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第四波討伐


『いや、俺見たぞ。このタレット、島主パーティーの海女が凄い速度で組み立てて移動して行く姿』

『俺も見た! 何やってんだ? って思ったけど、布石だったのか』

『ちょっと待て! これって島主パーティーが仕組んだのか!?』

『どんだけタレット設置してんだよ!』

『朗報、何もしなくても魔物達がタレットに撃ち抜かれて倒れていく件』

『悲報、助かった俺達呆然とみてる無能』


 チャットは困惑を極めてるぞ。


『次元ノガネーシャさん。タレットでハチの巣にされてて、針山みたいになってる』

『HPガリガリ削れてくぞ。半端ねえ』


 周囲の魔物を蹴散らした所で硝子や姉さんが俺の方に顔を向ける。


「これってしぇりるちゃんがやったのよね?」

「たぶん……」

「そのようですね」

「絆……今どこ?」


 しぇりるが聞いて来る。


「Bの3と4の間。ボス近く」

「そう……」


 って声がしてしばらくするとしぇりるが騎乗ペットに乗って全速力でこっちにやってきて合流した。


『ざ、雑魚は蹴散らした! みんな! 針山みたいになってるけどボスに突撃だー!』

『お、おおおお!』

『いや、これ……もうMVPとか上位入賞無理じゃね?』

『おこぼれを貰えー!』

『開き直り大事! ラストアタックをもぎ取るのだー!』


 ってプレイヤー達は体制をを立て直してボスに向かって突撃して行く。


「早く行く」


 淡々としぇりるが針山に向かって指さすので俺達は言われるがまま、ボスへと向かい……次元ノガネーシャと名前が出ている動く針の山に向かって攻撃……もう瀕死じゃん。

 今現在も周囲に設置されたバリスタや大砲がボスに向かって飛んで来ている。


「プ、プハオオオ……」


 なんだこの状況と思いながら攻撃を数回入れて居る内に……ドスーン! っと次元ノガネーシャは地面に倒れた。

 次元ノガネーシャの切ない声が酷く印象的だった。

 そりゃあ……周囲に設置されたタレットでハチの巣にされたわけだし分からなくも無い。

 サァア……っと空が晴れ上がり、波が終了したのを告げる。

 本当にコレで良いのか?


「……!」


 しぇりるがドヤ顔をしているが周囲のプレイヤーを含めて言葉を失うばかりだ。


「「「よ……よっしゃー?」」」

「なのか?」

「どうなってんだ? 誰か説明しろ」


 割と本当にどうなってんだ?


 ――ディメンションウェーブ第四波討伐!


 システムウィンドウが表示されて描かれている。


「一応……突破した事になるけど、なんか達成感が薄くなってしまったような……」


 割と本当になんだこれ? って状況に戸惑いを隠せない。


『あのタレット、最初から置かれて無いし、地面から生えたもんじゃなかった』

『ああ、しかも弾にイカやカニ混じってたぞ』

『ゴミ飛ばしてなかったか? 大砲』

『何がどうなってんだ? また島主がやらかしたんだよな?』


 俺がやらかしたってどういう表現だよ!


『絆ちゃんは無実でござる! だって呆然とみてたのを見かけたでござるー』

『みんなの絆ちゃんがここまで頭が回る仕掛けはしないよなー』

『ボスを釣り上げる所を見たかった』

『奇抜な釣りキボン』


 それはそれでよく考えろ。ここは陸だ。俺を馬鹿にするな!

 ボスを釣るってゾウの口に引っかけるにしても俺が来た時には針山だったよ!

 周囲の期待が変な所に集まっている。


 なんて内心愚痴を思っているところでリザルトが表示される。

 与えダメージで俺は……12位か。

 エネルギーブレイドとか闇影との連携スキルで結構稼げたけどやっぱり俺はそこまで貢献しきれてないな。

 使用したエネルギーを考えると大規模イベントだからこそって感じのコストパフォーマンスだ。

 闇影の方は2位……相変わらずの高火力だよな。

 広範囲魔法だから数で稼いでいる強味だ。


「……」


 ふんす! っとしぇりるが胸を張っている。

 堂々の1位だもんな。合計ダメージもぶっちぎりだ。総取りとはこの事で他はドングリの背比べな次元となっている。

 まあ……俺たちはそこそこ稼いでいたのでその中でも少しばかり上なんだけどさ。

 1位な理由は戦場にタレットを無数に設置してぶっ放したのだから当然か?


「ペーン」


 で、タレットをよく見るとペックルたちがなんか特定の場所に立ってタレットを動かすと追随するように無人のタレットが動いている。

 あれってもしかして。


「おそらく何かしらのギミックで連鎖するようにしているでござるな。しぇりる殿はマシンーナリーを習得しているでござるから」

「……そう」


 うわ、やるもんだな。


「戦場に無数のタレット設置ですか、すごいですね」

「絆を参考にした……」

「参考に? 何を?」

「大量設置」

「カニ籠でござるよ。絆殿が各地でばら撒くように設置していたのがアイデア元だとしぇりる殿は言いたいでござる」


 闇影の補足にしぇりるがこくりと頷く。


「備えて大量に作った」

「イカやカニ、バリスタの矢も含めて色々と戦場を飛び交っていましたね」

「あはは、しぇりるちゃんも面白いことをするねー!」


 紡がケラケラと笑っている。まあ……これも工夫次第の戦い方ってことになるのかね。


「本当、固定観念持ってると痛い目見るわ。私ももっと尖った副業を覚えた方がいいのかしらね」


 姉さんも感心している。

 確かに、ここはしぇりるの一本勝ちって感じだ。

 ただ……生活の出費ランキングもぶっちぎりでお前だぞ。


「アルトが帰ってきたら謝らないとな。倉庫にあった金や物資が大量になくなってて悲鳴を上げていたぞ」

「……そう」


 犯人はしぇりるだったというのは想像に容易い。

 工房に籠って今回使うタレットを大量に作っていたのだろう。

 どれだけ技能経験値を稼いだのか。

 集められるだけ集めて色々と作る……ロミナ並みのマシンナリーの腕前をしぇりるは修練しているのかもしれない。


「お兄ちゃんは相変わらず総合順位はトップだね」

「しぇりるが1位じゃないんだな?」


 なぜか総合順位で俺は前回と同じく1位を取っている。

 なんでだ?


「……あれだけ荒稼ぎしてやることをやっていればそうなるかと思いますね」


 姉さんと紡以外の全員が顔を逸らしながら頷いている。


「本当この子は、自分が何をしでかしていたのか自覚がないのが嘆かわしいわ」

「なんかあったっけ?」

「お兄ちゃんのカニ籠漁の結果でプレイヤーの汎用装備がどれだけ広まったのか考えた方がいいよ」

「アルト殿も大量に関わっているでござるがそこは不動でござるな」


 あ、そういえばアルトの名前はあるかな?

 そう思ったのだけどアルトは生活などの項目で名前が載ってなかった。

 免除枠に入っているのだろうなぁ。

 パッと見つけるのが大変なので後にするか。


「産業を生み出す火種に必ず関わりながら色々とやって波にも戦闘貢献していたら他のプレイヤーじゃ手も足も出ないわよ」

「そんなもんかねぇ」

「そもそもお兄ちゃん。ペックルを強化させる帽子を被っているだけで戦闘貢献度が勝手にあがるでしょ」

「でしょうね。かなり恵まれてるわよ。あら、私もかなり貢献扱いされてるわね」


 姉さんが総合順位で12位にいる。一気に順位が跳ね上がったなぁ。

 波での戦闘貢献に関して言えば3位。しぇりる、俺の次に入ってるぞ。


「魔物たちの攻撃を一挙に引き付けて皆さんが戦いやすいようにして下さっていましたもんね」


 侮辱してきたプレイヤーを探して波の戦場を走り回っていただけだけどな。

 魔物を引き集めて他のプレイヤーが戦いやすいようにしていたら貢献度も上がるか。

 被ダメージは思ったより受けていないのは防御力の高さからか……攻撃を捨てて守りに特化した姉さんは侮れないな。


「ふふん。悪くないわね。想定より良かったわ」

「あんまり戦った感じがしなくて残念だなー」


 奏姉さんとは逆に紡の方は不満そうだ。

 当然の事ながら生活に関して俺達はみんな上位に入っている。

 姉さんはこの辺りが低めなのは加入が遅かったのがあるかな。

 ホームレス生活をしていたのが響いているのだろう。

 ただ、これから改善していくかな。


『なんにしてもまた島主パーティーに良い所を持ってかれたって事だな』

『いや――待て! みんな! 冷静によく考えてみるんだ! わっしょいわっしょいしている場合じゃないぞ』


 何やらここで一人のプレイヤーが緊迫した様子で発言した。


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