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地引き網


「おお……」

「おいしい! 何杯もご飯が入りそうだね!」

「良い味をしてます」


 みんなで思い思い、出来上がった料理の味を楽しむ。

 ブレイブペックルが気まぐれに作る料理に近い精度だぞ。回復量や料理効果も高いから良い事尽くめだ。

 夢中で食べている連中がいる中、アルトは黙々と食べている。


「アルト、食べ慣れてる感じだな」

「美味しいし、中々悪く無いんじゃないかな? 僕は料理人に食べさせて貰う事があるし、お金を積んで食べたりもしてるからね」


 美食もしてるのか、いつの間にとは思うけど敵情視察とかか?

 カニバイキング店で働かせている料理人とかもいるだろうし、情報屋として知る必要はある感じか。


「よくある上位の味って形だね。もっと専門的な料理が望まれたりする事もあるよ。今度は絆君が得意とする料理で作って見るのも良いかもしれないね」

「そうね。なんか魚料理ばかり作っていたみたいだし、絆の方が連携技の料理で質が良いモノを作るかも知れないわ」

「数はこなしてるからな」


 蟹で。後は色々と作ってるから……魚料理だけは自信があるぞ。


「まあ、専門家にはやはり劣るだろうけど……プレイスタイルで変わったスキルへ派生するのも確認されているからね。何か目新しいスキルが出たら覚えると良いと思うよ」


 そんな現象も確認されているのか。

 とにかく、連携技で物作りという物を確かに見させて貰う事になった。


「それじゃ私は早速アルトさんの所で仕事をさせて貰おうかしらね」


 食事を終えた所で奏姉さんが立ち上がって告げる。

 うーん……本人も覚悟があるから良いのかなー?


「では出発まで見送るとしようか」

「拙者達は狩り場巡回に戻るでござるよ」


 ロミナが姉さんを見送る事を提案した所で闇影が念押しをしてくる。

 そんなにも蟹の委託業務に巻き込まれるのは嫌か。


「わかってるって」

「何があるのか分からないけどやってやるわよ。ほら、行くわよ」

「じゃあ港まで一緒に行くか。しぇりるは来なかったな」

「まだ工房に籠って何か作って居るね。差し入れはしっかりと食べているよ」

「大丈夫かなー……」


 なんか病んでそうな空気がしぇりるからあるんだよな。


「彼女は船造りが本業だからね。少しサボり気味だったから根を詰めているのだろうさ」

「しかし……連携技が創作にも関わっているとなるとしぇりるも知っていないと厳しいんじゃないか?」

「その辺りは私たちが世間話でしているよ。問題は船大工……木工系の技能持ちが少ない点だね」


 このままだとしぇりるが伸び止まりに差し掛かったりするのだろうか?

 人間一人じゃ出来る事が限られてくる……か。技能被りがあっても良いと言うのが良いと思う反面、厳しい所だな。


「細かい事は後で拙者がしぇりる殿に教えておくでござるよ」

「闇ちゃん、しぇりるさんと話してる時あるもんね」

「俺もしてるが……」

「しぇりる殿は絆殿との話を心地良いと言っていたでござるな。気になっても踏み込んで来ずに気を遣ってくれているのが分かると言っていたでござるよ」


 闇影ってしぇりるとそんなに仲良かったのか?

 まあ、死神をしていた頃に厄介になっていたんだから当然か。

 しぇりるって、時々発音が良い英語を喋ってるから……リアルは多少察する事は出来るんだけどな。

 そこを踏み込むのは野暮ってものだ。

 現にみんな俺や姉さんと紡に関して本名を聞いたりしないし。

 なんて話をしながら俺達は奏姉さんとアルトを見送りに港まで来た。


「それじゃ絆、あなたしか出来ない連携技とか探して見なさいよ。きっと何かあるはずだから」


 船に乗り込む奏姉さんが俺に告げる。


「俺が出来る連携技かー……」


 俺の得意な事と言ったら言うまでも無く釣りだ。何か釣りで連携技が出来ないのか?

 手本として奏姉さんが実践して見せてくれたけど、連携のアイコンが出ないと行けない。

 で、硝子と一緒に釣り場で竿を振っていても連携は作動しなかった。

 フィッシングコンボともまた何か違うって事なんだろう。アレもある意味連携だとは思うけどな。

 釣り……みんなでやる事……カニ籠と言った所でピンと閃く。


「硝子、それと闇影と紡ー」


 ここは一緒に楽しんでいる釣り技能が高い硝子と、必然的に上がってしまっている闇影と紡に声を掛けるとしよう。

 ついでにペックルもこの辺りの技能は高いから想像通りなら上手く行くはずだ。


「なんですか?」

「激しく嫌な予感がするでござるがなんでござる?」

「お兄ちゃんから嫌な気配がするね」

「ちょーっと閃いたから連携が出来るかどうか手伝ってくれ」


 と、俺は船に乗り込んだ。


「何を始めるのか、見物だわね」

「絆くん達の連携技がどんなものか」


 奏姉さん達が高みの見物とばかりに答えたのが印象的だ。

 まあ見てろって、なんとなく出来そうな気がする。




「オーエス! オーエス! もっと力の限り引けー!」


 俺達は島の海岸で二本の綱を呼吸を合わせて引いていた。

 右側は俺と硝子、そしてペックル。もう片方は闇影と紡に、もちろんペックル。


「呼吸を合わせて引くんだぞー」

「こ、これも、共同作業でござるが……やりたくないでござるよ!」

「良いから黙ってやれ、俺達のコレまでの努力で最も効率良く出来る連携技だぞ」

「こんな連携技嫌だよー! もっと戦闘で貢献出来る奴が良いのにー!」


 闇影と紡がブツブツと抗議しているが、しっかりとCooperation! って表示が出たのでコレが正解だったんだ。


「なんか釣りマスター達がまた何かしてるな」

「絆ちゃん達がまた可愛らしくしているでござる」


 闇影じゃない奴がまた俺に萌えを感じてやがる。お前は俺が何をしても萌えるんじゃないのか?


「海岸で綱引き?」

「なんかテレビとか動画で見たことある奴だ。何だっけあれ?」


 島にいるプレイヤーも俺達がしている事を見ながらブツブツと話し合っているが、今はとにかくこの綱を引き終える事が重要だ。


「これが皆さんとの共同作業ですか……船造りをする時みたいなのとも異なりますね」

「まあなー」

「あと、これって釣りというより罠寄りな連携技なのでは?」

「……かもな」


 一応釣りで罠って事なんだろう。

 さて、俺達が行っている連携技が何であろうかというと文字通り地引き網という沿岸漁法である。


「ペーン! ペーン!」


 ペックル達も綱を引く手伝いをして声を出している。

 ミニゲームのアクションは適切なタイミングで綱を引く感じだな。

 ある意味音ゲームみたいな側面があるかも知れない。

 タイミングが合ったら力の限り引く。これで網がどんどん岸に近づいてくる形だ。


「拙者達は一体何をやらされているでござるか? カニ漁よりもシステム的に認められて嫌でござる」

「奥深いにしたって限度があるよね。頭おかしいよこのゲーム!」

「良いから黙って手伝え!」


 徹底したカニ籠漁によって上がった熟練度で最も効率良く出来る連携技だぞ。

 と、闇影と紡が嘆く中で俺達は綱引きを完遂させると、ミニゲームの終了を告げる告知が表示され海面から出た網からキラキラとした輝きを見せながら大量の魚が出てくるエフェクトが発生してリザルトに入った。


 よし、連携技は大成功だ!

 何が手に入ったか確認だぞ。

 ピロンと音がして大量の魚……単純に釣り糸で引っかからない魚が掛かっている様だ。

 見覚えのない魚がチラホラ確認出来る。


 スリープヒラメ? ボマーフィッシュ……ニードルメゴチ……シルバークエ。


 結構色々と魚が見つかるな。

 他に換金用らしき沈没金貨や銀貨なんかも混じっていて、パイプ……空き缶なんかも混じっている。

 あ、ヌシ素材を解体した時に手に入る低級王者の鱗とかが混じってる。

 ヌシを釣れなかったプレイヤー救済も兼ねている連携技って事か?

 検証次第だけど馬鹿に出来ないぞ、これ。


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― 新着の感想 ―
[一言] >ブレイブペックルが気まぐれに作る料理に近い精度だぞ。 だそうですよ、前回の奏さんw
[一言] ???「クエー!!!ですぞペン」
[一言] 地引き網†はじめました 後方姉貴面していた奏のリアクションが気になる所ですね ちょっとの思い付きが一攫千金につながる…
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