大会ルール
「絆さん。まだ釣りますか?」
「いや、ブラックバスも気になるから適度に切り上げようかな。何よりカニ籠設置をしておきたい」
「相変わらずなんですね。絆さんのカニ籠は底をつきませんね」
「実はカルミラ島に戻った際に残ってた籠を倉庫から出した」
一応最後のカニ籠なので補充しないといけない。
倉庫の物資でコツコツ作るのが良いかな。
もう自作できるし。
「抜け目がないですね」
「まあね」
って訳である程度カニ籠を設置して次の湖へと移動する事にした。
出てくる魔物は……開拓地に近いからかそこまで強くなくあっさりと倒せる。
そうして湖に移動した俺たち。
「おー……」
ミカカゲの湿地帯もかなり大きい感じだったけどノースフェラト近くの湖も中々大きい。
「この湖は次の都市なんじゃないかと思われる場所への中継地なんじゃないかって言われてます」
「へー……確かにリスーカの出張店舗があるね」
「ええ、ノースフェラト側から住宅範囲があるようで、コテージ風の家をプレイヤーが建てることが出来るようです。キャンプ場もありますね」
硝子の指さす方角を見ると数名のプレイヤーがテントを張っている姿が見える。
ふむ……ここでペックルハウスを展開してキャンプをするというのも中々乙なものな気もする。
湖畔でゆっくりと休むか……悪くないかもしれない。
釣りに関する施設は中々揃っていていい場所だな。
カルミラ島は海に囲まれているので釣り一極って感じだけどさ。
淡水魚オンリーで釣れるのは楽しいだろう。
プラド草原も似たようなもんか……?
「それであそこでブラックバスの釣り大会が開かれますね」
リスーカが受付をしている大会の登り旗が目に入る。
えっと……開催まで後五日かー。
参加人数は十分いるみたいだ。
優勝景品は水族館のコインでも貰えるコインと釣り具くじ挑戦権A。
「釣り具くじ挑戦権Aって?」
「使うとディメンションウェーブイベント時のルーレットみたいなものが出てランダムで景品がもらえるそうです
。外れだと店売りのルアーが貰えて、当たりだと希少な釣り具や釣り具の強化素材が出るそうですよ」
「おー!」
なんともプレイヤーの競争心を煽る景品が配置されているもんだ。
ちなみに2位や3位もそれぞれ景品がある。
「対象の魚はブラックバスですね」
「じゃあエントリーだけでもするかな」
登録だけでもしておかないと乗り遅れかねない。
何度目の開催かは分からないけど俺も参加して優勝するぞー。
「ようこそ、ここはノースフェラトの湖で開催する釣り大会チュチュ。対象魚はブラックバス、大会中は開拓妖精の使用、特にペックル所持のプレイヤーは水中に泳がせて対象魚を誘導する行為は禁止ッチュ。それでも良いチュ?」
そんな事が出来るのか。まあ……ペックルって指示すれば釣りや漁とか出来るもんな。
システム的に封じてるって事か。
「あ、あなたは……狩猟具のプレイヤーッチュね! しかも中々の実力者! これは波乱の大会になりそうチュ。もしかしたら……伝説のブラックバスが顔を覗かせるかもしれないチュね」
「絆さんだからこそのイベントが発生しそうですね」
「らるく達は絶対に連れてこないと五月蠅そうだなー」
こんなフラグがあったら連れてこないと行けなさそう。
というか伝説のブラックバスってのが気になる。ヌシブラックバスとも違うヌシとして登録されそう。
やる気が出てきたぞ。
「何はともあれ、はい」
「参加費は3000セリンッチュ」
俺はピッと3000セリンをシステムで提出する。
「登録受理したチュ。五日後の朝6時に開催するのでちゃんと参加してほしいチュ。ただし何か予期せぬ出来事が起こった場合は中止になることを先に容赦してほしいチュ」
って事でエントリーは終わった。
もちろん硝子も一緒に参加してくれることになったぞ。
「楽しみですね」
「そうだね。んじゃとりあえず大会に備えて湖の下見をしようか」
「ええ」
という訳で湖へと行く。
「ここって湿地帯と同じく騎乗ペット使って大丈夫なんだよね?」
「はい。小舟とかを使っても良いそうですよ」
「じゃあ俺の騎乗ペット、ライブラリラビットで行くぜ」
早速騎乗ペットを出して乗る。
……乗り方に関しては気にしない。
幼女と二足歩行の大ウサギって感じなんだけどね。
「絆ちゃんが騎乗ペットに乗ってるでござる」
「あの騎乗ペットになりたいでござるよ。片手で絆ちゃんを乗せる人生」
だから遠目で気色悪い話をするなっての。
「……なに? プギャーが絆ちゃんの騎乗ペットとよく似た奴に乗っていた? ギルティ!」
「ギルティ!」
「ギルティ!」
おい……顔文字さん、ここで騎乗ペットに乗って移動を開始したのか?
なんか罪ってファンギルドの連中が騒ぎ始めたぞ大丈夫か!?
「羨ましい」
「ふ……俺もライブラリラビットでござる。絆ちゃんの配下のウサギと思って乗ると楽しいでござる」
「ギルティ!」
……あいつ等、ネタで遊んでると思うほかない。
念のために顔文字さんにチャットを送っておこうかな。
「んむ? 島主よ。なんじゃ?」
「顔文字さん。俺と同じ騎乗ペットに乗ってるのがファンクラブの連中に見られたらしくてギルティって囁かれてるよ」
「なんじゃと!? くっ……後で島主と友達だと手を繋いで歩き、喫茶店で楽しく食事をしているようにするのじゃ」
ああ、予防線が約束されてしまった。
友達アピールに余念がない。
「おやつ時には合流するのじゃぞ! わらわの為にも頼むのじゃ!」
「はいはい」
「絆さん、チャットですか?」
「うん。顔文字さんに連絡をね。騎乗ペットが同じなのをファンクラブに知られたっぽい」
「領地持ち固有の代物という事なのでしょうね」
そうなんだろうなー。
「ノースフェラトの領主も同様の代物を持ってるって事になりそうなのじゃ」
「どんなのを持ってるんだろう?」
「そういえば聞きませんね」
ファンクラブが察知してない事を考えると、あんまり乗ってないのかな?
「昆虫が好きなようじゃし乗らずにいたりしての」
「ありえそうですね」
まさかーそこまでやり遂げるタイプなの?
あんまり会いたくないなー。
「どんな騎乗ペットを持ってるか楽しみですね」
「あったら聞いてみるのも良いかもね」
生憎と留守だった訳だけどさ。
後にクレイさんの情報網に引っかかった話だと茶色だったそうだ。ブラウンって感じ?
「何にしても後で合流なのじゃ。ではわらわは調査を続けるのじゃ! おー……花畑なのじゃー」
と、なんとも乙女っぽい声を顔文字さんはさせつつチャットを終えた。
「それじゃあ行きましょうか」
硝子がいつの間にか小舟を出してエンジンを付けている。
「それ……」
「あ、はい。しぇりるさんに小舟を作ってもらいました。エンジン付きです」
「おー……」
いいなー俺の場合は騎乗ペットのライブラリラビットが器用に小舟を漕いでかなり早く動けるからエンジン付きの小舟は使わなくてもよさそう。
けれど、なんかエンジン付きとか羨ましい。
という訳で湖畔から湖に入った俺たち。
「それで絆さん。何処で釣りをしますか?」
「まずは地形の把握の為に軽く回ろう」
「ええ」
という訳で俺を先頭にシステムで表示されるマップを確認しながら湖の釣り場を確認する。
「そういえば釣る場所によって変化ってあるんですか?」
「今までの感覚だと無い」
ぶっちゃけ釣れる場所の条件さえ合っていれば実はルアーを落とすだけでも釣れるしヌシも引っかかっている。
マップごとに釣れる魚が決まっている大雑把なシステムなんじゃないかとは俺もさすがに察してはいるのだ。
「ただ、そこは空気というかなんて言うかね。それとさすがにヌシとなると引っかかる場所が決まってたりするから」
プラドのダンジョンにいた肺魚とかがまさにそれだろう。
「そうですね。釣りギルドの方に聞いた所、目視出来ないヌシは縄張り範囲で釣ると確率で引っかかると仰っていました」
そういった考察も出ているんだな。
「ここのヌシであるブラックバスを釣る際に皆さん検証してましたよ。大会指定の魚は特例処理でブラックバスの生態を知っていると有利になるそうです。大会の場合は大きな魚を釣るのが目的ですので」
「ほう……そんな要素を介入してあるのか」
「ええ、大物を釣る際の法則があって、ヒントはカルミラ島の該当魚の水槽と図書館に密かに追加されていたとか」
なんだか色々と面倒そうだ。




