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何かの基盤

「そんな後ろ向きな……」

「開拓を終える事が目的なんだから、それも手だと思うんだけどな……」


 だって俺は別に新天地を見たり、釣りをしたりするのが目的で、強くなりたい訳じゃない。

 元々運動神経とか良い方じゃないし。

 戦闘は攻略組に任せるスタンスだったはずだ。


「どちらにしても今ある素材でどれだけの代物が作れるかはがんばってみるよ」


 そう言ってロミナは鍛冶を始める。


「正直に言うと、硝子以外で戦闘向けのメンバーが居ないとここを乗り越えるのは難しいと思う」

「そう」


 どうしてもスキル周りは好みが出るからな。

 戦闘と生産は差が産まれる。

 俺みたいな半製造みたいなのもいるが、戦闘特化には勝てないし。

 なんて話をしているとタイミング良くサンタ帽子のペックルが俺の所にやってきた。


「誰か会いたい人はいるペン?」

「良いタイミングだ」

「まるで狙ったかのような状況です」


 硝子が若干苦笑いをしながらペックルを見ている。

 さて、誰を呼ぼうかな。

 当面の問題としてダンジョンの攻略をしたい。

 となると戦闘センスが良い奴で、仮に敗北しても即座に立ち直れるような者が適任だろう。

 俺の知り合いの中で戦闘センスが高くて信用できる相手と言うと……奏姉さんに紡……後は闇影か。

 他にも何人かいるけど、信用という点でこの三人だ。


 そういえば奏姉さんとは全然話をしていないなぁ。

 あの人はこういうの得意だとは思う。

 ローグライクのゲームで99階とか999階を平然とクリアした実績がある。

 帰還アイテムがあるから、堅実にクリアしていくはずだ。


 とはいえ、いきなり呼んだらなんて言われるかわかったもんじゃない。

 アレで結構根に持つタイプと言うか自分のペースを崩されるのを嫌がる人だから関わらない方が良い。


 となると紡か闇影となる訳だけど……闇影はスピリット。

 何かあって負けた場合の代償が大きい。

 負けても翌日にはケロッとダンジョンに入って行ける様な人材が好ましいなぁ。


 硝子はエネルギーを全部失う様なヘマはしないと信じているけど、闇影はなぁ……海に落ちたり幽霊船で怖がったりしていたから死んだら目も当てられない。

 その点で言えば、楽しければ何でも良いとか思っている紡辺りが適切な人材な気がする。

 アイツは飽きっぽい癖にローグライクのゲームで奏姉さん同様999階まで行った事あるし、この手のダンジョン攻略は好きだろう。


「よし、紡を呼ぼう」

「大丈夫なんですか?」

「ああ、何だかんだでこう言ったやりこみ要素は好きだと思う。俺の知る人の中じゃね。それに急に呼び付けても怒らないはず」

「妹さんですもんね」

「シスター紡」

「そう……って俺としぇりるの台詞が逆だぞ」


 なんて言いながら俺は紡の名前をフレンドリストからコピーペーストして貼りつける。


「わかったペン。会える事を祈っているペン」


 毎度おなじみの台詞を吐いてサンタ帽子ペックルは仕事に戻って行った。

 これで明日には紡と会えるのか。

 かなり賑やかになりそうな予感がするな。

 ま、アイツには色々とがんばってもらうとしよう。


「闇子さんは?」

「アイツは今度で良いでしょ。ダンジョン攻略をするには若干、難があるからな」


 さっきも思った通り、今の状況に合った人材では無い。

 次があったら呼べば良い。


「とはいえ……ダンジョン探索の反動か眠くなってきた……少し休んでから次に備えよう」

「そうですね。紡さんと会ってから考えて行きましょう」


 そんな訳でその日は早めに休んだ後、それぞれ好き勝手に開拓業務へと勤しんだのだった。

 俺? もちろん、釣りをした。

 夜釣りも良いよね。

 早く光のルアーを取り戻さなければ……あの主、今の装備じゃ引っかかると同時に外れやがる。

 だから熟練度を上げて技能を上げなきゃいけない。


 †


「浜辺に何か流れ着いているペン」


 翌朝の早朝、ペックルが俺を起こして言った。


「来たか!」

「そんな待ちわびたみたいな言い方はどうかと思うんですけど」


 海岸にみんなで向かうとやっぱり垂直な形で海岸に紡が流れ着いていた。


「毎度思いますけど、これはどうにかならないんですか?」

「製作者の設定ミスって奴じゃない?」

「凄く滑稽な状況だ。とはいえ、面白い。流れ着く場所を特定してネタを仕込むのも良いと思うのだが?」

「良いなそれ」

「良くないです」


 毎度恒例のスクリーンショット撮影を試みる。

 何かのネタなのか誰かが近づかないと反応出来ない様になっているみたいだし。

 撮影を終えた直後にやはり手が伸びて来るので避ける。

 硝子並みに速い。やはり紡か!

 慣れて無ければ避けられなかった。


「う……ん……こ、ここは……あれ? 絆ちゃん?」

「兄をちゃん付けで呼ぶな!」

「え? いつもお兄ちゃんってちゃん付けで呼んでるじゃん」

「そういう意味じゃないからな。お前が俺を呼ぶ時、名前+ちゃん付けは許さん」

「そうじゃなくって、どうしてお兄ちゃんが!?」


 ガバッと紡が体を起こして辺りを見渡す。


「あ、硝子さんにしぇりるさん、それとーロミナちゃんだ!」

「やあ、久々だね」

「最近いなかったけどお兄ちゃん達と一緒に居たんだ。NPC扱いされた事に腹を立てて姿を消したって噂が立ってるよ」


 そこで紡は俺の方に視線を戻す。


「こんな所に居たんだ?」

「いや、実はな……」


 俺は紡にこれまでの出来事を簡潔に説明した。

 すると徐々に紡の目に輝きが宿り、楽しげな笑みを浮かべはじめた。


「やっぱお兄ちゃんの周りの方が楽しそうだね! 私にもダンジョン攻略させてほしいな!」

「やる気があって何より、是非硝子と一緒にダンジョンに挑んでくれ。お前が頼りだ」

「うん! 任せて!」

「で、いきなり呼び付けてしまったけど、大丈夫だったか?」

「うーん……お兄ちゃんと別れてから、硝子さんの手伝いをしたりしてたけど、硝子さんも行方知れずになっちゃって、しぇりるさんが行方知れずになっちゃったでしょ? なんか面白い事でも起こってるのかなー? なんて思いながら闇ちゃんと狩りをしてたよ」

「ふむ……闇影くんがしっかりと生活出来ている様で何より。アルトに頼まれて私の工房に上がり込んでいたので、若干心残りだった」


 ほー……闇影もあっちで卒なく生活しているみたいだな。

 何せ第二の波でしっかりと好成績を残している訳だし。

 まあ闇影の事だから、今頃俺達との経験を生かして最前線で戦っているんじゃないかな?

 結構メンタルの強い奴だし、なんだかんだで上手く立ち回ってそうだ。

 俺達とパーティーを組むまではソロだったしな。



 そんな訳で俺達は紡を加えて島での生活を続けた。

 ダンジョン攻略に関して言えば、やはり紡が加わった事で戦いやすくなった。

 元々戦闘センスは抜群にある訳で、硝子と一緒に敵を余裕で屠って行く。


「いやー歯ごたえがあって良いね! あっちじゃ次の波まで足踏みかな? なんて言われてるんだよ」


 ダンジョンで出てくるスレートグリーンバットを倒しながら紡は言った。


「そうなのか?」

「うん。今の所、新しい都市の発見は出来なくてね。未実装地域の開放待ちで、若干手ごたえの無い所で強引に上げようとしてるって所かな」

「へー……海は?」

「海は戦闘が面倒だから、まだ一部の人達だけだね。ただ闇ちゃんや私が戦っていたのを何処からか知ったのか真似しようとしてたみたいだけど」


 ふむ、興味を持っている層が大分出てきたって所か。

 とはいえ、前線組からしたらそんなリスクは犯せないよな。

 もしも海系のマップが寄り道系だったら、他の前線組から大きく離されてしまう可能性がある。

 それなら地道にレベル上げをしていた方が堅実だろう。

 どちらにしても俺は早く開拓を終わらせて帰りたいんだけどさ。

 などと考えていると……。


「なんだこれ?」


 倒したジェリーから『何かの基盤』というアイテムが出てきた。

 解体無しでドロップしたぞ。


「ゴミでしょうか?」

「なんか浮いてるな、このアイテム類」


 15階以降の雑魚が稀に落とす様になった。

 何処かで使用するとか集めておくと良い事があるアイテムかな?

 なんて思いながら硝子と紡が切り開いた先、ダンジョンの地下20階へと到達した。


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― 新着の感想 ―
[一言] 島開拓編にて ·····これ、闇影からしたら相当なホラーなんじゃ? 幽霊船を攻略したかと思えば仲間がゆっくりと一人づつ消えていく。 次は自分の番かもしれない、いつ来るかも解らない。 唯一無…
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