表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/254

マシンナリー

「ここは……完全なセーフエリアですかね?」

「そうなんじゃないか?」


 20階は若干広い、大きな空洞と言った様子の場所だ。

 奥の方に何かあるな。

 地下へ続く階段と……謎の扉、手前にはスイッチあり。

 その手前には宝箱がある。


「これって到達報酬?」


 紡が目を輝かせながら宝箱を開ける。

 するとそこには……『何かの基盤』だろうか?

 えーっと……他に機材まであるみたいだけど。

 名前はマシンナリーキットと何かの基盤。


「もしかしてコレって新しいクリエイト系の道具と素材か?」

「でしょうね」

「鍛冶や細工、船作りもあるからありそうだとは思っていたが……」


 まさかこんな所で機械操作をする羽目になるとは。

 このゲームのジャンルはファンタジーじゃなかったのか。

 まあ古代文明の遺産とかで、科学系の装備が出て来るゲームは多いけどさ。

 機械剣とか銃剣とかな。


「ドリルが解放されていたけど、入手方法が限られていたっけ。ここでも作れるのかな?」


 ああ、あっちでも入手可能になったんだっけ。

 つまりこのアイテムはドリルとかの道具を作る材料って事かな。

 クリエイト系も追加要素が出て来るとは、可能な限り飽きさせない作りみたいだ。

 まあ普通のゲームと違って飽きたからやめる、というのが出来ないのが難点と言えば難点だからな。

 ライバルで食い合う可能性もあるだろうし、製造系で分岐があればそれはそれで楽しいと思う。

 さて、俺の知り合いでこの手の細工が得意な人と言うとロミナかな?


「ん」


 何故かしぇりるが手を挙げている。


「どうした?」

「マシンナリー」

「覚えたいのか?」


 船職人であるしぇりる。

 まあ、船の操作とかには機械が組み込まれているよな。近代のだと。

 コンパスとか船にあったし、バリスタも搭載していた。

 となると船作りに通じる物って事で良いのかもしれない。


「わかった。任せる」

「うん」

「とは言え、ロミナと相談してやって欲しい。ドリル以外に機械剣とかいろんな武器の素材に使うかもしれないからさ」

「これからの武器に使う様になるのかもしれませんね」


 俺の脳裏にノコギリが付いた扇子を振りかざす硝子と、チェーンソーみたいな物を付けた鎌を振りまわす紡が浮かぶ。

 ……結構強そう。

 若干スチームパンク臭がするけどな。


「なんか不吉な事を考えてませんか?」

「これからの武器には必要な要素かもしれない」

「出来れば古風な扇で戦いたいですね」


 そっち路線も分かっている人が開発者にいる事を祈るほかないな。

 まあ大抵、分岐ジョブ……このゲーム的には派生武器系統とかだろう。

 多くのゲームだとそれまでの武器やスキル系統でも強かったり、むしろそっちの方がシンプルで使い易い、なんて事もザラだ。


「強い武器が手に入ると良いね」

「とは言え、今は扉の方だ」


 宝箱のチェックを終えた俺達は扉の方へ意識を向ける。

 扉に触れて開けようとしたのだけど、開かない。

 手前にあるスイッチを押しても、何の変化は無かった。


「何かの条件を満たしていないとか?」

「ここ」


 しぇりるがスイッチの下に配電盤を発見する。

 壊れている様で、ゲーム的に言うなら修理が必要とかだろうか。


「あーマシンナリーが必須って事か」


 露骨に分かりやすいヒントが転がっている。

 プレイヤーに技能を覚えさせようって事か。


「レッツプレイ」


 しぇりるが渡した道具を使って修理を試みる。

 んー……パッと見だと簡略化が施されていて、ネジで止めたりはんだ付けをする作業っぽい。

 一応、レンチとかスパナが機材に入っているみたいだ。


「ノー……」

「失敗か?」

「うん」


 まあ、道具を入手して即座に出来る物じゃないって事くらいはわかる。

 熟練度や技能Lvが足りないんだろう。


「とりあえず、しぇりるの技能Lvが上がる事を期待して、進んで行こう」

「この先に何があるんでしょうね?」

「さあ……」


 それから俺達は地下25階まで進んだ所で、魔物の猛攻に物資が心もとなくなり撤退した。

 紡がいるだけで前回の倍程進めたのは快挙だろう。

 エネルギー的にも美味しい。


「少し厳しいよ、お兄ちゃん。経験値は美味しいからLv上げした方がいいと思う。と言うかお兄ちゃん達を守りながらって地味にきついね、ここ」

「ソロの方が戦いやすいか?」

「正直に言うとね。入る前に見た項目に一人用って言うのもあったからそっちへ行ってみる」

「わかった」


 硝子は損耗が少なく戦えているから良いけれど……俺は敵の攻撃を受けるとかなり痛くなっている。

 それにしても一人用か……。

 こういうインスタントダンジョンって人数が増えると敵のステータスが増加する、とかあるんだよな。

 で、ソロプレイヤー用に敵のスペックの低い物があったりする。

 まあパーティー向けより色々と不便だったりするんだけどな。


「お兄ちゃんは戦わなくても強くなれるもんね」

「戦わないと熟練度が稼げませんよ?」

「効率的な考えだと、私達がもう少し強くなってから引き上げるのが良いかもしれないよ、硝子さん」

「確かにそうですけど……」

「魔物の動きも癖があるみたいだし、研究してからでも良いと思う。私の勘だとLv5から7くらい上げれば相当楽になるはず」


 紡基準で言われてもとは思うけど、スピリットで言うとどれくらいエネルギーを貯めなきゃいけないんだろうか?


「後分かった事なんだけど、20階以降だと階段を降りる毎に帰還のランタンの燃料が減って行って、最終的に帰る羽目になるみたい」

「そんな要素まであるのか……」


 一気に潜って攻略とかをさせない要素かな?

 特定の階層に留まって魔物を倒して稼ぐと言うのは出来そうではある。

 その辺りのシステム面の研究も必要そうだな。


「しぇりるのマシンナリーの技術向上で新しい武具の可能性もある。ダンジョンで良い物を集めて装備を一新するのはどうだ? 装備が集まってから挑むのも良いかもしれない」

「まあ、お兄ちゃんは釣りでもしながら待ってればいいと思うよ。その代わり、回復アイテムの調達とかお願いするね」

「OK。栽培とかその辺りも併用しておこう」


 そんな訳でソロ用ダンジョンへ硝子と紡がそれぞれ入って行った。

 結果的に言えば、内容は良く似ていて20階まで出てくる魔物は同じで、若干戦いやすかったそうだ。

 ただ、手に入る物のランクが若干低い。


 ダンジョン内ではこの島独自の素材らしいミラカ鉱石というのが手に入る。

 パーティーで入るとミラカ結晶という純度の高い物もドロップする。

 ソロだとミラカ鉱石だけ。


 他に一応、ペックルや基盤も発見出来る。

 そうして硝子と紡にはダンジョンの探索を進めてもらい、状況次第でパーティーで潜る事になった。


 俺はその間、回復アイテムの調達と釣りをしていたっけ。

 しぇりるの技能が上がるのを期待してさ。

 割と攻略が面倒だから、他にも人を呼べないのかとサンタ帽子ペックルが来るのを待っていたけど、アイツ反応しない。

 条件はなんだ?


 で、しぇりるに大量の基盤が届けられ、ここ数日ずーっとしぇりるは基盤を弄っていた。

 工房や島の倉庫からいろんな素材を持ってきては作成をしていた訳だが……電球が部屋の中でぶら下がっていた時は驚いたな。

 家々にしぇりるが電球を設置して点灯させていた。


 島が若干明るくなった……とは違うか。

 前々から明かりはあったし、システム的な明かりだったけどさ。

 それなりに技術が向上してきたっぽい。


「新しい武器類の材料をしぇりるくんが作ってくれたよ。これだ」


 ロミナとしぇりるが見せたのはマシンナリーで作られた素材かな?

 試作型モーター。

 どうやらこれと既存の素材と共に加工するとマシンっぽい物が作れるそうだ。


「簡単な物だとドリルが出来そうだね。刃先とする部分を尖らせて根元にモーターを取りつけて叩くと完成する」


 そう言ってロミナが試作型・鉄のドリルという物を作ってくれた。

 開拓者の七つ道具にあるドリルよりも出力が出る様だ。


 取っ手を持って力を込めるとギュイイイイン! と、七つ道具のドリルよりも力強く回っている。

 中々に優秀な代物みたいだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ