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ダークバス


「闇影さんがネタにされるような気がします」


 確かに……これは闇影からしても美味しい魚か。


「本当、ここは何から何まで闇がテーマの場所だな。闇影との出会いもそうだったし」

「ですね。私も負けられないです」

「こんなのが追加で釣れるのは分かったけど……ヌシの追加はされているのか分からないからこのまま継続だ」

「ディメンションウェーブイベントが起こる毎に色々と追加されて行きますからね。居なかったとしても新しいヌシがここで釣れる事になるかも知れませんね」

「そうだな。もしくは……似たような闇の水場とかあったりしてな」


 ありそうですね。なんて冗談を言いながらフィーバータイムが切れるまで釣りを続行しようとルアーを投げて何度も釣って行く。


「ちなみに鮭の生食は養殖じゃないと食中毒になるのを硝子は知っていたか?」

「そうなんですか? このゲームだとどうなっているのでしょう?」

「大雑把に川魚は熱処理しないと毒効果が付くっぽいぞ」

「色々と再現はされているのですね」

「ああ……しかし、ダークサーモンの二匹目が引っかからないな」

「ダークサーモンは引っかかる確率が随分と低いみたいですね」


 入れ食いになるフィーバールアーでも全然引っかからずダークバスとシャドウウグイ、ボーンフィッシュ等が大半だ。


「あ」


 ガクンと硝子の釣り竿が大きくしなる。


「お! 何か大物が引っかかったか?」

「そのようです。頑張って見ますね」


 キリキリと硝子はリールを巻きながら俺がやった様に魚との戦闘を始める。

 うん。俺が教えた動きを正確にしていて、前よりもスキル効果ではなく単純に腕前が上がっている。

 ぐいぐいと暴れはするけど抵抗自体はそこまで強く見えないな。


「俺も手伝うぞ!」


 網の罠を仕掛けて逃げる先を制御しつつ呼び出したクリスに命じて攻撃をしてもらう。

 ルアーで攻撃? 今フィーバー中だから投げ込むと俺も何か引っかかって手伝えないんだ。


「行けます! はあ!」


 ザバァっと魚影が水面から出て岸に打ち上げられる。


「ビンゴ、硝子に釣られちまったな……」


 と、硝子が釣り上げた魚を確認するとヌシダークバスのそれだった。


「やりました。絆さんの手伝いはありましたけどあっさりと釣れちゃいましたね」

「ここは運だからしょうが無い。幾ら俺が入れ食いになるルアーを持って居てもな。そう思うと硝子は釣り運が良いかもしれないぞ」


 ヌシの引っかかりは狙って出来るもんじゃない。こういう所が醍醐味であるし、人によっては嫌がる要素だけど俺は寛大に受け入れたい。

 仲間が釣りの良さに気付いて目の前でヌシを釣り上げたんだ。喜ばずして趣味人にあらず。

 競争相手を蹴落とすだけが全てじゃないのだ。


「前回の敗北からもっと難しいモノだと感じていましたよ」

「そりゃあ経験は元より釣り具も良いモノを揃えたし、何よりなんだかんだ初期の釣り場だからな。アップデートがあったとしても釣りやすいヌシになってしまうんだろうさ」

「なるほど、そう言った意味でも色々と巡ることに意味はありますね」

「ああ、さて……硝子が釣った記念を取らなきゃな。硝子、ヌシダークバスをしっかりと持ってピースだぞ」

「私もやるんですか?」

「当たり前だろ」

「ちょっと恥ずかしいのですけど……わかりました。今度ボス退治をした際に絆さんに同様の事をして貰いましょう」


 なんか妙な決まり事を硝子が作ってしまった。

 ボス狩りで好成績を取るのは基本硝子達なので俺は目立たず済む。

 やり返しはできないぞフハハハ! 俺の貢献度の低さを知るが良い。

 って感じでヌシダークバスを釣り上げた硝子の記念写真は終わった。


「みんなに自慢するために持ち帰ろうか」

「いえ……出来ればこの場で解体してください。なんか気恥ずかしいですので」

「そうか? 硝子の釣ったヌシだってのに」

「良いんです」


 ふむ……硝子も何か気になる所があるって事かな。

 そんな訳で解体した所、ヌシニシンとあまり変わらない素材……低級王者の鱗系の素材が手に入った。

 違った所は闇鯉の胆と闇鯉の泥という素材があった所かな。

 ロミナに預ければ何か良いモノにしてくれるだろう。


「武器に使えなくても何か釣り具にしてくれる様に頼んでみよう。思い出の品になるぞ」

「それは良いですね。良い思い出になります。ここは……本当、色々と思い出になる場所ですね」

「しばらくしたらまた来たら新しい発見があるかも知れないな」

「ええ」


 って感じでヌシが釣られてしまったのでそのままフィーバータイムが切れるまで俺と硝子は釣りを続け、帰ったのだった。






 第二都市に戻った俺達。


「ここは前に来たときと同じくあんまり代わり映えしないな」

「そうですね。前来た時より人は減って居ますね」


 まあ、なんだかんだ第三都市カルミラやミカカゲがあるからここを拠点にするプレイヤーの数は必然的に減るのは当然か。

 それでも第二都市を拠点にして居るプレイヤーとかも居るっぽいけどな。


「えっと……紡と闇影が泊まって居るのは前に泊まった宿だったか」


 第二都市の夜景と川を見ながら、前に泊まった宿を記憶を頼りに探す。


「釣りをするにしても合流してからですよ」

「分かってるって」


 常闇ノ森でそこまで釣りが出来なかったからと安全な所で釣りをするのも良いとは思うけどな。

 カニ籠を設置するのは忘れないぞ。


「ここはアユやヤマメとか釣れるんだ。今はもう俺も料理できるからアユの塩焼きとか出来たてで出せるぞ」

「懐かしいですね。後で釣っていただくのも良いかもしれません」

「ああ。ぶっちゃけ余り食欲をそそらない魚ばかり釣れちゃったもんな」


 闇属性が多い魚ばかりなんで普通の魚のありがたみって奴だ。

 なんて雑談をしながら宿に入ると紡が俺達を見つけて声を掛けてきた。


「あ、お兄ちゃん達おかえり。予定通り帰ってきたんだね」

「手短にって決めてたからな」

「で、結果はどうだった?」

「硝子がやり遂げたぜ!」


 親指を立てて硝子がヌシを釣り上げた事を報告してやる。

 ふふふ……俺の弟子は着実に成長しているぞ。


「なんでお兄ちゃんがそこまで胸を張ってるかよく分からないけど、硝子さんやったね!」

「絆さんの誰かを祝える所は美徳ですね」

「後はアップデートで追加されたのかダークサーモンって言う魚が釣れたぞ」


 ニュッとアイテム欄から取り出して紡に見せつける。


「わ、真っ黒な鮭だね。美味しいの?」

「さてな。身も黒っぽいから食べるとしても食べづらいな」


 悪くなっている魚っぽいというか……色々と勇気が要る食材なのは間違い無い。


「かなり珍しい魚みたいです」

「なるほどなるほど、ヌシは釣れなくてもお兄ちゃん的に妥協出来る範囲だったって事だね」

「そんで闇影はもう寝てるのか?」

「ううん。闇ちゃんは散歩してくるって出かけてったよ」

「ほう……」


 寝るのが早かったり、その癖夜遅くまで起きてたり闇影は気まぐれだな。

 まあ、まだそこまで夜は更けてないから寝る前の散歩って事なのかも知れないけどな。


「で、紡さんは一体どうしてこんな所に?」

「あ、うん。タイミング的に凄く丁度良かったんだ。お兄ちゃん達と闇ちゃんに連絡をしようと思ってた所なの。闇ちゃんに連絡して……と、闇ちゃん闇ちゃん。お兄ちゃん達帰ってきた。ちょっと用事あるから帰ってきてー」


 と、紡が闇影にチャットを飛ばして呼び寄せている。


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[一言] 硝子やったな
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