フィールド探索
「まあお兄ちゃんの様子を見れば何となく分かってるけど、硝子さんも楽しんでいるみたいだね」
「ええ、とても有意義な経験をしました。もう少し続けて行きたいですね」
硝子が釣りに興味を持ってくれて何よりだ。
「硝子殿が引き込まれてしまったでござる!」
おい闇影、なんだその表現は、そんな悪い事じゃないだろ。
「ふふふ、次はお前だぞ、闇影。紡でも良いぞ。釣りを覚えないか?」
「嫌でござる! 蟹工船で釣り技能の条件を満たせていても拙者はやらないでござる!」
「私もやりたくなーい。戦う方が好きだもん」
闇影は露骨に拒絶するなー……妹の方は最初から興味なしって感じだし。
しぇりるは銛で漁師や海女スタイルだし……いずれこの二人にも何か釣り関連を覚えさせたい。
「じゃあ闇影はカニ籠漁で良いだろ罠だし、忍者な感じだぞ」
「忍者はカニ籠漁などしないでござるよ! 罠は罠で行くでござる!」
「闇ちゃん大変だね」
「何他人事なのでござるか! 絆殿は紡殿の兄でござるよ!」
「お兄ちゃんだからこそ往なし方がわかってるんだよ。しつこく推して来ても流せばいいだけなんだし」
まるで俺のすべてをわかっているみたいな言い方をするな紡は……。
確かにそれで今までやってきた訳だから否定はできないけどさ。
「逆に紡の勧誘を避ける術もこっちは熟知してるけどな」
だからこそ、紡には釣りは面白いんだと理解させる時を見極めねばいけない。
何か劇的な事があれば覚えてくれるだろう。
ただ……釣り具が強い武器だからー程度の理由で釣りを覚えたりはしないだろうなー……。
狩人なゲームで武器強化の必要素材とかでも俺にやってもらうような奴だし。
「お二人がそれぞれわかっているのが理解できますね」
「まあねーお兄ちゃんはこういう人って割り切ると便利なんだよ。お兄ちゃんにゲームキャラクターのレベル上げとかやらせておけばおんなじ場所でずっとやってくれるし」
ああ、任されることはあるな。
俺も姉と妹がやっているゲームとかを後ろで見ていたりして、二人がレベル上げが面倒って時に手伝いをすることがある。
暇な時間にやっておけば簡単にストーリーが進むし新しい場所とか行けるしな。
レアなドロップアイテムを収集するとか俺は好きな作業だぞ?
「それもどうなんでござるか?」
「本来、絆さんにやらせる作業じゃないと思うのですが……蟹工船を文句言えませんよ」
「まーそうだね。だからそんなに怒ってないのもあるかな」
双方気にしない間柄じゃないと家族なんてやってられない。
「お兄ちゃんってこういう人だからね。闇ちゃんも勧誘されても流してれば良いんだよ。硝子さんもほどほどにね」
「助言ありがとうございます。ただ、私も色々と興味が湧いただけですので気にしなくて良いですよ」
なんとも理解の深いセリフなんだろうな。硝子は。
それに引き換え、闇影と紡の付き合いの悪さだな。
しぇりるは……まあ、銛で戦う海女だし、俺とは別の方向性だから引き込む必要はない。
むしろ教えねばいけないのはアルトかもしれないな。
情報屋な側面のあるアルトが釣りをしていたら絵になるかもだし。
なんて思っていた所で、アルトから連絡が来た。
「ん? アルトか? どうした?」
「いやね。なんか妙な悪寒と絆くんが脳裏に過ってね。ついでに経過はどうかと聞こうかと思っていたんだよ」
まあ、昨日見送った今日なんだからそこまで話すことは無いわけだけど……というか勘良いな。
「関所の先はどうなっているんだい?」
「湿原と中継街がある感じだな。またヌシを釣ったぜ!」
と、アルトに釣り上げたヌシを報告する。
「ロミナくんが喜びそうな話だね。次の場所は湿原と……どちらにしても継続して調査をしてくれると助かるよ。君達は今、ミカカゲで最も進んだところにいるのだからね」
「興味があるならアルトもくれば良いだろ」
「僕は僕でカルミラ島の管理とか色々とあるからね。ロミナくんは遊びに行くかもしれないけどね」
「そうか……ロミナが喜びそうな場所があるかもしれないからこっちも探しておく」
ここの前の場所で炭鉱があったけど、こっちでも似たような採掘場とかあるかもしれないしな。
「アルトさん」
「何だい硝子くん」
「今までのフィールドで出てくる魔物のリストとか用意できますか? いずれ回って行こうと思うので」
「出来るよ。そうだね。今後の事を考えると君たちもその辺りを回るのが良いかもしれない」
硝子の提案を即座に察してアルトは話を受け入れたようだ。
なんだか話が早いなー……ま、既存の釣り場であるけど俺はまだ釣っていない魚が待っているぜ!
そんな訳でアルトとの話を終えた。
「さて、紡達に見せつけたヌシを早速解体していくとしよう」
お楽しみの時間である解体を始めるぞー。
と言う訳でヌシイトウの解体を行う訳だけど……かなり難易度が高いな。
単純に刃が入りづらいのは元よりキレイに切るのが難しくなっている。
上げられる範囲の解体技能じゃ失敗する可能性もあるぞ。
現にウロコ落としを少し失敗してウロコの部分が無駄に散ってしまった。
「お兄ちゃん大丈夫? なんか変な感じするんだけど」
「ああ、少し失敗した」
「絆殿の解体が失敗? 相当難しいようでござるな」
「みたいだなブルーシャークより少し難しい……って所だ」
冷凍包丁のお陰でウロコ以外は上手く解体出来てはいるのだけど、ちょっと惜しい感じだな。
そんな訳でヌシイトウの解体は多少の失敗をしたけれど終えることができた。
入手できた素材は魚鬼の鱗、魚鬼の口、魚鬼の心臓、魚鬼の太骨、最高級魚鬼の肉と卵いう魚鬼シリーズ、それと中級王者の鱗とかが手に入った。
結構色々と解体で出てきた感じだな。
「よし、解体完了っと……単純に色々と解体技能を上げて行かないとせっかく釣り上げたヌシとか無駄にしたりしてしまうかもしれないな」
「常に修練ですね」
「これで一体何が作れるか楽しみだ」
他のヌシの素材もまだあったはずだし、そろそろロミナにさらにいろいろと作って貰う時が近づいているな。
釣り具の更新もしっかりできるならしたいね。
ルアーの次は竿とかだろうか。
「さて……クエストは終わったと思うけど、これからどうする?」
アメマスは今夜の飯の分まで確保してある。
紡達も討伐クエスト分は満たしたみたいだ。
「フィールドの探索が良いと思うよ。まだまだいけるところがあると思うし」
「まあ、無難な所だよな、湿原を含めて今回行けるようになった所を隅から隅までチェックするか」
「フィールドボスとかもっと出てこないかな」
「初見で倒せるのか? 敵が結構強くなってきてると思うが……」
大人数で倒すことを前提としたフィールドボスとの戦闘とか紡と闇影、硝子が居ても結構きついときはきついだろう。
「その辺りの区別位は出来るよ。お兄ちゃん達じゃ取り返しがつかなくても私としぇりるちゃんは懲りずに行けるし」
スピリットはその性質上、下手にやられたら損失分を取り返すのに苦労する。
だからこそ戦闘不能……ゲーム内の死は極力避けた方が良い。
まあ……結構ゲームシステムに慣れてきているから全損失しても遅れを取り戻すやり方は何となくわかるけどさ。
エネルギー回復力向上を上げれるだけ上げるようにすれば復帰に致命的な遅れは取らずに済む。
熟練度というか別口の条件はリセットされる訳でも無いし、装備も条件を満たしたら装備すれば良い。
硝子と初めて会った頃とは結構、勝手が変わってきている。
それでも……紡達に比べたら時間が掛かるのは事実か。




