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城を建てよう

 数日後。

 硝子と紡のダンジョン攻略部隊はしぇりるや俺の協力なしでサクサクとダンジョンを進んで行っているとの話を聞いた。

 やはり俺が釣った主の素材で作った武器のお陰だそうだ。


 一応、インスタントダンジョンなので任意の階層範囲を潜り直すと入手できるアイテムやモンスターがいる訳だけど、最深部を目指して攻略中だ。

 如何せん、エレベーターがあるお陰で20階毎にショートカットが出来ても、一日に潜れる階層が限られている。

 経験値目当てに再出現するモンスターを狩る事は出来るらしい。


 匙加減が難しいな。

 どれくらい深いのかわからないけれど、硝子達の手腕に掛っている。

 そんなダンジョン攻略を聞いている最中の事。


「そろそろ城を建てようペン」

「は?」


 サンタ帽子ペックルが誰かを呼ぶような動作で俺に近づいて来て、今度こそ闇影辺りでも呼んでやろうかと思っていた所でそう返された。


「これが設計図ペン」


 ペックルがサンタ帽子から設計図を取り出して建築に登録する。


「ああ、そう」

「じゃあ指示を頼むペン」


 城……ね?

 まあ、元々ここは伯爵だったかの領地だった訳で、屋敷にペックルの入っていた宝箱があった。

 で、開拓をするのが目的で、その中に城の設計図があるのは多少、想像できなくはない。


 というか……単純にこの島って結構広いんだよな。

 城を建てられるほどではあるとは思うが……あ、建てられる場所が指定されている。

 建設の指示を出せば即座に対応するみたいだ。

 とは言ってもな……根本的に材料が足りない。


 しかも色々と必要な素材も多いみたいだぞ。

 ダンジョン探索で見つかる品も多いし……うーん。

 今は後回しにすべきだろうか?


「建てるべきなんだろうが……」


 おそらく、この開拓イベントを終わらせるのに必要な建築物である可能性が高い。

 だけどコレってどれだけの事業になるのか想像もつかない程の物資だぞ?

 それよりもまずは足場固めが必要だ。

 ペックルの人員整理も中々に面倒だ。


 元々こう言った細かい作業は俺が得意にしている物でもあるのだけど、効率的に動かせるかと聞かれればまた違うんだよな。

 長く遊ぶのは得意だけどスケジュール管理はあんまりしていない。

 そんなプレイスタイルだ。


「そろそろ城を建てようペン」


 しかも新しい釣竿を手に入れた俺のマイブームは釣りな訳だし。

 釣りの合間にやっているけど、それでも数が多くて世話が面倒になりつつある。

 ペックルの数が多くて、島の食糧庫の備蓄が心もとない。

 そんな状態で城を建てろなんてやったらあっという間に資源が枯渇して開拓が滞る所か、一斉にカルマー化されて建築物が破壊されかねない。


 どうにか解決する手段は無いだろうか?

 如何せん、俺が釣りで得られる魚の量も限られている。

 この辺りはしぇりると相談して、もっと漁で得られないかと模索している。

 まあ、漁をするようにペックルへ指示を出せばある程度どうにか出来るんだけど……。


 赤字にならない様に調整すべきだしな。

 ただ……ストレスの点で漁に行かせるのを増やすだけでは限界が来る。

 その匙加減が難しい。


「そろそろ城を建てようペン」


 それに増えた新人ペックル達の技能Lvを上げなきゃいけない。

 ストレスには注意。

 食糧問題。

 どちらにしても、ストレスの影響で休憩させなきゃいけないペックルが多くて食料調達が心もとない。

 技術が高い奴らを漁に行かせても良いけど、その分、開拓が遅れる。


「絆くん」

「ん? どうしたんだロミナ?」

「ああ、報告という訳じゃないけど、ペックル達が独自に店を開き始めてね。島で発見出来る素材類を買う事が出来るようになったみたいだよ」


 ロミナの案内で工房の隣にいつの間にか建っていたペックルの店に行く。

 すると城の建築に必要な素材を含めて色々と売りだされていた。

 金さえあればある程度はどうにかなりそうな感じだけど……食料は売ってない。


「そろそろ城を建てようペン」

「さっきからうるせーよ!」

「ペックルはモンスターじゃないペン」


 またそれか。

 サンタ帽子ペックルが近くを通るたびに俺に声を掛けて来る。

 こりゃあ早く指示を出せってシステム的な警告だな。

 しかしうるさい。

 建てたいけど物資的に厳しいんだよ!


「絆くん落ちついてくれ。相手はペックルだ」

「わかってる。わかってるけど、さっきから何度も言って来てしつこいんだ」

「指示を出せば良いじゃないかい?」

「出しても建てられる見込みが立たないんだ。その前に建てた方が良い物があるだろ?」

「確かに……未知の設計図で良い物が出来るかもしれないしなぁ……同時建設は出来ないのかな?」

「出来なくはないけど……」

「ならとりあえず指示を出すのはどうだろう?」

「それなんだけど、大事業扱いで、大量のペックルを最低限割かないといけない。やっと回っている所にこんなのぶちこむと世話が非常に面倒になる」

「ふむ……物資調達と食糧問題、更に人員管理か……ペックル達を増やす手段は絆くんがどうにかしてくれているが、それ以外に問題があるね。私も出来る限りは手伝うが」


 そこにしぇりるがやってきた。

 おそらく休憩がてらって感じだろう。


「ショップ」

「ああ、店が開かれたみたいだな」

「誰か会いたい人がいるペン?」


 ナイスタイミングとばかりにロミナがペックルに指を向ける。


「そろそろ城を建てようペン」

「誰を呼ぶか……」


 ぶっちゃけダンジョン探索の方は硝子と紡の二人でサクサクと進んでもらっているから問題は無くなって来ている。

 ダンジョン内で見つかったドロップ品とか素材でロミナが武具を作ってくれているからな。

 この点で言えばロミナを呼んで大正解だった。あの時の俺は運が良いな。

 戦闘的な問題は解消しているが、俺の知り合いと言うと奏姉さんと闇影くらいしか親しい相手はいない。

 後は紡の周りにいたデスゲームごっこ連中。

 ……呼ぶ程仲良くないしな。

 やはり闇影か?


「絆くん、呼ぶ人員を提案しても良いだろうか?」

「え? 良いけど……」

「なーに、この状況に適した人物を私は知っていてね。絆くんよりもペックル達の管理を上手くしてくれるだろうさ」

「はあ」


 なんかロミナが若干邪悪そうな笑みをしている様な気がする。

 ロミナの知り合いね。

 俺がペックルの提案アイコンをロミナに弾いて渡す。

 するとロミナはフレンド項目を出現させてコピーペーストをしながら俺に返した。

 そこに載っていた名前は……。


 アルトレーゼ


「アルト?」


 そう言うとロミナは邪悪な笑みを浮かべ、しぇりるも若干不快そうな顔をしている。

 一体どうしたんだ?


「私が前線組へ鍛冶をするのがしばらく嫌になったのは、彼の所為でね」

「そうなのか?」


 初耳だ。

 まあ、アイツはゲームが始まった瞬間から金稼ぎ第一主義だったし、金銭関係で揉めたとか、簡単に想像出来る。

 船に不法侵入して情報収集に走る位だしな。

 幽霊とか怖いのは嫌いらしいが。


「その原因が彼の紹介した頭のイカレタ前線組の連中だったのさ」


 それもアルトが原因なのかよ!

 正確にはその頭のイカレタ奴が原因なんだろうけどさ。


「私をNPC扱いする。横暴な態度で武器作りを強要する。挙句勝手に仲間扱いをして専用職人扱いだ」


 ロミナは深くアルトを恨んでいるのか、目付きが険しい。

 仲が悪かったのか?

 というか、アルトとの接点が今一わからない。

 どういう関係なんだろうか。


「船作りをさせられた。お金はもらったけど……」


 しぇりるも思う所があったみたいだ。

 そう言えば言ってたな。


 しかし、普通は船を作らされた程度で恨み節は沸かないよな。

 製造スキルを使って道具を作るのは製造系の醍醐味なんだし。

 どんな事をさせたんだろうか……。


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― 新着の感想 ―
しかし、船旅のときからそうだけどアルトハーレムだよな
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