化石クリーニング
「とにかく上手い事お兄ちゃんがハマりそうな代物が見つかってよかったね、ロミナさん」
「はは、絆くんがどれだけやり遂げるのか興味はあるね」
「良いと言えるのかそれ? まあいいや、しばらく化石のクリーニングをしてみるさ」
なんでもやるのが大事だしな。
これはこれで技能が上がるので無駄になることはない。
一定数集めるとエンシェント装備をロミナが作ってくれるわけだし、上手くクリーニング出来たのはカルミラ島の自室とかで飾っても良さそう。
「それで硝子達の方はどうなんだ? 上手い事魔物退治出来てるか?」
「んー……正直大分きつくなってきたね。ロミナさんに頼んで装備を新調した方が効率が良くなりそうな感じだよ」
「戦闘に大分時間が掛かりましたね」
「強敵だったでござるな」
「ロミナさん。装備素材の為にお兄ちゃん借りて良い?」
まあ強い魔物の素材を使えば自然と強い武具が作れる法則な訳だから解体技能のスキルが高い俺を連れて行くのが効率的か。
情報が出回った昨今、解体持ちって需要が高いんだろうなぁ。
「ああ、こっちは絆くんとペックルが居たおかげで目処は立っているからね。そっちの素材収集のために絆くん、行ってきてくれないか? 化石が出たら残しておくから」
「はいはい。んじゃ硝子たちの方の手伝いをしに行くかー」
って感じで俺は硝子たちと一緒に鉱山内の魔物退治組に参加して解体をしばらく行っていたのだった。
出てきた魔物はアイアンリザードという金属質の皮を持つトカゲ型の魔物とかだったな。皮が文字通り鉄でロミナに後で提出したところ鉄のインゴットに鋳造出来たらしい。
もちろんそんな使い方は間違いで、柔軟な皮みたいな側面も持っているのでなめす事も出来てそっちの方で良い装備になるそうだ。
それからしばらく狩っていると、そろそろ時間なので帰ろうという事になり揃って鉱山から出ることになった。
採掘場の外に出ると既に日が暮れ始めていた。
「おー」
夕日を見ながら今日の収穫を確認する。
鉱石沢山、クリーニング前の化石そこそこ、魔物素材も十分確保出来た。
「今日は疲れましたねー」
「色々と戦いっぱなしだったでござる」
「密度の高い一日だった。今夜は宿に戻ろうか、今日と同じ量を明日採れれば私たちが消費する分は十分に確保できるだろうね」
「ロミナさんの所の鍛冶場が拡張出来たら私たちの装備もよりパワーアップできるね」
「そう」
「いい加減拙者は装備の更新をしたいでござるよ」
闇影の奴、まだそのネタを言うのか。
とはいえさすがに色々と素材を確保できているし、色々とできる頃合いだろう。
「ところで絆くん。水晶ドクロを沢山持ってくれて助かるよ」
あの後、水晶ドクロがそこそこ発掘されて整頓のわかりやすさから俺が預かった。
「量が量だからね。みんな持ってくれて助かる」
「当然ですよ。カルミラ島に着いたら倉庫に入れましょう」
って事で俺達は街へ戻り、ゆっくりと休むことになった。
ま……俺は当然、食事を終えたら風呂までの間の少しの時間に釣りをしに出掛けたんだけどさ。
「ふー……」
風呂の入浴を終えて宿の部屋で涼んでいると部屋の扉がコンコンと鳴り来客を知らせて来た。。
「絆さん居ますかー?」
お? 硝子のようだ。
「いるよー」
扉を開けて挨拶をする。
「なんかあった?」
「いえ、特に何かあった訳じゃないですけど、いらっしゃるかと思いまして」
「釣りに行くと思ってた?」
「そうですね。もう釣りに行ってしまったのかと思っていました。この後行くのですか?」
「いや、風呂に入る前にカニ籠のチェックと釣りを少ししてきたから大丈夫、今夜は釣りに行かないよ」
「そうなのですか? てっきり行くのかと思っていました」
これはアレかな?
硝子も俺の夜釣りについていこうと思って声を掛けてきたのかな?
「今夜は寝るまで化石の処理をしておこうと思ってさ」
「ああ、なるほど」
「しぇりるやロミナの話だと機材をそろえた工房とかでやった方が良いって話だけど、まだそこまで技能がある訳じゃないし、練習にね」
まずは色々とやってコツを掴まないと始まらない。
機材に関しちゃドリルとかある訳だから問題ないだろう。
少なくとも硬くてドリルが通らないとか出力が足りないって事は今の所ない。
技能上昇の条件を満たさないといけないし、何事も挑戦だ。
「少し見ててもよろしいですか?」
「良いけど、そんな見てて面白いもんじゃないと思うよ?」
「絆さんが新しく興味を持ったとの話ですからどんな事をするのかと思いまして、もちろん少し見るだけです」
硝子なりの好奇心って事なのかなー?
「良いよ。じゃあ見てて」
俺は部屋の床に何かの化石を出してクリーニングを行う。
コンコンと大きく化石を砕いて削り落としてーっと。
「結構室内で音がしますね」
「隣の部屋でうるさいとか言われそうだなぁ……闇影とか文句を言いに来そうだ」
アイツ、本当寝るの早いんだよなー。
夜更かしをするって決めない限り闇影の就寝は早い。
正確には夜間での戦闘等を目的とする場合、闇影は昼寝をする。睡眠に拘りがあるのだろうか?
もしくは単純に子供っぽいのか。
「そうですね。寝ている所を起こされるのは嫌ですよね」
このゲームだと部屋でベッドの横になり寝ると意識するとスッと寝入ることができるのだが、何かしらの要素で起きたい時間より早く起こされることもある。
俺も前にペックルに起こされたことがあった。
騒音で起きるって事もあり得る。
「でも気にせずこれだけでもやってくー」
「絆さん……」
カンカンと叩いて何かの化石を一つクリーニングを行った。
お? どうやらこの化石はアンモナイトの化石のようだ。貝の形からそれっぽい。まさに化石って感じだ。
アルトに後で鑑定してもらったところ、エンシェント系の素材に使えることが分かった。
結構使える素材があるっぽい。
「よーし一個完了」
「これが化石のクリーニングですか」
「そう。ほら、しっかりと別のアイテムになってるだろ?」
硝子にクリーニングを行った化石を見せて掘り出された化石との違いを確認してもらう。
「確かに別のアイテムになってます。それで絆さん。化石はやはり魚の化石が欲しいのでしょうか?」
魚の化石って所で興味が湧いたのは事実だ。
だけど……。
「恐竜の化石とかも出たら面白そうだとは思ってる」
「きっと出ますよね」
「そうだとは思うけど……この何かの化石で恐竜の化石が出てきたらどうなるんだろう?」
俺がカンカンと叩いている何かの化石は40センチくらいの石の塊な訳で……。
「恐竜の肋骨の骨の一本とか小さいのだと虚しくなりそう」
「そこはー……現地で掘り出すとかバラバラだけど一か所ずつ見つかるとかではないでしょうか?」
「その辺りも検証する楽しさがある。クリーニングする時は小さいけど掘り出した途端にドンって可能性もある」
ブルーシャークがそれだったしなー……港であんな大きな鮫が釣れたこと自体が不思議だろう。
「どうなるか楽しみです。ただ……全部がいきなり出てきたら凄そうです。恐竜は大きいので」
「さすがに頭とか胴体とかパーツ分けされるんじゃない?」
鑑定した途端、ドン! と大きく部屋を埋め尽くされたら困る。
「ところで……ドリル音が響いてましたね……闇影さんが起きて無いと良いのですけど……」
硝子が気になったのか部屋から出て様子を見に行った。




