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トラップ

「闇影、本当大丈夫か?」


 全員で船内の探索を始めたのは良いが、明らかに怖がっている。

 アルトですら闇影を心配する程なのだから相当だろう。

 まあ気持ちは分からなくもない。

 幽霊船の船内は視界が悪いというのに見える範囲は青白い不気味な色をしている。

 しかも木製の壁に触れると冷たくヌルッとしていて、船というよりはおばけ屋敷だ。

 どちらかといえば幽霊船とおばけ屋敷は近いのか?


「だ、大丈夫でござる」

「ついて来るだけでも良いからな? 無理に戦って怖い思いするよりは良いだろう」

「そういう訳にはいかないでござる。自分、パーティーの魔法役でござる故」


 闇影もなんだかんだで仲間想いなんだな。

 柄にもなくちょっと感動しちまったじゃないか。

 よし、闇影。お前を攻撃しようとする幽霊は全部俺がなんとかしてやるからな。

 そう息巻いて前方を眺めると硝子が先頭で警戒を行なっている。

 尚、一番後ろは紡だ。

 通路が狭いから広がって戦えそうに無いんだよ。

 だから戦力を前と後ろに割いて不測の事態に備えている。


「それにしても結構歩いたが、中々モンスターが出てこないな」

「確かにそうだね。この手のダンジョンは普通もっと敵が一杯沸くイメージがあるね」

「地図も中々埋まりませんね」

「……まるで迷宮」


 言われてみれば迷宮という言葉がしっくりくるな。

 妙に広い船内。そして狭い通路。

 船上戦闘スキルが機能している所を見るに船であるのは事実だろうが。

 地図が広くて良く解らないし、石畳だったら地下迷宮と間違えても不思議じゃない。

 そうこう雑談しながら進んでいると硝子が前方にある扉に気付いた。


「皆さん、扉です。何があるか解りません、気を付けてください」


 警告に全員が頷き、扉を開けて直に横へ移動する。

 いきなり銃で撃たれる訳じゃあるまいし、警戒し過ぎだろう。

 何秒か経過しても敵も攻撃もやってこないので頭を出して扉の先を確認する。

 食堂?

 船の見取り図に関して詳しく知らないが大勢の人間が一同に座れるイスと長いテーブルが置かれていた。当然どれもボロいが、どうにもホラーっぽさを意識している。

 硝子、しぇりる、アルトの順番で入り、続いて俺も入ろうとした直後。


 バタンッ!


 扉が突然閉まった。

 開けようと扉に力を込めるが開かない。


「おい! 大丈夫か!?」


 中に向かって叫び、ドンドンと扉を叩く。


「大丈夫です! 敵が――」


 フッと硝子の音が消えて以降はどんなに話しても言葉は返ってこない。

 モンスター風情に硝子としぇりるが遅れを取るとは思えないが……。

 おそらくこの罠はプレイヤーを分散させる類の罠だ。

 広いダンジョンでパーティーが拡散すれば戦力的に厳しくなる。

 入った順番、だろうな。


「お兄ちゃん、チャットを送れば良いんじゃない?」

「さすが紡。だが、ゲーム的に良いのか?」


 しかし考えとしては有りだ。

 メニューカーソルからチャットの欄を表示させて硝子へ会話を送る。

 出ないな。

 もしかしたらチャット禁止地域とかそういう設定をされているのかもしれない。

 にしても幽霊船っての意識し過ぎだろう。


「硝子がいるんだ。本人も大丈夫って言っていたし信じよう」


 数分は扉の前で開くのを待ったが開ける事も開く気配すらなかった。

 もしかしたらワープタイプの構造でどこかに飛ばされたのかもしれない。

 こうなると俺達がこのまま黙って待っているのは得策じゃなくなるな。

 そこ等辺はアルトが硝子としぇりるに話してくれると信じよう。

 あいつ、地味にゲームに詳しいからな。多分大丈夫だ。


「ともかく別の通路を探してみるか?」

「わ、わかったでござる」

「ほい!」


 怖がっている闇影と喜んでいる紡。

 対照的な二人が残ったな。

 正直、混ぜるな危険な感じの二人だ。

 まあ良い。今は三人と合流を果たす事だけを考えよう。


「あっちに通路があるなって、人数が減ったからか暗いな」

「カンテラは機能しないみたい」

「ゆ、幽霊の所為でござるか?」

「いや、そういう風に設定されているんだろ。そうだな……」


 光のルアーが装備されたままの釣竿が目がいった。

 使えるか?

 実験に取り出して、釣竿を振ってルアーを飛ばす。


「おお、見えるな」


 まあルアーの部分だけが微弱に見えるのでブーメランライトみたいな感じだ。

 それにしても飛距離が長いな……。


 コツンッ!


 そんな音と同時に糸を通して光のルアーに何か当った感触が響く。

 壁ではなく、骨の様な物体に当たったと思う。

 幽霊船でモンスターと言えば当然、アレだよな。


「闇影、紡! 何かいる。気を付けろよ?」

「むふー!」

「だ、だ、大丈夫でござる!」


 う~ん……ちょっと大丈夫じゃ無さそうだが信じるしかない。

 リールを巻いてルアーを戻し、シルバーガラスキを取り出す。

 一応以前の奴よりランクアップした武器なので信頼はできるはず。

 前方からはガタガタと木々と何かをぶつける様な音が響く。

 その音の正体も直に判明した。

 やはりモンスター。

 頭にバンダナを巻いた骸骨……パイレーツスケルトンだ。


「……? なあ、海賊って割には服がなんか変じゃないか?」

「そうなのでござるか?」

「あたしはわかんない! こういうデザインなんじゃないの~?」


 そう言われればそれまでなんだが。

 パイレーツスケルトンはボロボロになったならず者の衣服、というよりはボロボロな紳士服みたいな、もうちょっと気品を感じる衣類だ。

 考え過ぎかもしれないがモンスター名を見て初めてパイレーツスケルトンだと分かった。


「おっと!」


 考えに没頭しているとパイレーツスケルトンは持っていた剣、カトラスを振りかぶってきた。その攻撃を辛うじて避ける事に成功。船上戦闘スキル様々だな。

 今はそんな事考えている場合じゃない。

 早く、硝子達と合流してダンジョンの仕組みを理解するのが先決だ。

 何より紡は船上戦闘スキルが低い。

 そうなると前衛である俺が敵を抑えないと話にならないからな。


「スライスイング!」


 初級解体スキルの二番目攻撃スキルだ。

 クレーバーが力を込めた一撃に対して、こっちは切り裂く事に重点を置いた攻撃だ。本来は骨の様な物理攻撃と相性の良いスケルトンには効き辛いが、使わないよりはいい。


「え?」


 赤い発光の伴ったスライスイングが命中したパイレーツスケルトンはあっさりと倒れた。

 その死体に怪訝な目を向けるが、動かない。


 いや、そんなバカな。


 客観的に分析すれば俺はアルトの次に弱い。

 無論、商売を第一に行動していたアルトを比較対象に持ってくるのはアレだが、パーティー内での俺は解体スキルと釣りという名の食料調達が主だ。

 そんな俺の、それも解体武器の攻撃スキルを一発食らった程度で死ぬって何かおかしくないか?


「全部倒しおわった~!」

「思ったより怖くなかったでござる」

「そうか……気の所為か……?」


 まあ良い。

 ともかく俺達三人は幽霊船内の探索を始めた。


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