カエルのから揚げ
「絆さんは釣った魚で作っていましたからね……」
「見ればわかるのに迷わず手を伸ばしたのが悪い」
「全然気づかなかったよ!」
「……」
しぇりるが恐る恐る手を伸ばしてから揚げを頬張る。
それから黙々と咀嚼していた。
「……気にしなければ食べれる」
「好き好んで食べようとは思わないでござるが……」
「水棲系にダメージアップが付く。戦闘前に食べるのも良い」
「こういうゲテモノ枠って優秀な効果が付いてるのっていやらしいよな」
「作ったのは絆殿でござるよ」
ちなみにアメマスのソテーは食べるとHPやエネルギー上限が一時的に増える効果がある。
スピリットの場合、マナの生成にボーナスが掛かるぞ。
粗食も良いが料理はしっかり食べた方が最終的には良さそうだ。
合計なのだが一定量食べると永続的に攻撃力がプラス1とか細かい実績みたいなのもある。
料理も奥が深い。もっと専門的な料理人に作ってもらうのも良いかもしれない。
俺が料理をしない場合のカルミラ島とかだと料理店に金を払ったり食材を持ち込んで作って貰うんだけどさ。
「別に食べたらお腹を壊すわけではないですし、紡さんが証明したので食べましょうよ」
「むしろみんな食べなきゃ嫌だよ!」
「絆殿はから揚げを多めに食べるでござるよ」
「勝手に食ったくせに被害者面するなよ……まったく」
「それじゃあ、いただきましょう」
「いただきまーす」
って感じで俺達は料理を囲ってみんなで食べ始めた。
メインのアメマスのソテーを箸で裂いて一口大にして口に入れる。
ふむ……なるほど、闇影が言っていた通り、焼いた時の感覚もそうだけど鮭と似てる。
ちょっと水っぽい感じがするが……ソテーにしているおかげかそこまで気にならないな。
「この味でござるな」
「鮭は食べたことがありますが、アメマスとはこのような味なんですね」
「……そう。サーモン……薄い。塩……」
しぇりる、塩を振っても塩気は増すがすぐに味は濃くはならんぞ。
「ウナギやカニもよかったけど、これはこれで料理って感じで美味しいね。お兄ちゃん!」
「ふむ……もう少し品質を上げるにはどういった配分と焼き加減で行けばいいか……」
と食べながら分析を行う。
「絆殿はやはり凝り性なのでござるなー」
「そうだね。お兄ちゃん。釣りより料理を専門にしたら?」
「それは出来ない話だな」
料理はあくまで釣った魚の処理と腹を満たす手段であって、このゲームで俺は釣りをメインにすると決めているんだ。
あまりキョロキョロとしているとどっちつかずになりかねないしな。
「昼間の釣りを知ると絆さんの気持ちもある程度わかりますよ。しぇりるさんもわかりますよね」
「ん」
コクリとしぇりるは頷いた。
どうやら昨日の鬱憤は晴らせたっぽいのかな?
で、次はから揚げの試食っと。
カエルのから揚げを口に放り込む。もちろん食事効果は水棲系ダメージアップだ。
湿原の魔物との戦闘をする場合はお弁当にこれを作るのは良いかもしれない。
口に入れて感じる感触は……から揚げ独特の風味だな。それから噛み締めた時の肉の感触……。
鶏肉と似てると言うが確かに殆ど同じ……いや、弾力が多いか?
まあ魔物な訳だし、活発に動いて歯ごたえの良い肉となっているのかもしれない。
結構から揚げとしての味は良いんじゃないだろうか?
ゲテモノと侮るなかれって味だな。
「味は悪くないな」
「そうなんだけどさー気持ち的な問題って言うかさー」
「あ、確かに美味しいですね。魔物の肉も料理に使えるのですね」
硝子も合わせて食べて評価する。
「今度魔物の肉とかで料理類を揃えてみるか?」
「せめて普通に釣った魚で料理してほしいでござるよ」
「そうだねー最悪お兄ちゃん。釣り場がないからって適当な所でルアーを置いてネズミ釣りとかして私達に出しそうだし」
「お前は一体俺を何だと思ってんだ」
ネズミ肉をみんなに食わせるような思考をしてると言いたいのか?
人を異常者みたいな扱いして。
「あり得ない話ではないでござるよ」
「……」
闇影としぇりるの反応が冷たい。
俺は異常者じゃないぞ!
「まあまあ、絆さんも雑草でスープを作ったりしないのですから贅沢は言ってはいけないですよ」
「でも硝子さん、私達一応領地持ちなのに魔物の肉を食べてるんだよ? ちょっとおかしいと思わないの?」
「ゲームとはいえ、魔物さんの命を無駄にしないようにする精神は大切だと思いますよ。過去の殿様も猟をして得られた獲物を領民に配ったなんて逸話もありますし」
「硝子さんもなんかずれてる」
「ジビエ料理という発想があるでござるから……あながち間違いではないでござる。もしかしたら飛び切り美味しい魔物肉があっても不思議ではないでござるよ」
「そもそも河童肉で鍋を食った俺達が今更カエルのから揚げに文句を言ってどうするんだ」
「すっぽん鍋って感覚で食べてたから気にならなかったのにー」
紡もカエル肉で妙に反応するな。
「はあ……もういいよ。気にせず食べることにするー」
そういって紡はパクパクと出された料理を食べ始めた。
「好き嫌いしないのは良いですね」
紡の様子を微笑ましいと言った感じで硝子が見た後、なぜか俺の方を見る。
「ただ……ネズミ肉での料理はやめてくださいね」
「わかってるよ。そもそも食えない料理になりそうでしょ」
こう……ありそうじゃないか。食べると状態異常を引き起こす料理とか。
フグとかまだ釣った事ないけど上手く捌けないと毒で死ぬ料理になりそうじゃないか。
というかフグとか絶対あるだろ。
まだ釣ってないのは俺の遭遇率が低いからなのかわからないけど。
「絆さんには戦い以外で厄介になりっぱなしで申し訳ないです」
「気にしなくて良いよ。俺もみんなと遊べて楽しいし特に何か無かったらあんまり戦わずに行ける範囲でちょこちょこ釣りしてただけだったろうから」
ゲームを始めて最初は第一都市に随分と長い事居たし、そこで儲けてしぇりるから小舟を買って海での釣り……新しい釣り場を求めて第二都市の方へ行く途中で硝子と出会って今までの出来事が続いている。
仮にあそこで硝子と会わずに第二都市に行ったら……きっと第二都市でずっと釣りをしながら適度に釣り場を探していて今みたいな生活はしてないのは間違いない。
「絆さんが色々と気を使って下さるからこうして食事と冒険を楽しめるんですよ」
「このゲームだとお兄ちゃん回りだと飽きないのは間違いないねー」
「色々と出来事が多すぎるでござるよ」
「……そう。でも、楽しめてる」
「そういって貰えると嬉しい限りだよ」
なんて礼をみんなに言われつつ俺達の夕食は過ぎて行った。
こうして食事を終えた俺達は各自、自由行動をすることになり、硝子と紡はロミナとアルトに本日の探索結果を報告するとのことだった。
俺は硝子が気を遣わないようにそっと外出し、自身で対処できる範囲で湿原に戻って夜釣りを行う。
やはり釣りと言ったら夜釣りも大事だよな。
規則正しい生活では釣りを満足に楽しめ等しない。
ランプを片手に釣り場を見繕って釣り竿を垂らす。
今回はカニ籠を設置した湿原入り口周辺での釣りだ。
釣りの仕掛けを変えて今回は素直に針で釣るぞ。ルアー釣りはその性質から釣れる魚も決まっているかもしれないし。
小物とかも狙う。
何が釣れるかなー……。
と、釣り竿を垂らして引っかかるのは言うまでもなく空き缶、それとタイヤと長靴……単純にアイテム名のゴミも釣れる。
「お」
久しぶりにボーンフィッシュが引っかかった。
しかし……一人夜釣りとしゃれこんでいる訳だけど……。
「……」
「釣り中ぺん」
騎乗ペットやペックルがいると寂しさは軽減してしまうのは悲しいな。
ブレイブペックルは帰還させた。
あまり長いこと使ってるとストレスゲージがたまって休眠するからな。
でだ……ランプを地面に置いて光源にしているのだが、騎乗ペットのライブラリ・ラビットを見上げると光源の関係で若干ホラーチックだ。
夜にいきなり遭遇したらびっくりしそう。
移動に便利だから出してるんだけどさ……。
ふと考えたがヌシって釣り場に一種類だけなのだろうか?
少々怖いが今度カルミラ島の水族館で新しい情報が追加されていないか確認するとしよう。




