの先でペックルの笛があったんだったか?

 そこまで行ってクエスト達成と言う所だろ。


「この先にもまだ道があるので一応行きましょう。また何か収まっている宝箱があるかもしれません」

「あいよ」


 武器を収めて俺達は先に進む。

 ドラゴンゾンビを倒した先の扉を開けると……もう一つ部屋があった。

 部屋の真ん中にはそれらしい模様がある。

 ゴール?


「ここが最下層って事で良いのか?」

「それがよくわからなくて……あそこを見てください」

「ん?」


 言われて硝子が指差す先を見る。

 するとそこには二つの扉があるのに気づく。

 一つはこれ見よがしに鍵穴がある扉、もう一つはそれらしい物はなく、閉まっている扉。


「どっちも開く気配が無いんですよ」

「ありえるのは何かしらのフラグを立てると開くって所かな?」

「お城を立てると開くとか?」


 その辺りだろうなー……。


「鍵穴付きの方は何処かで鍵が手に入ると思うよ。それこそお城を建てるとかかな?」

「マシンナリーで開ける」

「ありえるかもな。ジャッキとかで強引に開く仕掛けとか、実はスライドで開くかもしれないぞ」


 そう言った意地悪な謎掛けだってありえる。

 この手の物は頭を使う事に意味がある訳だし。


「RPG的な話題だな……そういや地底湖の主を釣った時に鍵を手に入れたっけ」

「お兄ちゃん言うの遅過ぎない?」

「紡、それはお前もだ」


 こんな所に扉があるなんてお前も言っていない。

 ゲーマーの癖に兄弟そろってマヌケ過ぎだ。


「まあまあ。絆さん、試しに鍵を差し込んでみてはどうですか?」

「……チャレンジ」

「もちろんやるさ。つーか……鍵開けとかの技能があると無くても開けられたりしてな」


 俺は古の伝説の鍵を取り出して扉に差し込んで捻る。

 ガチャリと音を立てて、ロックが外れる音が響く。

 そして古の伝説の鍵は光となって消えた。

 扉を押すと、ゆっくりと開く。


「何があるかなー?」


 ボッと室内のたいまつに火が灯り、室内が照らし出される。

 鍵を使って開いた部屋は……さっきまでいた場所に良く似た間取りの部屋だ。

 今度は完全に行き止まり……部屋の奥には四つの武器っぽいエンブレムが描かれている。

 武器は……剣に槍に弓、そして盾かな?

 これに追随する様に肉とか魚が描かれている。

 魚は盾みたいだ。

 で、真ん中にはこれ見よがしの宝箱。


「宝物庫ですか」

「みたいだね。ペックルの笛みたいに何か面白い道具でも入っているのかな?」

「何か優秀な武具でも良いな。とは言っても俺達が使っていない武器が出ると困るけど」


 とは言え……ロミナが困惑する程優秀な素材だったシーラカンスを釣りあげて得た鍵だ。

 物凄く優秀な武器が入手できても不思議じゃない。


「じゃあ……開けるぞ」

「うん」

「お願いします」

「……トレジャーハント」


 まあ、ここでミミックとかに遭遇したら運営を絶対に許しはしない。

 恐る恐る俺は宝箱に手を掛けて蓋を開ける。


「ペーン!」


 ……声を聞いて思わず半眼となって飛びだしたペックルを見つめる。

 硝子や紡、しぇりるも若干がっくりとしている位だ。

 なんだよペックルが入っているのかよ。

 期待させやがって。

 とは思いつつ、ここまで仰々しい所に入っていたんだ。

 何かあるだろうと飛びだしたペックルを確認する。


「よく古の伝説の鍵を入手し、ドラゴンゾンビを倒して封印を解いてくれたペン!」


 おお、専用セリフ付きか。

 えーっと……宝箱から出てきたのはなんか丸い宝石が埋まった盾を装備したペックルだった。


「俺の名前はブレイブペックルだペン! これからよろしくだペン!」

「ブレイブペックル?」

「ペーン!」


 そう言い終わるとブレイブペックルとやらは他のペックルと同じく、姿を消した。

 説明はなしか。


「何でしょう?」

「他のペックルとは違うのかな?」

「……ブレイブ、勇気」

「うーん……まあ良いや、とりあえずもう片方の扉を調べて特に何も無い様だったら帰ろうか。ブレイブペックルに関しては帰ってからで良いでしょ」

「了解ー」

「そうですね。ペックルですからアルトさんと相談してからでも良いでしょうし」


 ペックルの管理はアルトに任せてるもんな。

 しかし……こんな仰々しい場所で手に入ったのがペックル一匹とは……。

 などと思いつつ室内を調べたが、それらしい収穫もなく俺達は足早に帰還したのだった。


   †


「ブレイブペックルは世界を救うペックルの勇者だペン。他のペックルとは違って特別なペックルなんだペン。彼の封印が解かれたと言う事は開拓に大きく貢献出来るペン」


 帰ってくるなりサンタペックルが俺に近づいてきて、謎の絶賛を始めた。

 専用の台詞まであると言う事は物凄く優秀って事で間違いはない。

 こう、NPC的な意味で。

 しかし勇者はともかく、世界はプレイヤーに救わせろよ。

 とりあえずアルトの所へ行くとしよう。


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CV:石川界人
[一言] 四聖武器出てくるとは
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