重ね装備
「おっとフィッシュー!」
グイ! っと釣り竿を垂らしていたら魚が引っかかった。
フィーバールアーはまだクールタイム中なので使用出来ない。
何が釣れるかなーと釣り上げる。
プラドオアシスコイが釣れた。
……オリジナルな魚が多いな。場所が場所だからか?
水場が少ないからだろうか?
他に何か釣れないかな? と水面に目をこらすと小さい魚影が確認出来る。
うーん……かなり小型だな。
投網とか使った方が早そうなのがいる。
とはいえ竿で一度は釣りたい。
仕掛けを吟味して小さい釣り針で挑戦してみる。
思いのほかあっさりと魚が釣れた。
「デザートパプフィッシュ」
これは実在しそうな魚っぽい。
ただ、さすがに俺もよくわからん。
サクサク釣れるけどなんか悪い気がしてくる。
他にピラニアとか釣れた。
なんで砂漠でピラニア?
ちなみにピラニアってイメージだと凶暴で群れで襲いかかって貪るイメージがあるけどそこまで噛む力は強くなく、臆病な性質で死肉を食べる魚らしい。
そんな感じで釣っていると変わった魚が釣れた。
「レッドテールキャットフィッシュ?」
なんかナマズに似た感じだけどナマズよりも大きめで背中には斑点のある尾びれが赤い魚だ。
「おや? その魚は」
ここでクレイさんが俺に近づいてきた。
「ヌシかと思ったら違ったけどちょっと大きめの魚だな」
「南米の方の魚がこんな所で釣れるとは驚きだね」
「あー……そうだな。ピラニアもここで釣れるし結構適当な所があるとは思う」
なんて言うかこのディメンションウェーブは魚の分布がよく分からない所があるのは否定しがたい所がある。
「とはいえレッドテールキャットフィッシュか……観賞魚としてなら知ってるよ」
「へー」
観賞魚か、ディメンションウェーブは生活に重きを置いている側面があるので魚を飼育する事も可能だ。
養殖とかもあるし、出来る事は多いんだよなこのゲーム。
「現地ではピララーラとも呼ばれていてね。人にも懐くから愛嬌もあって可愛いと飼って居る知り合いがいるよ。それと水族館とかでも展示されていたりする魚だね」
「へー」
結構クレイさんも詳しいな。
釣り仲間になってくれないのだろうか?
「絆くんは魚の飼育はしないのかな? 釣りが好きなようだけど」
「え? うーん……」
よくよく考えて見れば俺は基本、釣ったら解体したり食材にしたりとかする事が多かったな。
飼育ねー……なんか庭に錦鯉とかイメージだけど水槽で魚を飼うってのも趣味の一つか。
ペックルハウスに設置すれば何処でも世話は出来そう。
ただ、水槽自体は大きめの物が必要か?
あれか? ヌシとかも水槽に入れて飼育とかも出来るか?
「レッドテールキャットフィッシュは他の魚と同居は難しいけどね」
「そうなのか。んー……一応水族館を所有しているようなもんだからなー」
島の水族館に行けば釣ったことのある魚とか、持ってる魚を寄贈出来る訳でそれってある意味趣味で飼育しているような気もしなくもない。
「はは、確かに君は水族館を個人所有しているような状態だものね。お金持ちって感じだね」
社長らしいクレイさんに言われるのはちょっと堪える。
どんなブルジョアだ? と、俺だって思ってしまいそうだ。
「これってプラド砂漠のナマズ枠って事になるのかな……?」
カルミラ島の池のヌシはナマズだった訳だし、法則を考えるとあり得る話だ。
フィーバールアーを使えば一発で分かりそうだけど一気に釣り上げてしまうか悩み所だな。
スキル効果が重複してしまっているからか歯ごたえがない位にはあっさりとどの魚も釣り上がってしまう。
こう……言ってはなんだけどヌシをサクッと釣り上げてしまったら他にある釣り場が限られてしまう。
開拓地に閉じ込められている現状から考えると手加減とかすべきか。
意識的にフィッシングマスタリーを下げて挑むとかをするのも良いかもしれない。
「カルミラ島ではナマズが釣れるのかい? 生憎釣りはしていないのでね」
「クレイさんも釣りします?」
「いや、調合とか色々とやる事が私にはあるので遠慮しておくよ」
ふむ……卒無く躱されてしまったぞ。
釣り仲間を増やしたい所ではあるが勧誘は中々上手く行かないな。
「そういえばクレイさんは調合技能持ちだけど、俺の釣った魚とかで何か作れない?」
「ポーション類だと魚から油を作ったりするものが多いかな。他に君が広めたカニポーションとかと似たようにフィッシュポーションとかもあるよ」
やっぱりその辺りが全体的に多めかー。
「一応油から色々とポーションの材料へと変換出来る訳だから使えない訳じゃ無いけどね」
「ヌシ素材とかは何か作れるものとかある?」
色々とこの辺りは気になる所だ。
良い物が作れるのなら最終的にロミナと相談して行く事になるだろうなぁ。
「君が水晶湖で釣り上げたヌシから得た、古代魚素材だと付与に使える結晶へと抽出する事が出来そうだね」
「付与に使う材料になるのか、となるとてりす達へと引き渡す感じ?」
「連携スキルで付与を施す事になるだろうね。確かブレイブペックルも付与が出来るとなると、ちょっと確認すると……うん。付与できる効果は遠距離攻撃強化と古代の力、採掘強化だね。古代の力はHPが一定以下になるとステータスが2割上昇だったかな」
あー……ピンチになると能力上昇系の効果を持つ付与が出来るのか。
結構色々と使う事が出来る性能を持っているんだなぁ。
「素材の系統的に化石とかも結晶にすると同じ事が出来そう」
俺の所持する化石はエンシェントドレスの強化に使われたし、似たことがきっと出来ると思う。
「可能性は高いね。てりすくんから報告で聞いた化石のクリーニングに関しても付与で補正を掛けたり出来るんじゃないかな?」
「なるほど……」
「まあ、素材をどう使うかは君が決めて良いとは思うけどね」
「みんなと相談って事にしてるけど……」
この辺りはまだみんな決めかねている段階だ。
顔文字さん達は付与効果よりも性能重視で良いって言ってるけど……。
初期のオプション効果が微妙でも付与で誤魔化すって事は割と手ではあるんだよな。
闇影用に作ったアクセサリーとかも中々強力だったわけだし。
しばらく装備を切り替える必要すらない位には優秀だったもんなー。
「採掘って農作業にも補正が掛かりそうだよな」
「確かにそうだね。君のしている化石のクリーニング……考古学をミリーはしたがっているから一緒にさせて貰えると良いね」
クリスタルフィッシュでも採掘系の結晶を作れるから色々と化石探しをするのは助かるとクレイさんは続ける。
うーむ……鍛冶やいろいろな釣り具調達担当のロミナが居ない状況ではあるけどクレイさん達が色々と作ってくれるのでこれまた新鮮な感じに挑戦出来るかな?
「確かブレイブウサウニーがエンシェントドレスを作れるのが分かったから後で作って貰って採掘系の付与を更に施して顔文字さんとミリーさんに着回して貰えば良いかな?」
「ドレスで農業するワラさんという状況になるようだね」
……ちょっとシュールな姿だなぁ。
装備の闇だろうか。
「なんかその辺りの問題とかどうにかならないのかなぁ?」
「出来なくは無いよ」
クレイさんが微笑みながら答える。
「え? そんな事出来るの?」
「ああ、最新のアップデートに重ね装備って項目が追加されてね。実際の装備と見た目を変える事が出来る様になったんだ。ファッションの統一感を出したいプレイヤーには朗報な話さ」
あー見た目に拘るって結構大事とは聞くよな。
「さすがに武器の見た目までは出来ないけど防具の方は割と融通が利くみたいだよ」
「へー」
「主に染色に該当するスキルで出来るのだけど錬金術はここもある程度補正が効くようでね」
「ちょっと」
ここで作業をしていた姉さんが会話に割り込んで来た。
「見た目を変えれるなら着ぐるみとかにも重ね装備出来るのかしら?」




