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絆ちゃんゼミ


 グーとパーで別れましょって奴か?


『A2の塔を折ったぞー』

『早いな』

『そりゃあいつまでも島主パーティーに良い所を取られてらんねえってのー』

『出遅れたけど負けられねーよな』


 なんて話をしている間に二本目の塔が折られてしまった。

 思ったよりも折れるの早いな。イベントが始まって少しは時間が経ったけど最初の波で戦った時よりも格段に速くなってきている。

 手馴れてきた影響か。

 というよりも前回は船での戦闘だったから慣れなかっただけか?


「結構早いな」

「二度目の波の時もボスが出るまでそこそこ早かったでござるな」

「ボスがやっぱり時間かかったよね」

「塔は結局前座か、何かギミックがあったりするし」

「でしょうね。では残った塔があると思われる場所に急いで向かいましょう。私達には騎乗ペットがありますし」


 そういやそうだったな。乗って現地にササっと移動して戦うのが無難か。


『みんな残りの塔を攻撃してくれー。それと罠には注意だぞ』


 ちなみに俺達は特に意識せずに進んでいるけど戦場には定期的に罠が設置されていてプレイヤーの行く手を阻もうとしたりしている。


「わぁああああああ!?」

「大丈夫か! 今回復させるぞ」


 間違って踏んずけてどこからともなく落石が降り注いでダメージを受けているプレイヤーも居たりする。

 念のために罠解除や弓で射って罠を発動させて無力化させたりしてるんだけど、定期的に出るから面倒極まりない。


『ブレイブペックル、何迂回してんだー? こっち……カチ?』

『ぎゃああああああああ! 虎ばさみー!』

『掛かった! 今、要望通り魔物を連れてくわよー! 私を侮辱した報いを受けなさい!』

『俺達は間違ったことを言ってないでござる! 絆ちゃんのお兄さん!』

『俺達はこんな所でブレイブペックルには負けない! 心は常に紳士! 絆ちゃんのパーティーにいる男が悪い』

『だから私は女だって言ってんでしょうがぁああああ! く……しぶとい!』

『ごっちゃんです!』

『あ! ここ、死の商人の絆ちゃんゼミでやったところだ! 罠なんて怖くない!』


 姉さんたち、楽しそうだなー。

 波の空間では何が起こっても不思議じゃないって事かね。罠の再出現が非常に面倒くさい。

 それと絆ちゃんゼミ言うな!

 カニの加工業務委託で罠技能を上げたプレイヤーもチラホラ混じっているのか、戦場の罠解除をしている。

 準備は万全か。

 尚、その死の商人は行方不明だ。


『残りの塔への攻撃、りょうかーい!』


 他のプレイヤーも塔の破壊をするために移動を開始している。

 そういえばしぇりるも好きに行動してもらっているけど大丈夫かな。

 姉さんはともかく、最近壁があるようで不安だ。

 なんて思いながら急いで戦場を騎乗ペットに乗って駆けるのだけど……なんか戦場にバリスタが結構設置されているような?


 あんなのあったっけ?

 しかもバリスタと繋がるように配線が地面を伸びてる……なんだろ?

 固有ギミックもポップしたのかな?


 なんて疑問に思ったが移動優先で出て来る魔物達を倒す。

 ルアーを飛ばして攻撃ってのも馴れてきたなー。


「絆殿と硝子殿の釣り竿の使い方がそれぞれ個性が出て非常に面白いでござるな」

「硝子みたいな仕事人は俺には無理だけどなー」


 糸の強度は硝子の方が上なんだよな。

 動きを抑え込んでもう片方の手で持った武器で攻撃、弱った所で切り刻むとか中々にエグいコンボだ。

 敵の力が弱ければ一方的に攻撃出来る。


「絆さんもやれば出来ると思いますけどね」

「戦闘向けのコンボとか無いのかな?」

「あったら面白いけど、今の俺達の手持ちで発動する気配は無いな」

「ですね。何かあったら良かったのですけど」

「技プラス魔法が多いもんね。むしろ合成スキル関連は魔法の方が色合いが強いかもね」


 ありそうだ。

 複数の魔法を何人かが色々と紡いで強力な魔法を作り出すとか王道だ。

 俺達の編成では中々厳しい。


「スピリットの覚醒スキルみたいな物が分かればもっとバリエーションが作れそうなんだけどな」


 高望みが過ぎるかね。


「アップデートに期待だね」

「絆殿……拙者、絆殿と硝子殿で出来そうな武器の組み合わせがあるでござるよ」

「何?」


 なんか闇影が出来そうな技の組み合わせがあるっぽい。

 アイデアがあるなら波が起こる前の打ち合わせの時に言ってほしいんだがな。


「正確には絆殿が弓も扱えた事を思い出したからでござるが、ちょっと試してみるでござるか?」

「あー……まあ」


 まだ移動中なんだけど、次の目的地に行く間に出来るならやってみても良いのか?


「ではまず硝子殿は離れた所で扇子を上に掲げるでござる。次に絆殿が騎乗ペットに乗り、移動しながら硝子殿の持って居る扇子目掛けて弓矢で射るでござるよ」

「あの……それって流鏑馬ですよね?」


 俺の騎乗ペットってウサギで、しかも片手で抱えられている状態なんだが……まあ、騎乗戦闘スキルを所持してるから武器とか振るえる訳だけどさ。

 やぶさめって何? やっぱ硝子はその辺りも詳しいな。

 なんかお正月に見た事あるような構図……じゃないな。たぶん馬に乗ってやる奴だろこれ。


「ここで芸をしてると周囲のプレイヤーに馬鹿にされるぞ?」


 前回の波の時に俺が釣り竿を海に垂らした際の事を思い出す。

 絶対にあの時みたいに奇妙な行動をしていると、周囲のプレイヤーが俺達に期待の眼差しを送るだろう。


「そうでござるな。ぶっつけでやるのはやめた方が良さそうでござる」

「えーやらないのー? 出来たら面白いのにー」

「仮に出来たとしてやるなら闇影が良いだろ、炎の矢とか出す魔法とかでさ」


 問題は河童に乗った闇影が硝子の扇子に向けて火矢を当てて発動する合成スキルってどんなもんなんだ? って事だけど。


「無難に発動出来そうですね」

「魔法剣とかその辺りの発想的にね」


 チャージ系のスキルが該当するだろうから扇子を広げて待機してればそれっぽい感じに出来そう。


「闇影、墓穴を掘りそうだったな」

「く……気付かず自爆したでござる」

「そもそも闇影ってドレイン忍者だけど、使える魔法の種類が多いよな。スキル管理的に重くない訳?」


 ドレインに始まり、光魔法や回復魔法等、雷魔法とか風魔法とか使える魔法の種類は非常に多い。

 必要な時に付け替えをして居るんだろうとは思って居るけどそれもポンポンしたらマナの消費が多いだろうに。


「そこは困らない範囲でやっているでござるよ。拙者だって色々と学んで居るでござる」


 出会った当初は馬鹿みたいなスキルLvで時間でマイナスだった癖にな。


「色々と実験しているでござる。ちなみに絆殿達と行動すると勝手に習得条件を大きく満たしている属性があって取得するか悩んでいるのはあるでござるよ。サブ属性で特化出来そうな奴でござる」


 硝子と同じく日々エンジョイしてる内に習得条件を満たしてしまった魔法ね。


「生活でも技術が上がる魔法ってあるんだな」

「絆殿や硝子殿も前提のスキルを習得すれば絶対に出るはずでござる。むしろ絆殿向けの属性でござるよ」

「あ、私……少し分かった様な気がしますね」

「何? 硝子も何か心当たりあるの?」

「ええ、私が使っている輪舞零ノ型・雪月花って習得に扇子の技能以外があるようで水に該当するスキルとあるんですよね」


 そうだったのか……水?


「水?」

「ええ、船上戦闘スキルや複数のスキルで条件を満たしている様で、出現した時に既に条件は満たしていたんです。直球のスキルは分かりませんけどね」

「じゃあ闇影が俺達と一緒にいるだけで条件を満たせるのってのは?」

「水属性でござるよ。もちろんブラッディレインも使用する事で水属性魔法の熟練度が上がって習得しやすくなるでござる」

「闇ちゃん水魔法をサブで覚える感じ?」

「闇魔法が通じない時に使うか検討しているって段階でござる。この先、張り替えで行くのは火力が不安になるでござるからな」


 ちなみに雷魔法は水と風のどちらかを上げると習得出来るという話だ。

 スキルツリーがちょっと複雑そうだな。


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