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時間経過

 そんな訳で俺達はどんどん進んで行く。

 道中でシトラスジェリーやスレートグリーンバットという魔物と遭遇。

 硝子としぇりるのお陰で大分進める。

 所々で壁が掘れそうだなとドリルで弄れそうな場所を見つけたりもした。


「どれくらい深いんでしょうね?」

「さあ……」

「あ、階段がありますよ」

「行こう」


 そんな訳で階段を下りて行く。地味にダンジョン内は狭いのかな?

 などと思いながら降りていった訳だけど7階くらい進んだ所で……敵に苦戦し始めた。


 硝子が扇子を構えて攻撃を放つ。


「乱舞一ノ型・連撃」


 硝子の先制攻撃がシトラスジェリーの群れに命中する。

 が、シトラスジェリー達はビクともしていない。


「かなり頑丈そうです!」


 硝子が飛びかかってくるシトラスジェリーの猛攻を弾きながら答える。


「ボマーランサー」


 しぇりるも負けじとシトラスジェリーを爆発する銛で突いて行く。

 俺も遅れを取る訳にはいかないか。


「クレーバー!」


 と、各々の技を放ってどうにか撃破。こんな感じで戦っていたんだけど……。

 地下10階くらいまで進んだ所で、同名のシトラスジェリーの突進を受けてしまった。


 いってぇ! 攻撃力高い!

 動きは鈍いけど1階と違って攻撃が痛すぎる。

 数分後、シトラスジェリー達を仕留めた俺達は若干ぐったりして各々見合わせる。


「見た目同じなのに格上の相手でしたね。歯ごたえがあって良いです」

「そうだな。エネルギー面じゃ美味しいけど、俺は少し厳しいか」


 地下10階クラスのシトラスジェリーは、動き自体は鈍くて良いんだけど……パチンコみたいに体を伸ばして突撃してくる時だけ早くて俺では反応しきれない。

 動作である程度見切れはするけど耐えなきゃいけない時もある訳で。

 硝子は黒字だったみたいだけど、俺は若干赤字だ。

 ここ最近、碌に戦っていなかったし、稽古はして居ても実戦となるとまた別か。


「美味しい」


 しぇりるも経験値の入手自体は良かったみたいだ。


「やはりここが現状、最も進んだ場所なのかも知れませんね」

「ああ、やっぱりそうなる?」

「はい」


 硝子が言うのだから間違いないだろう。


「そう言えば宝箱が無造作に時々置いてありますね」

「そうだな」


 中を確認すると建物の設計図が見つかる。

 ペックル専用のアクセサリーの設計図まであった。

 他に島限定の開拓用素材や鉱石が入っている事もある。


 MMOだと普通のRPGみたいに宝箱からアイテムを手に入れる例は稀だ。

 偶に宝箱という名前のモンスターを倒してアイテムをドロップする、なんてゲームがある程度か。

 そして、今回みたいにインスタンスダンジョンで宝箱があったりする。

 とはいえ、そこまで優秀なアイテムが出現するゲームはあんまりない。

 少なくとも俺が今までやったゲームではそうだった。


「深い階層になると罠とかありそうで怖い」

「10階までサクサク進めましたが……入り口なんでしょうか?」

「わからない。この辺りはしっかりと攻略しないと終わりが見えないからなー……中にはエンドコンテンツ……はさすがにないか」


 そんなこんなでやっとの事、15階に到達した。

 休憩所っぽい所に宝箱があった。

 中を確認すると……。


「ペーン!」


 相変わらずペックルが見つかる。

 今回は眼鏡装備のペックルだ。若干インテリっぽい。

 適度に指示を出しておく。


「ねえ……」

「ん?」


 しぇりるが若干困った様な表情で俺達に声を掛ける。


「もう難しい」

「それってダンジョン攻略が無理って事か?」

「そう」

「私はまだ戦えそうですけどー……」

「実は俺も厳しいんだよな……」


 島に来て結構エネルギー面が溜まっていたけど赤字でボロボロになってきた。

 しぇりるに関して言えば持ちこんだ回復アイテムが怪しいラインに来ているっぽい。


「そうなると、あまり深く進んでピンチになるよりは早めに離脱する方がいいかもしれませんね」

「もっと回復アイテム持ってくる?」

「うーん……硝子以外は戦闘向けって程じゃないからなー」


 俺は元々マイペースの釣り人、しぇりるは船職人、硝子が戦闘向けだ。

 かと言ってロミナを連れて来ても劇的にどうにかなるとは思えない。

 10階まではどうにかなった。


 しかし、その先となるとしっかりとした編成か戦闘センスが高い者がいないと厳しくなる。

 硝子だって長期戦に向いたタイプじゃない。

 スピリットは根本的に短期決戦向けだからな。

 回復アイテムを満載して行く限りならどうにかなるかもしれない。

 だけどな、硝子への負担が大きくなるし、ボスや別種の魔物が出てきたらその限りじゃない。


 うーん……感覚的に言えば、外では魔物の存在がほぼ無い、この島で魔物との戦闘を其処まで強要される事態になる事は考えづらい気もする。

 と言うか……俺達の手に余る状況になると誰かを呼ぶ事が出来る訳だし、状況次第だけど攻略が詰む様な要素というのは実は少なめなのかもしれない。

 カルマーペングーの強さを考えても、硝子だけで勝てる強さだったし、アレは人数が居ればどうにかなるだろう。

 だけどこのダンジョンは硝子一人では難しい。


 となると、おそらく攻略しなくても開拓には関係が無いオマケ要素である可能性は大いにある。

 ペックルに攻略させても、時間さえ掛ければコンプリート出来る的な。

 プレイヤーが攻略した場合、その期間が短くなる場合だ。

 後は地道に潜って経験値等を稼いで行けってタイプかも知れないな。


「どちらにしても一旦帰るべきだ。ダンジョン内の情報がわかっただけでも収穫だろう。攻略は本腰を入れて挑まないといけない」

「そうですね……今の状況では厳しいのも事実。ロミナさんに相談をしてからにしましょう」


 という訳でランプの灯を消して俺達はダンジョンから脱出した。


 †


「なるほど……島で発見出来る素材で装備の一新をして、どうにか出来れば良いけど」


 ロミナに相談すると島で見つけた素材で作り出せる武具を考案してくれた。

 ハック&スラッシュではないが、Lvを上げ、装備を整えていけばクリア出来るのはRPGの王道だ。

 まあ俺や硝子の場合、Lvではなくエネルギーだが。


「劇的な代物を作り出すのは難しいね……後、君達が潜っていた時間がどれくらいか明確に教えてくれないか?」

「え?」

「行って三時間くらいかな」

「ふむ……実の所、君達が出かけて一日経過している」


 ロミナが言葉に困った様な様子で答える。


「え!?」


 いやいや、幾らなんでもおかしくないか?

 時間の帳尻が合わないぞ。


「おそらく探索に行くと時間認識を弄られるんだろうね。まさに探索に一日潰した、という扱いになるのだろう」


 そう言えばディメンションウェーブは機材を使って一日を数年に感じさせるゲームだ。

 ゲーム開始直前の待ち時間などもあった訳だから、時間の調整は存在するはず。

 つまりプレイヤーや場所毎に時間経過の調整も入れられるのかもしれない。

 考えてみれば睡眠などを取れる施設を使うと、凄い速度で眠くなる。

 あれもこのシステムの応用なんだろう。

 つまり、この程度は造作もないって事かもな。


「何だかんだ開拓は順調に進んでいる。ダンジョンを深く攻略するとしてもだ。回復アイテムを作成して、装備を固めても……ごり押しでどうにか出来る場所では無いと私は思う」

「今のアップデート範囲内での最前線である可能性が高いから?」


 俺の返答にロミナは頷く。


「言ってはなんだけど他のゲーム等でエンドコンテンツとなっている要素にインスタンスダンジョンの攻略なんてよくある話だ。私達が挑んでいるのはそういった場所である可能性は大いに高い」


 そうだよな。俺も同じ事を考えたし。

 んー……それにしても一体いつから俺達は最前線の場所を攻略する事を目的にしていたんだっけ?

 ここに来る前は海で遭難していたはずだが。


「ペックル達に引き続き調査をさせて、俺達は別作業をするのも手か」


 ぶっちゃけ、そんなエンドコンテンツに挑むほど、俺は余裕のある種族をしていない。

 挑む度に弱体化して行ったらたまったもんじゃないし、スローライフが俺のモットーだもの。

 釣りをして行きたいという初心を忘れたくない。


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