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被害報告

 ――『絆†エクシード』さんに複数チャットが届きました。参加しますか?


 第一都市へ向かっている途中。

 奏姉さんと紡からチャットが送られてきた。

 当然ながらディメンションウェーブの件だろう。

 第一に着いたら俺の方から送ろうと考えていた所だったので舵を取りながら参加する。


「お兄ちゃん!? 大丈夫だった?」

「絆、怪我はない?」


 突然二人の大きな声が響いた。

 ゲームとはいえ、あれだけの事があったので気持ちは理解できる。


「ああ、海にいたんだが、硝子……仲間のおかげでダメージ一つない」

「よかった~……こっちはパーティーの二人がデスペナったよ」

「……お姉ちゃんの方では三人かな~」

「そんなにか?」


 二人から落ち込んだ声で被害が報告される。

 話によれば、デスペナルティを受けた奴は数えるのも嫌になる位いるそうだ。

 しかし、予想よりも随分と被害が大きい。

 紡が所属しているという事は、おそらく前線パーティーだ。

 その中の二人が死んだとなると相当だろう。

 もしかしたら俺達は海がクッションになって比較的にダメージが少なかったのかもしれない。いや……発生源が陸の方だったから離れていたのも大きいのか。

 あくまで想像だが、あの突風を受けて壁にでもぶつかったら2000ダメージでは済まない気がする。そう考えると俺達は運が良かったのかもな。


「それでそっちは今どうなってるんだ? 俺達は海にいるから情報に疎くて」

「海? 海って海岸?」

「いや、沖の方」

「そんな所に行けるの? というかどうやっていくの?」

「RPGで海を移動する道具って言ったらそう何個も無いだろうよ」

「「なるほど!」」


 それで納得する所がゲーマーの悲しさか。

 船、あるいはそれに追随するアイテムを想像したに違いない。


「こっちは今、皆……沢山の人達で調査してる所だよ」

「調査?」

「ええ、ヒビの位置から第一から第二の間だと思うんだけど、何かイベントが発生しているんじゃないかな? というのが大多数の考えね~」

「なるほど」


 よくよく考えてみればディメンションウェーブという、タイトルにもなっている物がどの様なイベントなのか俺達は何も知らない。

 現状、赤い空と空間のヒビが関係しているのは確実だが、大多数参加型のイベントである可能性は十分考えられる。

 参加するしないに問わず、情報を得ておくのは重要だろう。


「絆お兄ちゃん、第一の方に来れる?」

「今向かってる」

「じゃあ第一に着いたら広場で合流しましょう」

「わかった。じゃあ一度チャット切るな」


 ――チャットが終了しました。通常会話に戻ります。


 チャットを終了して、硝子達に振り返ると三人がこっちを凝視していた。

 いや……普通に電話、じゃなくてチャットしていただけだが。


「な、なんだ?」

「紡さんからお電話ですか?」

「ああ、姉さんと紡からだった」

「お姉さんもいるのですか」

「そういえば言ってなかったな。三人でやってるんだ」

「どうして別々に行動しているのでござるか?」

「そういえば、どうしてだろうな」


 確かに姉妹三人でやっているのに何故か全員別行動だ。

 言われてみれば三人でパーティーを組んでも良かったかもしれない。俺は最初から釣りをする事を公言していたので、二人が察してくれたんだろうけど。


「第一に着いたら一度合流する事になった」

「ご兄弟の安否ですから、とても大事な事だと思います」

「硝子殿の言う通りでござるな。この際絆殿だけでも先に第一に行くのはどうでござるか?」

「いや、二人とも大丈夫だったし、そんなに急いで合流する程でもないだろうよ」


 これが創作物に良くあるデスゲームって訳でもあるまいし。

 家族の贔屓目だが、あいつ等ゲームは俺よりも上手いからな。実際、ディメンションウェーブの直撃を受けて自分達は死んでないよっぽいオーラ出してたし。

 心配してないかと言われれば嘘になるが、今直ぐ会わなきゃダメって程でもない。


「……そうでもない」

「大丈夫だろ。一応前線組だしな」

「違う。絆には第一へ帰還。情報収集してほしい」


 なるほど。一理あるな。

 海から船で帰れば距離の関係、帰還アイテムを使うよりは時間が掛かる。

 その点、パーティーメンバーの誰かが情報収集に先行するのは十分ありだ。


「だけど、それは俺じゃなくても良いんじゃないか?」

「絆はこの中で一番友好関係が広い。情報集めなら、絆が適任」

「しぇりるさんのお言葉通りですね。絆さんが一番かと思われます」

「自分、人と話すのが苦手でござる故」


 確かに前線組の紡、姉さん、アルト、ロミナ辺りに聞けば現状を把握するのは早そうだが、面倒を押し付けられている気もする。本音を言えば、それを喜んで頷いてしまう俺はシスターコンプレックスなのかもしれないけどさ。


「ありがとう。じゃあ先に行って可能な限り情報を集めとく。着いたら連絡頼むぞ」

「ん」


 スピリットとして常用基本である帰還アイテム『帰路ノ写本』をアイテム欄から選ぶ。

 緊急脱出用に三つ持っているが、これ1000セリンもするんだよな……。

 いや、我侭を言うまい。時は金なり、とも言うからな。

 今は1000セリンよりもディメンションウェーブ対策が重要だろう。

 そういう訳で俺は帰路ノ写本を使用し、三人を残して先に第一都市へ急いだ。


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