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ウサウニー

「ええ、来てないわよ」

「え? アイツ、呼ばれてないの?」


 俺の質問に顔文字さんと姉さんが頷く。

 じゃあ別の開拓地に呼ばれたって事か?

 いったい何個あるのかわからないけど……いや、開拓時にあった宝箱のボタンを思い出すに四箇所はありそうだ。

 あくまで可能性だけど。

 どちらにしてもアルトとは合流出来なかったって事で良いか。


「食料が残り少ないピョン。早く植えないとみんな動けなくなっちゃうピョン」


 と、話をしていると……サンタ帽子を被ったウサギが顔文字さんに近づいて声を掛けていた。

 そっと視線をウサギに向けていると顔文字さんも気付いて指さす。


「アレはこの開拓地でのお助けキャラであるウサウニーじゃ。カルミラ島で言う所のペックル枠じゃな」

「そうだろうなとは思ったけど……」


 腹減ったアピールしてるけど、大丈夫かココ。


「ウサギとブラウニーが力を合わせてーウサウニーになったんだピョン! っとか言っておったぞ」


 ブラウニーも確か妖精だったな。

 じゃあ他の開拓地域にも似た様なのがいそうだ。


「開拓地にはそれぞれいるって事なんだな。俺は宝箱を開ける際に四つのボタンで魚を選んだらペックルが出てきたんだけど」

「四つ? 妾が見た時は一つじゃったな」

「……となると先着順か?」


 俺が魚を選んだ結果、ペックルが出て残りが三つになった感じだろうか。

 つまり砂漠なのに畑なのは……運が悪かったな。

 考えてみれば海にある無人島でペックルとか、相性的には最高だった気がする。

 もしも砂漠でペックルだったら……どこかに釣り場があるか。

 多分あのオアシスが希望になるんだろう。


「可能性はあるのう」


 となると開拓地は合計4つである可能性が高まるか。


「妾が見た時は人参のボタンしか無くての。押したらこのウサウニーが出てきた形じゃな」

「なるほど……雇用したペックルはどうなった感じ?」

「帽子が送られてきてこのウサウニーに渡した所、新しくウサウニーが召喚されて能力が引き継がれた形じゃ」


 コンバート機能付きなのか。管轄は別って事なのかも知れない。

 で、さっきのウサウニーの報告はこの開拓地の状況報告に他ならない。

 食糧不足って事なんだろう。

 開拓もそこまで進んでない感じか?


「それでじゃの……友人をという話なのじゃが、ここからは暗い話になるんじゃが……」


 と、顔文字さんはこのプラド砂漠で起こった話を語り始めた。

 顔文字さんも開拓地を授かった事によって意気揚々とイベントに励んだ。

 やがてウサウニーに聞かれてフレンドを呼んでいった。

 呼ばれた友人達もカルミラ島の島主パーティーの如く、成功を掴めるとやる気に満ちた返事が得られた。

 結果、砂漠のダンジョンが開かれた。


 ここまでは順調だったらしい。

 砂漠で得られるドロップ品がカルミラ島で得られる品と大して差が無い事に気付くまでは。


 元々前線組を自負する程の者たちのギルドだった訳で、カルミラ島が開かれた段階でやりこんでいた訳で……既にクリアしたダンジョンと同じ難易度では歯ごたえが無い。

 挙げ句開拓には相応に時間が掛かる。

 進めているようで全く進めていない様な焦りが開拓メンバーに起こり始めた。

 しかもミカカゲへの攻略もあった……どっちを攻略するのが正しいのかという迷いも大きくなっていく。

 あっちの方がより俺達は強くなれたんじゃないか? って話がよくされる様になっていった。


「妾も色々と頑張っておったし、徐々に開拓も進んでおったのじゃよ。じゃが外界の者たちの方が高難易度のイベントがあると人を呼ぶ毎に装備品から何までここより強力な装備を持ってこられてのう。主にカニ装備に始まった品々じゃな」


 ……まあ、汎用性ではカニ装備は相当有名だもんな。

 出店は俺達の所からだった訳で。


「仕舞いには呼んだ所で『型落ち開拓地に呼ぶんじゃねえよ!』と罵倒までされる始末……少しでも遅れを取り戻そうとみんなダンジョンに潜りきりになり、妾は一人開拓をのう……」


 うわ……未だに戦う事しか頭にないって偏ったゲームプレイをしている連中がいるのかよ。

 アルトが言葉を濁していたのはこういう部分の事だろうな。


「呼んだ当初は島主パーティーよりも遙かに強くなれるとやる気を見せていたんじゃがな……あやつ等……仕返しに来ても追い返してやると毎日恨み節を呟く者もおったぞ」


 ……なんか硝子の元パーティーメンバーっぽい奴の話だなぁ。

 嫌だなぁ。ここにいるのかよ。


「ノジャ子の指揮とプレイヤースキルもあるけど、変に面倒見が良いからアレな奴らも集まってたのよ。私をリストラした奴も呼んでたみたいだけど」


 ある意味、敵対ギルドに俺は呼ばれたのか?

 ちょっと不安になってきた。

 ちゃんと俺の顔を立ててくれないと俺がストレスで胃に穴が開くぞ。

 俺はストレスに弱い虚弱キャラなんだ。多分ね。


 顔文字さんはその後の出来事は概要で説明した。

 きっとドロドロで殺伐とした環境なんだろう。

 かなり疲れた様な顔をしている。


 こう……開拓地に閉じ込められるって相当ストレスだよな。

 俺も島から出るのに相当時間が掛かったから浦島太郎気分だったぞ。

 その中でもカルミラ島が最前線を超えた場所で強力な武具や道具、魔物と戦えるからやる気が出ていた。

 けど、ここではカルミラ島さえあれば十分って空気が蔓延していたら……サッサと開拓を終わらせるなりしたくもなるのがゲーマーの性か。


「ゴールがわかってるならササッと目的に対して頑張りゃ良いのに」

「そこで色々と問題が起こってのう。ただ、ここは話の趣旨から少しずれるので後回しをするのじゃ」


 何か問題が起こっているけど、そこは俺を呼ぶ状況とは別と。


「後から来る者の方が強くなっている状況でドンドン空気が悪くなって」


 そんな矢先に起こったのが魔王軍侵攻イベント。

 開拓メンバーは免除されてそれなりの報酬が貰える。

 それでも型落ちの開拓イベントに閉じ込められて居た訳で。

 そういえば顔文字さんを見なくなったのはその辺りからだっけ。

 イベントの関係もあるけどかなり大雑把な感じになったもんなー……クリアは出来たけど。


「ミカカゲの更なる奥地へ行けるようになったと次に呼んだ者が話した辺りで関係は決定的な物へと変わって行って、みんな妾の悪口を言うようになったんじゃ」


 うわ……それは辛い。

 とんでもない針のムシロ状態だろ。

 俺も下手すりゃそんな状況になりかねなかったんだよな……知り合い少ないし、硝子達が気の良い人たちだったから許してくれているだけで。


「開拓は決定的に上手く行かずに頓挫しておった。どうやっても上手く行かず詰んでいる状況だったのじゃよ」

「何が問題な訳?」

「それはの――」

「絆、アンタ農業得意でしょ?」


 顔文字さんが説明するより早く痺れを切らした姉さんが間に入ってきた。

 待ってましたって感じだ。


「得意って程じゃないけど」

「嘘おっしゃい! あの農業特化の頭おかしいゲームをやりこんでいたんだから間違い無いでしょ」


 確かにそう言ったゲームをやりこんだ覚えはあるけど、そこでなんで聞かれなきゃいけないんだ?


「そりゃあ農業系のホームページや動画とか書物が攻略サイト扱いされるようなゲームをやってたけどさ」


 大体の農業ゲームって地面を掘ってタネを植えて水を与えてたら育って収穫出来してお金を得られるもんだ。

 けど俺がやっていたゲームは他に色々とリアルに近い難しい要素を大量にぶち込んでいたんだ。

 そういう部分が話題になって有名になったゲームだしな。


 ……もしかして俺が姉さんに呼ばれたのってその辺りからか!?

 ウサウニーの食料って人参だろうから農業で得た作物で働かせるんだろう。


「いやいや、ディメンションウェーブの開拓要素ってかなり大雑把だよ。釣りがそうだっただけだし」


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― 新着の感想 ―
[一言] 砂漠で人参の育成はきつくない?水とか 魚腐らせれば肥料なりそうだが
[一言] どうせストレスがたまりすぎると女性プレイヤーを豚呼ばわりするんだペン
[良い点] サクナ姫のことですね〜!
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