スピリットテンプレ
「ドレイン強化は仲間の装備につけた事あったなぁ」
「強化だけなら良いね。ただ、まあ……確かに多少の問題はあるのだけどね」
「ドレイン付与すると何か問題が?」
「そうだねー……代償が少し発生するからスピリットはその辺りを前提に装備を持っている人が多いね」
やはり万事解決って事にはならないのが悩み所なのか。
ロミナは何故俺や硝子、闇影にそう言った相談をしなかったのか。
……単純に俺達が戦闘特化じゃないって所もありそう。
硝子は戦闘重視だけどさ。
「バランスの調整なのか、装備の性能が下がるマイナス効果が付くそうだよ。そうじゃない場合は武器を振る毎にエネルギー消費するとか」
まあ……よくある効果だよな。命中が極端に低いとかゲーマーだったらピンと来る。
アンデッドに使うと逆に回復されるとかも定番だ。
闇影の魔法だってコストが重すぎるんだ。
武器を振って相手を殴るだけでエネルギーがもりもりならスピリットは強すぎるだろう。
高火力で叩き続ければ無限に戦えてしまう。
ダメージなんて知った事かとばかりにさ。
「けど持っていると便利だって事でスピリットは所持して居る鉄板武器だそうだね」
「俺や硝子は持ってなかったけどなー」
「アンタ等は変わり者でしょ。ヒーラー無しでミカカゲの奥地にまで行ってるんだから」
「情報の仕入れ先はアルトとロミナが居るから問題は無かったんだがな……」
「情報漏洩でスピリットは弱種族だって話が広がっていたからね。スピリットの全体人口は少ないのは事実だろうね。私も知っているスピリットは当然少ないよ」
実際は中々優秀だって事がゲーム開始後に判明した訳だしなぁ。
「何にしても俺や硝子はドレインを必要に感じなかったなー」
「この辺りは個人差って事と噂の広まりとかでプレイスタイルの差異って事なんだろうね」
ドレイン装備は必須って程ではないってね。
まあ……元素変換とか手持ちの素材でエネルギーに変換出来るからなぁ。
無くても困んないし態々デメリットのある付与した装備を使う必要は無い。
「隣の芝生は青く見える。スピリットの情報網でテンプレートが出来てないって事じゃ無い? もしくはデマが広がったとか」
「どこで広がったのかしらね?」
何度も脳裏に浮かんで来るドレイン忍者の影。
まあ……アイツは波の成績良すぎるもんな。きっと参考にされすぎてスピリットが色々と勘違いされてるんだろう。
硝子も有名プレイヤーなんだけどなー。
「種族変更とかいずれアップデートに出て来るのかなー」
「ありそうよね。問題はアバターを再度組み直しをしないといけないプレイヤーとかもいる問題だけど」
あー……その辺りの設定が障害になりそうな気がしなくもない。
「君達の活躍からスピリットになりたいってプレイヤーは一定数いるだろうね」
「難点は死んだ時のペナルティが大きい所だと思うんだけどな」
しばらくは狩りとかには出られないくらいに大幅に弱体化するのは避けられない。
「実績までは解除されないからケアは出来そうだと私は思うのだがね」
「そこは運営の仕込み具合によるんじゃないかしら」
「確かにね」
何処までユーザーの望む仕込みをして居るかによるとは思う。
テストプレイヤーが居たんだし、要望はあったはずだよなー……。
「さてと、雑談はこれくらいにして作業再開するわよー」
「姉さん頑張ってー」
「アンタは……はぁ、好きに釣りしてなさい」
「はーい」
俺はちゃんと働いたもん。
「ははは、魚も調合素材に使えるし色々と楽しんで行くのが良いと思うよ」
「姉さんも狩り以外に何か趣味を見つければ良いと思う」
戦闘、採取に料理って生活に結びつけ過ぎなんだよね。姉さんは。
「うるさいわね。紡程じゃないから良いでしょうが」
「そこは否定しない。まあ、姉さんも暴れ足りないならダンジョンに行ってくれば良いもんね」
「そうよ。物資調達くらいは出来るでしょ」
オアシスに居るヌシはなんだろうなー……カルミラ島の海側みたいにヌシが釣れない可能性は大いにあるんだけどさ。
なんて考えつつ釣り竿を垂らし続けている。
「フィッシュ!」
また釣り上げたので姉さん達にピラニアを見せる。
「良くやるわ」
「場所によって魚が変わるからかなり奥深いよ? 適当なゲームだってあるのにこんなにあるのは凄いって」
メインコンテンツじゃ無いって事で魚の種類が3~5種類しか無いゲームだってあるだろうに、このゲームでは無数に出て来る。
戦闘がメインのゲームではあるようだけどね。このさじ加減が実に難しい。
「釣りは昔、金持ちの道楽に数えられていたようだね。私の友人も釣りが趣味な人が居てね。絆さんとは仲良く出来そうだね。このゲームに誘えば良かったよ」
「今のゲームが終わっても第二回ディメンションウェーブに参加して貰えば話題は通じるんじゃ無いかしら?」
「うーん……」
なんかクレイさんが苦笑している。
「私の耳に入った話ではあるのだけど。セカンドライフプロジェクトのゲームはプレイする毎に自動の変動を入れて居るそうなんだ」
おや? そんな話があるのか?
「ネット内の噂で聞いた事があるわね。ゲーム内容の口外はしてはならないと念押しされていて……デマだのなんだの騒がれていたわ」
「そう。だから別のセカンドライフプロジェクトで通じた方法が次のセカンドライフプロジェクトで通じるとは限らない。スピリットが強い種族と言う設定が事実だったとして、次も通じるとは限らないそうだよ」
「ありえるわね。ベータテストの時は弱かったって事で」
「強いかどうかは分からないけどなるほどなー隣の芝生だと俺は思うよ」
何度も思うけど隣の芝生って奴でしか無いと思うんだけどな。
だってディメンションウェーブイベント毎の限界突破以外だと魔物を倒して限界突破実績を達成しないと引き上げ出来ない。
戦闘をしなくても経験値に該当するエネルギーが溜まる種族だけど、その上限の所為で強さへの制限は強めだ。
「ディメンションウェーブイベント中はタフってだけで弱体化もする訳だし」
「まあ……アンタはディメンションウェーブイベントで大活躍したって話を聞くけど、それも運や装備に助けられているって話よね」
「ダメージキングなんて妬みも一時期言われていたね」
う……クレイさんも覚えて居たか俺の忌まわしき過去の名称を。
「それだけ耐えてたって事でしょうに、よく耐えきって居たわよね。あんたこそブレイブペックルが相応しいわ」
「まだゲームが始まったばかりで敵の攻撃が弱かったのが大きいよ姉さん」
だからそのネタ枠は姉さんこそ相応しいよ。
「あの頃からアンタ達、妙に強いって言われてたわよ」
「ネタバレはされていたはずだけど?」
「まあね。海の魔物が既存の大陸狩り場より効率が良かったんでしょ。解体の仕組みもすぐに気付いた。ゲームの熟知が早かったのよね」
あの頃は何もかも手探りでみんな思い思いにプレイしていた。
だから楽しい時期でもある。
「私はあの頃は娘を探していた所だったね。妻も戦いなんてしたくなくて町で人捜しをしていたよ」
クレイさん達はその辺りで出遅れていたのね。
「案外、プレイヤーの動きは規則性があるって事だろうね。絆さん達のように別の可能性を模索するのはゲーマーほど難しい」
上手いこと流れに乗ったに過ぎないからな。俺は。
「話は戻るけど、同一ユーザーの同じゲーム参加は不可なはずだから試しようが無い」
「そこまで変動するなら再度参加しても良いと思うのだけどね」
姉さんがあり得そうな事を呟く。
「身分偽造してゲーム内にログインとかしてそうよね。見た事無いけどゲーム開始当初ベータテスターだぜ! ってほざいてる人は居たけどデマだったのかしら、たいして強くなかったから嘘だって事になったけど」
「そこは誤魔化しようが無い認証があってね。仮に審査を掻い潜っても出来ないから間違い無くデマだね」
「科学の力ってすげー!」




