開拓開始
「決めた……」
俺がこの島、カルミラ島に漂流してからしばしの時が流れた。
最初こそ俺は開拓者の七つ道具なる救済アイテムを無視して……ドリルはちょこっとはしゃいだが――無視して、島からの脱出を模索した。
まず舵スキルを取得して木の船で南の砂浜から海へ出たのだが……北側に出た。
昔のRPGにありがちな南を越えたら北、みたいな状況だ。
船が小さいから戻されたのか、単純にこの島がそういう仕組みなのかは解らない。
それから色々と模索した訳だが結局、島からの脱出には至っていない。
ともかく俺は現在、カルミラ島に閉じ込められている。
だが、俺には心強い仲間がいる。
硝子達が俺を見付けてくれる可能性に賭けた訳だが……ついに一週間が経過した。
もちろん信じていない訳ではない。
硝子との付き合いは一月程だが、誰かを裏切る様なタイプじゃない。
今頃俺を探していると思うが、この島がそう簡単に見つかるとは思えない。
現に一週間が経過している訳だしな。
のんびりと釣りを繰り返し、釣りスキルと料理スキルを上げまくった。
ついでに一日中イカと釣れた魚を元素変換していた。
そこで俺は硝子達の救出が一週間以上遅れたら決めていた事がある。
それは……。
名前/絆†エクシード。
種族/魂人。
エネルギー/78630。
マナ/22070。
セリン/68780。
スキル/エネルギー生産力ⅩⅡ。
マナ生産力Ⅸ。
フィッシングマスタリーⅨ。
ヘイト&ルアーⅡ。
一本釣りⅠ。
解体マスタリーⅤ。
クレーバーⅤ。
スライスイングⅡ。
高速解体Ⅳ。
クッキングマスタリーⅡ。
船上戦闘Ⅴ。
元素変換Ⅱ。
↓
名前/絆†エクシード。
種族/魂人。
エネルギー/78630。
マナ/27070。
セリン/68780。
スキル/エネルギー生産力ⅩⅡ。
マナ生産力Ⅸ。
フィッシングマスタリーⅨ。
ヘイト&ルアーⅡ。
一本釣りⅠ。
解体マスタリーⅤ。
クレーバーⅤ。
スライスイングⅡ。
高速解体Ⅳ。
クッキングマスタリーⅡ。
元素変換Ⅱ。
この様に島以外で必要無いスキルを未取得に変更してマナに変換する。
これによって取得できるスキルとエネルギー生産量が増えた。
……船上戦闘スキルだけな気もするが。
元々解体武器と釣りだったので開拓に近いスキルだったのが不幸中の幸いか。
ともあれ船上戦闘はⅤだったので削れば相応のエネルギーを他に回せる。
助けが来るまで生き延びる……もとい開拓生活を実践しようと決断した。
実は俺って人間は――こういうのが大好きなんだ!
皆には悪いがタイムリミットは過ぎた。
クククッ……この島を骨の髄までしゃぶり尽くしてくれるわ。
そう決断してまず俺が手を出したのはカマ。
紡が使っていた武器用の装備ではなく、釣竿と同じ生活系装備だ。
要するに生え過ぎて邪魔な雑草を撤去する。
性能は救済アイテムだけに良くも悪くもない、微妙なラインだが、アイテム欄にレベルの項目が存在する。
なんでも開拓者の七つ道具はこの島でしか使えないらしい。
つまりアイテムのランクはカルミラ島限定でレベル制に変化している。
こういうの燃えるよな。
よし皆、俺の開拓者の七つ道具がレベルMAXになるのが先か、皆が助けにくるのが先か勝負しよう。とかアホな事を脳内で語りつつカマで雑草を切断していく。
「別のゲームでも思ったけど、こんな処理の仕方じゃ雑草生えてきて当たり前だよな」
しかし手で引っ張っても効率が悪いし、一応は根の部分まで無くなっている。
ここ等辺はゲーム世界による不思議空間という事で我慢だ。
それにしても現実の墓参りとかで毎年掃除を手伝わされるが、ゲーム内の身体は疲労が無くて良いな。
カマをいくら振り回した所で疲れないのだから現実の何倍もの速度で切れる。
だが、あまり雑草ばかりに目を向けるのも下策だ。
一日は24時間しかない。
更に睡魔も襲ってくるので事実上無理をして18時間位しか開拓に時間を注ぎ込む事はできない。そうなってくると俺の取れる行動にも限界が出てくる。
さすがに食事の時間などもある訳だから18時間全部は使えない。
……この手の思考はすると何もできなくなるからな。
今は目に付いた範囲で開拓作業を繰り返し、効率的な方法を見つけたらそっちにシフトしていくという方針で固めよう。
次にクワだ。
雑草をカマで切り取った限られた土地のみ耕す事ができる極めて限定的な畑。
いや、他意はないが。
ともあれ疲労はないがマスタリースキルを所持していないので時間を掛けて耕す。
どこまで再現しているかは知らないが土の匂いがした。
カマの時は草の匂いがしたのでシステム自体は流用かもな。
「……種がない」
畑を耕し終わってから気付いた。
実にバカバカしい状況だ。気付けよ、俺……。
「お?」
開拓者の七つ道具にあるクワの項目から種を選択できた。
一種類しかないが……。
取り敢えずこれを植えておくか。
種を手頃な区間に分けて植えて、廃墟近くにあった井戸から拾ってきたバケツに入れた水を掛ける。
まあ後は毎日雑草をカマで処理しつつ実が生るのを待つか。
何日必要かは知らないが、一月とかはさすがにないだろう。
でなければ農業系スキルが死んでいる事になる。
さて手始めに行った作業が四時間で終了してしまった。
オノも戦闘用の斧ではなく伐採用の斧だ。
この島は森かという程木々が生い茂っているが無闇に伐り倒して良いのだろうか。
同じ理由でハンマーは破壊武器の項目に属する。
元々は解体武器の派生武器なのだがモンスターの部位や破壊可能オブジェクトを破壊して弱点を作ったり、邪魔な物を撤去する為に存在する。
性能と効果、パーティー構成の関係で解体武器のままだったのだが、開拓者の七つ道具の項目に含まれている所を見るに使う局面があるんだろうな。
尚、調べてみた所ドリルも破壊武器の項目に属している。
一週間前、はしゃぎ過ぎてスキルが一つ出たからな。
……取得出来なかったが。
スキル項目欄に赤い線で破壊武器から繋がっている。なので、おそらくはディメンションウェーブ第二波などで開放される武器なのではないだろうか。
……以前アルトに海路は本来のルートとは違うとかデタラメを言った覚えがあるが、もしかして当たりなんじゃないか?
ハーベンブルグ伯爵の日記にも国交とかなんとか出ていた。
漂流している俺に調べる術はないが、この島が何かを握っているのは予想できる。
思考を戻そう。
ドリルは壁や岩、穴などを掘る事ができる。
そしてカルミラ島にはドリルで道を作る必要がありそうな場所が随所に見られる。
おそらく本来であればドリルが武器として存在する頃に訪れる場所なのだろう。
ともかくオノ、ハンマー、ドリルは後回しだ。
今は生活基盤もとい、運営できる状況を作りたい。
そうなるとやはり、カマで雑草を撤去して、クワで耕し種を植えまくるのが基本か。
ちなみに釣竿とロープに関しては現状必要用途を見つけていない。
ロープは移動箇所が存在する事が予想できるが、釣竿はなんだろうか。
食べ物? しかし畑に実が生れば生きてはいけるはず。
森の中に肉になりそうな逃げ足だけが特徴の野生生物がいたのでそっちでも良い。
そんな中で釣竿がどうして必須の道具に入っているんだ。
いや、個人的には嬉しいが。
性能は現在所持している釣竿には劣るが、安い餌が無限に出てくる。
無論、開拓者の七つ道具の釣竿でしか使えない餌だ。
その影響で釣りには困っていない。
まあ……開拓していけばわかってくるか。
ともあれ、今空いている土地を耕したらオノで木々を伐り倒すか。
もちろん一定の区間を作ってだが。
それが終わったらドリルで目に見えて行かなければならない道を作るとしよう。
俺は島内部を見上げる。
屋敷跡とも見える、比較的大きな建物が見えた。