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地底湖

 アルトはハーレムは嫌ときっぱりと言い切った。

 うん、わかる。

 なんか嫌だよな。


 ハーレムするにしても色気の欠片もないしな。

 グラフィックの関係でみんなそれなりに美形なはずなのに。

 というか、直前まで自分を罠にハメていた奴等をそういう目線で見れたら、そいつは相当大物だと思う。

 フラグだって折れるわ。


「そもそも僕は……いや、なんでもない」


 なんだ? 何を言い掛けた?

 まあいいか。


「ともかく、一人は堂々とネカマ宣言しているじゃないか!」

「うるせーな! 俺だって好きでこんな姿やっている訳じゃない!」


 主にリアルな妹の所為なのだ。

 リアルな姉も絡んでいるらしいが、現在追及出来る場所にいない。

 そのリアルな妹は『でへへー……』って顔してやがるしよ。

 次に問題を起こしたら橋から落とすぞ。


「で、闇影に付いた二つ名って?」

「死神さ。他に垢BAN監視者だ。彼女の前で悪さをすると強制ログアウトさせられるとまことしやかにささやかれていたよ」

「アイツが喜びそうな二つ名だな」


 死神、闇影!

 絶対喜ぶだろ。

 その意味は謎の行方不明を誘発するプレイヤーとしての名だったら嫌だとは思うけどさ。

 幽霊船であんなに脅えていた訳だし。

 運営が闇影を驚かそうとしている様にしか見えない。

 運営の玩具って二つ名が付かなくて良かったな。

 まあ大体俺の所為な気もするが。


「昨日、闇影くんが僕の店に押しかけてきてね。厄介事に巻き込まれるのは御免だと、どうにかして追い出そうと思ったけど、頼る相手がいないと泣きつかれてやむなく一晩泊めたらコレだよ」


 うはー……闇影凄い事になってんな。

 島で必要な人材を順番に呼んで行ったらこうなったとは……すまんな闇影。

 次こそお前を呼んでやるからな。

 ちょっと悪戯心が湧いて、もう少し怖がらせてやろうかな、などと思わなくもないが、さすがにそこまでするつもりはない。

 しかし、なんだかんだで闇影を泊めてやったり、アルトも良い所があるじゃないか。


「で、君達が僕を呼んだという事は……非常に迷惑だけど、何かあるんだろう?」

「話が早くて助かるな。死の商人アルトくん」


 職人と商人が若干睨みを利かせながら話を再開する。

 闇影の件は理解したけど、アルトを呼んだ直後に人を呼べるはずは無い。

 今はやる事をやって行くしかないか。

 ロミナと俺はペックルの管理とショップの利用をアルトに説明した。


「なるほどね。開拓業務の委託って訳か……確かに僕向けの案件だ」

「やってくれるか?」

「やらなきゃ島から出られそうにないからね。確かに少々やり過ぎた気はしてきたし、前線組も伸び止まりの空気が出ていた。絆くんはビジネスチャンスを良く持ってきたし、密航の件もある。協力しようじゃないか」


 という訳でアルトが開拓業務の手伝いをしてくれる事になった。

 面倒なペックル関連を全て押し付けて、これからはやりたい事が出来る。


「とりあえず、このペックルというNPCキャラクター達の世話に関してだが……」


 俺が渡したペックルカウンターにアルトは目を通す。


「ふむ……ローテーションを分けるのが良さそうだね」

「そのくらい俺もやっていたけど?」

「君の事だから大雑把だったんじゃないか?」

「いや? そう言う訳じゃ……」

「ペックル個人で上がるストレス値は個体毎にバラバラなのかい?」

「お兄ちゃん、根気はあるけど細かくやっていかないもんね」


 紡が追撃をして来やがる。

 うるさいな。

 ローテーションくらいはわかってるけど、個体毎に纏めるのは面倒なんだよ。

 ついでにこのゲームは攻略サイトが無いから自分で考えるしか無いのも理由だ。


「とりあえず僕が絆くんの代わりにペックル達の運用をしてみるよ」

「任せたぞ、アルト」

「……本来は絆くんがやらなきゃいけない事なんだって事をわかって欲しいな」

「俺はこれから釣りをしてペックル達の食糧問題の解決に乗り出すよ」


 何か言われそうだが、食料が足りないのも事実。

 勢いで押し切りたい。


「面倒を完全に押し付けている様に見えるんだけど?」

「そ、そんな事はない。食料も重要な仕事なんだ」

「……まあ、確かに食料に関して心もとないのは事実だね。正直、この状況で城の建築なんてするのは確かに無謀だよ。単純にペックルの経験値と生産力、食料が釣り合っていないし、誰かが確保した方が今後の為だ」


 だよなー釣り必須だよなー。

 アルトが溜息を漏らす。


「ダンジョンで得られる物資も魅力的なのは確かだ。出来る限り最下層を目指すのも間違いは無い。そういう訳でペックルの管理は僕に任せて、みんな各自作業をしていてくれ。僕は僕なりにペックル達を見ておくから」


 そんな訳でアルトにペックルの管理を任せてみんな各々やりたい事を再開した。

 俺は硝子と紡を連れ、ダンジョンに挑む……訳では無く、エレベーターを使ってさっそく地底湖へと向かう。


「ほんじゃ硝子と紡、攻略は任せたぞ。俺は俺でペックルの食料確保をして来る」

「ほい! 任せて!」

「いってらっしゃい。私達も出来る限りの物資を集めながら潜って行きます」


 そんな訳で地底湖にさっそく到着。


「おおー」


 見上げると洞窟の天井、鍾乳洞的な雰囲気のある場所で、綺麗な水がこんこんと湧き出している。

 しかも水中が淡く光っていて、なんて言うんだろう? かなり幻想的だ。

 いろんな色合いに水が光る。

 一番大きな湖は水深も結構あるようだ。

 泳ぎの技能があったら素潜りも出来るんだろうな。


「じゃあさっそくレッツフィッシング!」


 釣竿を取り出してキャスティングする。

 数分後に竿が大きくしなる。


「フィッシュー!」


 俺以外誰もいない地底湖で俺は声をあげた。

 良いね。大きく叫んでみたかったんだ。

 で、釣り上がった魚は。


「フナ」


 割と小さいかな? 簡単に釣れる。

 フツーな魚が釣れるんだな。

 もっと変わった物が釣れるかと思ったけど。

 なんて思いつつ色々と仕掛けを弄りながら糸を垂らす。


「お?」


 ガクッと大きく釣竿がしなる。

 リールで巻き取って見る。

 良い感じの手ごたえだ。鯉より強い!


「おお! アロワナ!」


 アロワナなんて今まで釣れた事が無い。

 こんな魚も網羅してるのか!

 他に何が釣れるかなーなんて感じで俺はそのまま地底湖に住みつくかの如く、釣りに勤しんだ。


 ダンジョン内にあるって言うのが良いね。

 どれだけ釣っていても一日しか経過しない訳だし。

 この為にキャンプキットをロミナとしぇりるに頼んで作ってもらったんだ。

 出来る限り釣るぞー!


 結果。

 地底湖で釣れる魚を大体把握した。


 フナ

 鯉

 アロワナ

 ガーパイク

 ピラニア


 他にゲーム要素なのか吸血魚とゴーストフィッシュという現実には存在しない魚も釣れる。

 後カニが何故か釣れる時がある。

 仕掛けと言うか……釣りから派生する技能に投網とかカニ採り籠ってのがあったなぁ。

 今度習得するか考えるか……投網なんて邪道じゃないかとも思う。

 銛での狩猟も俺としては若干邪道だし……。

 しかし、釣れる魚に統一感が無いな。

 そこは気にしたら負けか。

 ともかく、俺は思う存分釣りに勤しむぞ!


 †



 暇なので日誌を書いてみようと思う。

 何日滞在するかはわからないが、せっかく時間があるのだからいっぱい滞在したい。


 釣り生活推定1日目。

 大体釣れる魚を網羅。

 食事を三回、眠気に負けて眠るまでを一日と決め、早めにキャンプセットを設置して休む。

 釣りをしているとやはり時々ペックルが釣れる。

 まあ、人手が足りない今は居ればいる分だけ助かる。

 ところで俺、このマップ好きかもしれない。

 なんとなく落ち着く。

 静かで幻想的なので考え事をしながら釣りをするのに良さそうだ。


 釣り生活推定2日目。

 釣り具の模索。

 何が一番効率が良いかの選定や釣りあげた魚の調理方法を考えながら糸を垂らして待つ。


 地底湖の奥は壁だと思っていたが、よくよく観察するとひょうたん型の地形をしている事がわかった。

 が、岩と言うか壁の所為で回りこむ事が出来ない。

 こんな事もあろうかと、しぇりるから前に買ったボートを漕いで向かう。

 安全エリアだと思っていたらモンスターが出るなんて事態になると困るが……その場合は急いで撤退をすれば良いか。


 地底湖の反対側のエリアに到達。

 あんまり差は無さそうだ。

 ここでも釣りをしようと思う。


 釣り生活推定3日目。

 フナや鯉は泥抜きしてからあらいやフライにして食べると美味しいのを思い出して、刺身や焼き魚から脱却。

 刺身で食べていたけど、より味があがった。

 まあ地底湖故に水がきれいなのか泥臭さは無いようだ。

 単純にゲームだからという可能性もあるけど、気分の問題だ。


 むしろアロワナとガーパイクの調理方法がわからん。

 解体は出来るけど、刺身だと味が悪い。

 ゴーストフィッシュは刃が何故かすり抜けて解体不可だ。焼こうとすると溶ける。

 専用の解体刀が必要だと思われる。

 吸血魚は捌く事は出来るけど凄く血生臭い挙句、火で焼くと灰になる。

 完全に食用じゃない。何か調理方法があるのだろうけど、今ある物品では難しい。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] アルト女説普通にありますね
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