友達アピール
「――!!」
それで、なんか闇影が人見知りしてるのか眉を寄せてそれとなく距離を取る。
「やあ、自己紹介は進んで居るようだね」
「ええ」
「久しぶりですね」
ロミナがクレイさん達に声を掛ける。
「やあ、君はロミナさんだったね。君の腕はいろんな人から聞いて居るしお世話にもなっているよ。此度でも色々と助かったね」
「それはどうもありがとうございます。こっちの商人が妙な対抗心を抱いて居ましたのであんまり深く話が出来ずに申し訳ない」
なんか二人とも会話が固い。
まあ……どうにも商人関連が得意な奴等の特徴みたいなんだけどね。
「ロミナ、アルトが居なくて色々と困ってるんだろ? クレイさんに管理の手伝いして貰えば?」
「そうだね。いい加減、帰ってこない商人を待って私が本業の鍛冶に打ち込めなくては本末転倒な所なんでね。依頼出来るかな?」
「その辺りは得意としている事だから問題は無いよ。まあ……彼は手段を選ばず手広くしすぎて居るのである程度、モラルのある範囲での活動になってしまうけど良いかい?」
「むしろそれくらいが丁度良い。まったく……と嘆きたくなるような酷い事にも死の商人は関わっていたのでね」
ロミナがクレイさんと何か同意している。
「アルトってどんな商売してたわけ? 闇の方だとさ」
「うーん……そこは絆くん達に言うのは憚られると言うか……」
なんかロミナが言葉を選んで来るなぁ。
どんな事をアイツはやらかしてたんだ?
そこに対してクレイさんが朗らかに笑っている。
こういう笑い方をする時はいたずら気分でいるのわかってきてるからね? クレイさん。
「こう……このゲームは健全であるのは絆さんもわかっているだろう? お酒とかね。料理酒以外は無いし飲んでも状態異常で酩酊は無いんだ」
「まあ……そうだね」
闇影と意気投合した時は空気に飲まれて愚痴合戦しただけだしね。
「それでも参加者には大人な人も多い。数年に渡ってプレイする中でそういった事もなく、ずっととなると我慢できない人も出てくるだろう?」
「……」
何を言いたいのかなんとなくわかってきたような気はしてくる。
「要するに出来ないけど恋愛とお酒、それと宿での過激なトークを行う店なんかもギリギリのラインで行われているんだ」
うわぁ……あいつ、想像以上にやばいな。
「幸いなことにゲームだから美男美女揃い。一緒に飲んで宿で過激なトークと運動って事だぜ」
「親しい間ならやっても楽しいのかもしれないけどねー。てりすもある程度理解はできるけどお店にするのはどうなのかしらねー」
らるくとてりすが間に入ってきた。
とにかくあの野郎! なんて店の元締めをしてやがったんだ!
その手の店の管理をクレイさんはしないよ、それでも良いかい?
って聞いて来たのね。
んなもん潰せ、ロミナはノータッチで良いだろ。
「人気の衣装は着物とドレスだとか激しくどうでも良い装備発注が来た時は私にどうしろと言うのかと子飼いの商人に問い詰めたよ」
ロミナ、俺と硝子を見ないでくれない?
「……ファンクラブの連中に制裁を与える時か?」
「メンバーがそのような事をした場合は制裁対象だそうだよ。健全をモットーにしてるそうだから」
逆に制裁してるの!?
一体どんな組織なの? 俺のファンクラブって? 本気でわからん。
「まあ……あっちはあっちで絆くんと硝子くんが装備している衣装によく似た服を着るプレイヤーへの風当たりが強いんだけどね。絆ちゃんと硝子ちゃんを真似るのは有罪とね……」
「悪い人たちじゃないのは分かるのですけどね……」
硝子もなんか顔を逸らしてる。
一体何があったんだよ?
「アンタ……ファンがいるって大変ね」
「アイドルというのは本当なんじゃな!」
「俺はアイドルじゃねえ!」
「むしろノジャくんは絆くんを誘拐した主犯として付け狙われる可能性があるので注意が必要だよ」
「ストーカーか! ヤバいのじゃ! どうしたら良いのかのう?」
「素直に投降して罵倒を受け入れるって所じゃないの?」
姉さん、アンタ鬼か!
「ねーウサウニーってこの子達でしょ? かなり見た目良いからノジャに嫌がらせしたら雇用出来ないとか噂を広めれば良いんじゃ無いの?」
まあ……ウサウニーとペックルの雇用窓口はそれぞれの領地だろうし、ブラックリストに入れればウサウニーの雇用は難しくはなりそう。
「残念ですが絆さんのファンはペックルを雇用する取り決めがあるようです。リスーカの時にそう決めたそうですよ」
……そこまで俺縛りで行く事に何の意味があるのか理解に苦しむよ本当。
「お姉ちゃんが呼んだんでしょ? 全責任をお姉ちゃんになすりつければ良いんじゃない?」
「ちょっと紡!? マジで鉄拳制裁するわよ!?」
あ、でも姉さんが原因だってのは間違いないよね。
俺を呼ぶように提案したのは姉さんなんだし。
「あ、あのねノジャ子、ここはアレよ。絆と親友ってアピールするのよ! 下手に攻撃したら絆が悲しむってファンの連中に思わせるの! それが一番よ」
「姉さんが命乞いとばかりに無理やり案を言い出した」
「黙りなさい! 私もアイツらに絡まれるのは嫌なのよ! 誰が男よ! 私は死んでも謝らないわよ!」
しっかりと根にもってるな姉さんも。
「ノジャ子! 何が何でも絆と友達アピール!」
「わ、わかったのじゃ! 手段を選ばず島主と友達アピールをするのじゃ!」
それもどうなんだ?
というか既に友達ではあるとは思うけど……弟子って感覚でもあるけどさ。
「島主よ! しっかりとわらわと友達であるアピールなのじゃ! サインの書き方を教えようかの! 握手もじゃ! しっかりとファンを喜ばせる握手というのがあるのじゃぞ!」
なんでサイン? それと握手ってなんで顔文字さんそんな事を知ってるんだろ?
アイドルオタなのかな?
こう、イケメンアイドルの握手会とかの常連とかさ。
絶妙にドルオタっぽい所あるし、その可能性が高いな。
顔文字さんはアイドルオタクで農業に憧れているんだろう。
「がんばると良いね」
って思いっきり俺の方に話題が飛び火してるだろ。
「自己紹介してる最中なんだしファンクラブに関しては後にしてさ。アルトが要するに合法ギリギリ風俗経営までしてたって事だろ?」
何処まで手を広げてんだよ。
「そうなるね」
「事業整理って事で切り捨てれば良いだろ。クレイさんもそこはノータッチみたいだし」
「まあね。さすがにそんな事をするつもりはないよ」
金になるならなんでもするって商人はいるけどクレイさんは理性のある商人だから出来る事の限界はある。
「絆さん達には恩もあるからね。その代わりに頼まれてくれれば良いさ」
「わかってるって。むしろこの辺りはロミナやアルトが専売特許だと思うけどね」
「なんだい? まあ、何かは予想が出来るけど」
ロミナも話くらいは聞いた事があるんだろう。
「一体何ですか? アルトさんの仕事の一部を手伝って下さるのでしたら私も協力しますよ?」
硝子も快く協力してくれるつもりで何より。
俺より顔は広いし、すぐに件の娘さんは見つかるかも知れない。
「ああ、この人がオルトクレイさんであっちがミリーさんね。オルトって略で呼ぶとアルトと被るからみんなクレイさんって呼んでるのはわかるだろ? で――」
と、俺が闇影やしぇりる等、人見知りする連中にクレイさん達の事情を掻い摘まんで説明する。
なんか会社の社長で忙しいけど娘と一緒に楽しい時間を確保したいとゲームに参加を決めた。
ここで部下が娘にサプライズをして驚かせようとしてゲーム内で逃げられた事、家族団らんの為に影武者を使って逃げた娘を探している事、娘の設定を守るために開拓に立候補した事などをだ。
「え……本当に、中身は斡旋された者じゃないでござるか?」




