化石
「ここの鉱山にも地底湖みたいなのがあるかな?」
「あったらまた泊まりで釣りするでござるか?」
「カルミラ島みたいな時間操作がある訳じゃないだろうからなー……さすがにそこまで粘りはしないぞ」
俺だって節度くらいは守るわい。
「あったら教えますけどほどほどにしてくださいね」
「ほーい」
って感じで俺達は揃って鉱山に入り、二組に分かれて鉱石掘りを行うことにした。
ペックルたちも呼び出して鉱山内で採掘だ。
ドリルでギュイイイイインっと掘れるポイントに向かって採掘を行い続ける。
なんだろう。渋い顔というか重労働をしているような濃ゆい顔つきをしたくなるなー。
ゴロっと出てきた鉱石を拾って収納しては採掘を続ける。
魔法鉄鉱石に宝石類の原石、火石なる属性装備の材料などゴロゴロ出てくるぞ。
もちろん品質なんかもあって素材に拘ったらキリが無さそう。
「ドリル!」
「たまにはこういう作業もして、いかない、とね!」
ロミナがガツっとツルハシで採掘ポイントを砕いていく。
ドリルはドリルで優秀だけどツルハシも負けない代物らしい。
「しぇりるくん。ここの鉱石を使えばかまどの強化は出来ると思うかい?」
「うん」
「かまどの強化?」
「ああ、カルミラ島の鍛冶場は中々良い設備なのだが、新しい素材群を加工するには出力が足りないのが私の技能でわかってね。設備強化をもっとしなければいけないのだよ」
「へー……」
「だから結構な量の鉱石や金属が必要なのさ」
「ああ、だから今回の採掘にロミナが来た訳か」
「そういう事だね。その場で品質の良い鉱石の見極めもできる。まあ不要な鉱石でも使い道があるからいくらあっても困らないのだけどね」
なんて言いながらロミナは掘りだした鉱石の選定をしている。
「絆くんはどんどん掘り進めてくれて結構だ」
「シールドエネルギーが赤字になりすぎない範囲でやるよ」
定期的に回復するのを確認しながら無理のない範囲での採掘を俺もしている。
そうして掘り進んでいくと……ゴロっとなんか見慣れない鉱石というか塊が出てきた。
「なんだ?」
「ジオード?」
ジオード……晶洞という、鉱石類の鑑定が必要なアイテムの名前だ。
ロミナは鍛冶師だからアルト以外でジオードの鑑定ができる。もちろんこのジオードの中にロミナの望んだ代物とかが入っていたりする。
だが、俺が見つけたのはジオードとは異なる岩の塊だ。
「なんだこれ?」
何かの化石? と記された塊が出てきた。
「ああ、化石の塊だね。ここでも出てくるんだ」
「化石なんてあるんだ」
こういう代物もあるんだなー。
「そのようだね。ちなみに他にも発掘品と呼ばれる代物が出てくることが確認されているよ。ほら、タイミングよく出てきた」
そういってロミナは俺にポイっと小さな金色の飛行機みたいなものを投げ渡してくる。
黄金スペースシャトル
という名前の……なんだこれ? 何かのアイテムなのか?
なんか仰々しく古代遺跡から発掘される飛行機を模したものと思われる金で作られた細工品とかテキストには記されている。
「これって?」
「鉱山で稀に見つかる代物で発掘品という類の品だよ。アルトくんが最初にこれを見たときは目を輝かせてオーパーツだ! っと喜んで説明してくれたんだけどね。コロンビアだったかで見つかったって話だったかな」
「なんか高そうな感じだけど……」
「残念ながら……結構な数が産出される、ただの収集アイテムさ。ほかに水晶ドクロとか土偶とか掘っていると稀に見つかる」
「そんなのあったのか……前に採掘に行った時には見かけなかった」
「絆くんたちに軽く調達を頼んだだけだからね。たまたま見つからなかったんだろうさ。ちなみに水晶ドクロもそうだけど鉱石としての使い道があるから不要って程ではないよ。それも溶かして金に出来る訳だしね。アルトくんが切なそうな顔をするけど」
アルト……お前ってオカルト好きなのか? 幽霊船で怯えていたくせに。
いや、オーパーツは金目の物という認識からタダの収集アイテムという判断から残念がっていただけの可能性も高いな。
「で……この化石の方はどうなんだ?」
「一定数集めると装備に出来るよ。化石装備という類の装備品になるね。絆くんが解体して得られる骨などから作れる骨装備の上位装備に該当するかな。集めれば性能は期待できると思うよ」
「……」
なんかアルトの気分がわかったような気がしてきた。
このゲームってこういうロマン系な代物を実用性重視で処理してしまう所があるのかもしれない。
いや、ロミナが悪いわけじゃない。
ロミナは鍛冶職人だから装備品に加工できると言いたいだけなんだろう。
「化石なんだからこう……掘りだして何の化石かとか切り分けたりできない訳?」
「そういう使い方もできるかもしれないね。なんの化石かを見極めればより上位の化石装備もできるかもしれない」
装備から離れてほしいんだけどな……。
とは思うがあまり強く言わないで置くか。
ただ……化石の余計な部分を取って分かりやすくクリーニングするというのは興味がある。
そう思って化石を見ると……あ、解体部位がわかる。
「解体技能に反応がある」
「ほう……掘削辺りの技能かと思ったけど違うようだね」
「そっちでもできるんじゃないかな? あくまでシナジー効果的な感じだと思う。けど……たぶん難易度はそこそこ高めだな」
鉱石類の硬い所と柔らかい所を見極めるのに近い。
解体の効果が働くとしても反映する値はそんなに高くないと感じる。
俺はドリルをそこそこ使って遊んでいたから掘削系も多少割り振ることができるし、今日の採掘の為にそこそこ振って効率化を図っているからこそ、化石のクリーニングに挑戦できるんだろう。
カルミラ島で覚えた技能がここで役に立つな。
で、クリーニングに必要な機材を見繕う。
ドリルがあればある程度はどうにかできそうだけど……小さめのドリルも欲しいな。
「しぇりる、小さいドリルとか無いか?」
「……」
スッとしぇりるが俺にハンドドリルよりも小さい歯医者とかで使いそうな小さめのドリルを差し出してきた。
「サンキュー」
小さめのドリルを受け取り、化石のクリーニング作業を行う。
まずは大きめのドリルでゴリゴリと削り落とす。
ボロボロと化石は徐々に削られて行き、狙ったラインでそげ落としていく。
できれば中身をスキャンできれば良いけど……そこは解体の勘的な補佐で誤魔化すとしよう。
「……絆くんが集中し始めているね。私たちは私たちで採掘をしよう」
「そう」
ロミナとしぇりるが化石のクリーニングに夢中になった俺に気を使って発掘作業に戻って行った。
パッパと引っ付いた土を払い、コンコンと冷凍包丁の柄で叩いて細かく削りを入れて……。
まだ薄皮みたいに硬い石が混ざってる……。
小さめのドリルで輪郭がわかるように化石を削って行くと……あ、削りすぎた!
けど失敗には辛うじてなっていない!
諦めずにクリーニングを続行!
「よーしできたー!」
やがて俺はクリーニングを終えると、化石がキラっと光った。
何が出てきたのかというと、魚の骨の輪郭がはっきり出てきたのだ。
少し失敗した所為で尻尾の部分が無くなっているけど、魚であるのは一目でわかるようになったぞ!
何かの化石が……魚の化石に変わった!
「終わったのかい?」
「ああ! 魚の化石に変わった!」
「ほー……こうしてわかる形にすると名前も変わるようだね。このまま家具として設置できそうじゃないか」
マイホームの調度品みたいに使えそうだなぁ……とは俺も思った。
魚の化石とはなんとも釣り人の俺にとってふさわしい事か。
しかもなかなかクリーニング作業は楽しかったぞ。




