事前承知
「まあ、とりあえずリリースっと」
ポイっとブラックバスをリリースしておく。
また俺に釣られるんだぞー。
「何にしても絆さんが参加すれば大会は盛り上がりますね」
「上手く大物が釣れたらだね。この手の大会って何が起こるかわからないし」
優勝の為にフィーバールアーに手を染めるか悩ましいね。
いや、さすがにフェアじゃないから使用は避けるべきか。
ただでさえ狩猟具の補正が大きいんだし。
って感じに再度キャスティングしてると硝子の釣竿がしなってブラックバスを釣り上げた。
サイズは35センチだった。
「硝子も中々出来るようになってきたね」
「時々やっていますからね。絆さんが釣れなかった分のヌシを釣る為に精進しました」
「その件は感謝するよ」
って感じでしばらくそこで釣りをして……湖を軽く小舟で移動して地形を確認した。
「うーん……後はソナーでも使えばもっと情報が出そろうのかな」
「ありましたよね?」
「ああ、海での島主クエストをやる際に船に搭載してたね。しぇりるに作って貰えば良いのか」
この手の釣りは情報戦な所がある。
湖の地形を確認すればブラックバスがどこで釣れるかわかるだろう。
ただなー……問題は一週間近くノースフェラトで釣りをするという事なんだよな。
いや、俺自身は何の苦も無く出来はするのだけどみんなの目的である冒険が出来ない。
そもそもプラドから出られた後にやることがブラックバス釣りの大会の為に一週間ここに滞在するのもどうかってのがある。
ずっとブラックバスを釣るのも良いとは思うんだけどみんなを思うとなー……。
「絆さん?」
「ん? どうしたの?」
「いえ、何か考え込んでいるように見えたので」
「ああ、大会に備えてノースフェラトに滞在するってのはプラドから出ていきなりどうなんだろう? って思ってさ」
「絆さんが望むのでしたら私たちは止めはしませんよ」
「そうなんだろうけどさ、釣りを取るか色々と挑戦を取るかと考えるとね。せっかくみんなと再会できてこれはどうかなと思うんだよ」
「絆さんも私たちの事を考えてくださっているのですね」
「硝子が俺の為に釣りをしてくれたことを考えてね。だから今回は長期滞在は辞めておこうかな。大会時に来るって事にしようと思う」
「わかりました。ではその分、いろんなところに挑戦していきましょう」
うん。これで良いと思う。
別に優勝賞品が欲しいとか実績で必要だとかわかっている訳でもないんだ。
何よりカルミラ島ではスズキの大会もあるそうだしこの大会だけが全てじゃない。
「そもそも各地で大会がコンスタントに行われるならここだけが全てじゃないさ」
カルミラこそが俺の地元、解放される前にどれだけ釣っていたと思うんだ。
スズキがどこで釣れるかなんて目隠ししてたって当てれるわ。
そもそも俺が狙っているのはヌシ釣りであって大会制覇ではない。
「あと……さっきのリスーカの台詞が気になるんだよね」
「予期せぬことが起こったら中止というやつですか?」
「うん。アレってさディメンションウェーブイベントとか発生したら中止って事なんだと思うんだ」
「そうなるとそろそろ時期になりかねませんね」
「そういう事」
なんだかんだプラドの開拓だってそこそこ時間を取られた。
時期的にいつディメンションウェーブイベントが起こっても不思議じゃない。
事前の承諾を取られているのだから文句も言えない。
俗に言うフラグ回収という奴だ。
「さすが絆ちゃんでござる」
「みんな警戒してる時期でござる」
「釣り人のみんな承知の上でござる」
「これで文句を言うのはクレーマーかぼっちでござる」
ファンクラブの連中がまともな雑談というか俺の読みに同意している。
そうだよな。あの会話と時期を考えればありえるよね。
「おっとそれは闇影ちゃんへの冒涜でござる見過ごせないでござるよ」
「闇影ちゃんは絆ちゃんたちと絡んでいるからぼっちじゃない救われた子でござるニンニン」
「闇影ちゃんと一緒に狩りにいきたーい。君は独りぼっちじゃないと優しく信用されたいでござる」
「わかる」
「そして絆ちゃんへするようにツッコミされたい」
おいファンクラブの連中、お前闇影にもファンなのかよ。
そのまま闇影ちゃんファンクラブに改名してくれないかな。
金持ちのお嬢様という属性がプラスされてるんだ。
ファンが減るか増えるか楽しみだ……いや、リアル小学生だってクレイさん達経由で再会した事実が判明したらバレる。
……これはもしかしたらあり得るかもしれないぞ。
俺のファンクラブから闇影のファンクラブへと方向転換。
リアル小学生はそれだけ強力な存在なのだ。
姉さんと紡の作ったこの外見が好きなんだからロリコンだろうしな。
いや、その場合、顔文字さんにもファンが居ないと矛盾が……まあいいか別に。
「プラドの方でディメンションウェーブイベントが起こるのでこちらで開催だったら急いで参加するけどね。まあ、ディメンションウェーブイベント当日だったら行かないけど」
「それで良いと思いますよ。そう考えると中止になりそうな時期って辛いですね」
「そうだねーこう……梅雨時に運動会とかする感覚に似てるかもしれないね」
学校によっては行事で梅雨時に運動会とかやることがあったりする。
他に台風シーズンの秋とかね。
「フフ、中止になりそうだけど参加も検討ですね」
「このチキンレース感もまた楽しいのかもしれないね」
何事も楽しむのが大事だって思いながら今回の大会はそこまで本腰を入れずに行くことにした。
ちなみにお約束の湖で釣れる魚だけどブラックバスとはセットとばかりにブルーギルとニジマスが釣れた。
他にタナゴも引っかかるようだ。
「顔文字さんとの約束の時間も近いし後は置き土産のカニ籠を設置してっと……」
「何といいますかギルドの皆さんは絆さんが来たって一目でわかるようになりましたね」
「まあ、設置を繰り返してるからね」
忘れがちではあるけれどパーティーを組んでいるかギルドが同じだとカニ籠を目視できる。
それ以外だと見えないそうだ。
顔文字さんのギルドとは同盟だから見えるだろう。
「さ、行こう」
「はい。楽しかったですね」
「うん」
って事で俺たちは釣りを切り上げてノースフェラトへと戻った。
思えばヌシを釣ろうとワクワクしながらとは違ったゆったりとした調査だったな。
申し訳ありませんが、諸事情でしばらく休載しようと思います。




