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空き缶


「硝子や紡、闇影もだけどここにある水場に心当たりはないか?」

「たぶん、こっちでござるな」

「ええ」

「こっちだよお兄ちゃん。まあ今回はボス退治とお兄ちゃんへの釣り場案内で良いかな」

「夜の間しか入れない森なので朝になったら外に出てしまいますので注意してくださいね」


 当然だ。前回ここに来たときは闇影と意気投合してそのまま第二都市の宿に戻ってしまったが今回の俺の目的は釣りだ。

 そんなこんなで常闇ノ森の泉に到着した。

 探さないとこんな所に泉があるだなんて思いもしないな。


「それで絆さん。早速釣りをしますか?」

「もちろん、場所は分かったし今の俺なら魔物が来てもここでなら戦えそうだから先に行ってても良いぞ」

「先……というより第二都市に戻って宿で寝るでござるよ」

「そうだねー念のためここに立ち寄っただけで今夜は寝ても良いかも、なんだかんだ色々と狩り場は回ったし」

「私はご一緒しましょうか」


 お? 硝子も付き合いが良くて良いな。


「絆さんは私が止めないと一晩中釣りをしていそうですからね。ヌシのダークバスでしたっけ? が釣れるまでずっとやっていそうです」


 よく分かって居るじゃないか。確かに俺は釣ると決めたらやり遂げるぞ。


「今日は色々とやってきました。明日もあるのですから程々にしましょう。余裕があったらまた来れば良いのですから」

「時間制限付きか……」

「そう思ってください」

「となるとフィーバールアーで入れ食いをして短期集中で片付けるのが良いか」


 俺の考えに硝子は頷く。


「それで良いかと思いますよ」

「わかった」

「じゃあ私たちは先に帰るねー闇ちゃん。この後どうする?」

「拙者、思い出の店を紡殿に紹介するでござる」

「あの店でしょーお兄ちゃんが行方不明だった時に行ったから覚えてるよー」


 なんて話をしながら闇影と紡は行ってしまった。


「では時間は短いですがやりましょう」

「そうだな」


 俺はフィーバールアーの準備を始め、硝子も釣り竿を取り出す。


「絆さん。この泉だとどんな仕掛けをするのが良いのでしょう? カルミラ島の池と同じ仕掛けで良いのでしょうか?」

「うーん……」

「それと絆さん。ここにカニ籠は設置しないのですか?」

「……考えて見ればそうだな」


 各地にカニ籠を設置している俺が釣り場で設置忘れをするとは思いもしなかった。

 カニ籠を取り出して泉に投入する。

 ボチャンと落ちるカニ籠を見て……森の奥深くにある泉って所でふと、とある童話を思い出した。


「ここで泉から女性が現われて『あなたが落としたのは銀のカニ籠か金のカニ籠かどちらでしょうか?』とか聞かれたら困りそうだよな」


 俺はこの泉にカニ籠を設置しただけです。とか言ったら凄くシュールだ。


「泉と言えばその童話も有名ですが、かの聖剣も泉の精霊から頂いたって話がありますよね」

「あー……確かにこんな闇属性な魔物が多い森の泉でそんな大層な剣が見つかったら嫌だけどさ」


 何せ釣れる主の名前がダークバスだぞ。一番乗りじゃなくても単純に釣りたいだけでここに来たんだけど。


「確かに……呪われた剣とか釣れそうですね」

「フラグを立てないでくれよ」


 不吉で嫌だぞ……妙なイベントが多いゲームなんだ。

 ここで闇の精霊が出てきて呪われた装備なんてもらって外せず過ごすとか勘弁願いたい。


「そもそもここで主を釣った奴がいるんだからイベントは先に叶えられているだろ」

「絆さんほどの釣り技能持ちはまだ居ないと思いますよ」


 全く否定できない!

 自他共に認める釣り好きの俺だからこそ変なイベントを引き当ててしまうかもしれない。


「……釣りをせずに帰ったほうが良い気がするけど、これ以上の成長を遂げるために俺も実績が欲しいんだ」


 今の俺の釣り技能を上げるには数ではなく釣った種類を増やさねばならない。


「硝子、とりあえずありそうなネタを喋るのも良いけど今回は真面目に仕掛けを考えよう」

「そうですね。絆さん、ここではどんな仕掛けが良いでしょうか?」

「俺達がこれから釣るのはダークバス、闇属性のコイだ。仕掛け自体はルアーとかではなく釣り針で餌は練り餌系、パンとかで釣れるはずだ」


 水族館などの資料などを調べたし、ゲームで釣りをする前にコイ釣りは調べたので覚えて居る。


「今回の仕掛けは俺がやっておくから硝子はいつも通り泉に落とすだけで良いはずだ」

「わかりました。では絆さん。お願いしますね」

「もちろん。任せろ」


 とは言ってもシンプルに釣り針に練り餌をつけるだけなんだけどな。


「ルアーとは異なりわかりやすい仕掛けなんですね」

「そうだな。コイを釣るときの仕掛けと根本的には同じだ。ただコイって意外と針を引っかけるのが難しい魚だからタイミングは大事だぞ」

「わかりました」

「とは言っても俺達の釣り技能は高いから相当鈍感でも無い限りは引っかけられるはずだ」

「ええ、それではやってみましょう」


 って感じでシンプルに釣り竿を泉に垂らして引っかかるのを待つ。


「ダークバスって魚を目当てに釣る訳なんだが……名前だけだとブラックバスみたいだな」

「確かにそうですね。絆さん、どんな魚か事前に確認しているんですよね」

「水族館の方でな。ヌシ情報だけど……ブラックバスより黒いコイって感じだぞ。口は小さめだから別種だな」


 コイの方の黒い奴って感じな訳で……コイは元々黒いの居るけどさ。

 ここはゲーム風に闇属性のコイって事なんだろう。


「あ、引っかかりましたね」


 硝子の竿がぐいっとしなってヒットした事を教えてくれる。

 俺がフィーバールアーをする前にヒットか。割と入れ食いか?


「手応えは十分ですね。ハァ!」


 ザバァっとあっさりと硝子は泉から真っ黒な闇を纏ったコイをつり上げた。

 色的な意味じゃなく文字通り闇の気みたいな物を宿しているんだ。

 どう見ても食用に向かないのが分かるなぁ……。


「やっぱり釣りやすい方の魚なんだな」

「そのようですね」

「第一都市のニシン枠で良さそうだ」

「ちなみに解体するんですか?」

「当然するぞ。他に何が釣れるかなー」


 っとフィーバールアーを使ってルアーを泉に投げ入れる。直後にヒット!

 仕掛けを考えずに掛かるから楽と言えば楽だけど手抜きであるから乱用は避けるべきだな。

 サッと俺もダークバスをつり上げる事が出来た。


「どんどん釣って行くぞー。意外な魚が釣れるかも知れないし」


 って事で硝子と一緒に再度キャスティング。

 ぐいっとそのままダークバスが三匹釣れる。


「私の方は最初すぐに引っかかりましたけど、あまり釣れない場所みたいですね」


 フィーバールアー状態の俺に比べて硝子の方は魚が引っかかるペースが遅い。


「変わった魚が釣れる釣り場みたいだしな」


 って所でボーンフィッシュが釣れた。

 意外と釣れる範囲広いなこの魚。

 食う場所も解体する所もないハズレも良いところの魚だ。


「あ、ヒットしましたってボーンフィッシュですね」

「第一都市周辺の釣り場だからしょうが無いのかねー」

「でしょうね」


 って所で目新しい魚が引っかかった。

 シャドウウグイが釣れた。

 ウグイ……川魚じゃなかったっけ?


「あ、普通にコイやウグイも釣れるな」


 ヒョイヒョイと釣り上げて行くとどんどん引っかかっていく。

 思ったより釣れる魚の種類は多いようだ。

 で、最近はあまり引っかかる事は無かったゴミも色々と釣れる。

 空き缶とかな。


「空き缶釣れたー! ……あ、この空き缶、見たことない奴だ」

「空き缶にも種類があるんですか?」

「ああ、見ろ……お汁粉の空き缶だ」

「……」


 硝子があきれ顔で俺が見せるお汁粉の空き缶を見る。


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― 新着の感想 ―
[一言] お汁粉って美味しいよね
[一言] 鯉を釣るとなると、リンクで龍とかもありそう。(鯉の滝登り的な)
[良い点] 初期で空き缶釣りまくってた主人公。 開発スタッフなら空き缶に膨大な種類があったなら空き缶系のイベントは用意してそう。空き缶マニア的な称号とかと一緒に。
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