カニ鍋
「大きなウナギなのでオオウナギで良いのですか?」
「いや、実はオオウナギは別にいるんだ。そっちは地方じゃカニクイって呼ばれていて昼間食べたウナギとは別種」
「そうなんですか? 知りませんでした」
誤解しやすいよな。
「たぶん、法則からするとヌシウナギって所だと思う」
「なるほど……」
とりあえずスクリーンショットを撮って……ヌシの場合は自動で水族館に登録されるから気にせず解体してOKだ。
でっかいなーウナギがそのまま大きいぞ。
捌いても味が大味になりそう。試食はするけどさ。
「運が良かったですね」
「あっさり釣れてよかった!」
幸運に感謝だな。釣りあげた興奮は堪らないもんだ。
「後で皆さんに見せますか?」
「そうだな。後で自慢しよう。もう飽きられ始めている様な気もするけれど」
「それはそうですが、絆さんが釣った主の素材で良い武具が作れる事が多いので皆さん、実は期待していますよ」
確かにそれは否定できない。
だって俺の持っている武器の大半は主を釣って作った代物ばかりだし。
「紡はこのヌシウナギでかば焼きが食べたいとか言いそうだな」
「そうですね。なんて言いますか人が変わった様にうな重を食べていましたね」
貧乏人これ如何に……。
「このウナギを解体して得た素材でどんな武具を絆さんは予定していますか?」
「うーん……実の所決めてないなぁ。ただ、ウナギから連想すると毒付与とか着いてそうなイメージ」
「それはなんで?」
「ウナギって火を通さないと毒があるから」
「ああ……なるほど、ありそうですね」
「それと地味に解体難易度自体は高めなんだ」
ぬるぬる滑る所為か、俺は出来たけれど中途半端な解体の技能じゃ失敗するのは目に見えている。
「明るくなってから解体するのが良さそうだね」
「ええ」
「んじゃ、目標も釣りあげたし、早めに切り上げよう……その前に仕掛けの確認っと」
橋の下に仕掛けた竹筒を確認して、収穫をして再設置っと。
ウナギが4匹掛っていた。
「じゃあ宿屋に戻りましょう」
「うん」
こうして思いのほか手早く主を釣りあげて宿へと戻ったのだった。
翌朝。
「わぁああああああ!」
「蟹でござる!」
「クラブ……」
朝食にと俺はゆでた蟹をセットで皆に出した。
「朝からすごく豪勢だね! お兄ちゃん!」
紡の目がキラキラしている。ごちそう三昧に目が滾っている感じだな。
「カニ鍋も作ったから好きに食って良いぞ」
「いただきまーす!」
「硝子はカニ食うか?」
「私は……」
ちょっと返事に困った様子の硝子、朝からヘビィなのは避けたいけど周りの様子から言いだせない感じか。
「気にしないで良いさ。焼き魚定食も用意してある」
ポンと硝子には焼き魚の定食を提供すると、硝子は嬉しそうに受け取ってくれた。
「ありがとうございます」
「俺も朝食は軽めにしたかったからね」
「これはベニズワイガニでござるな! ズワイガニには劣るでござるが美味しいでござる!」
「そうなの?」
「そうでござるよ。カニバイキングなんかで使われるのはこのベニズワイガニなのでござる。代替品でござる」
闇影、よくわかったな。ゆでカニにしたらアイテム名が変わるのでわからないかと思ったが味だけで判断しやがった。
夢中でカニに群がる紡と闇影としぇりるを余所に俺達はそのまま朝食を終えた。
「お兄ちゃん! カニまだ無いのー? もっと食べたい」
「紡殿、わがままを言ってはダメでござるよー」
「あるぞー」
ポンとカニを追加する。
すると闇影も目を丸くして追加分を食べ始める。
「まさにバイキングでござる!」
しぇりるはキリの良い所でやめた様で口元を拭いている。
それから紡は出した分だけカニを食べ続けた。
「紡殿はいつまで食べているでござる」
「だってー」
「幾らでも入る」
ここでしぇりるが呟く。
ああ……ディメンションウェーブと言うゲームのシステム的な事なのだろうが、食事に関して満腹感はあるのだけど食べようと思えば幾らでも食べれる様なのだ。
紡は満腹感はあるのに詰め込みまくっている。
「このまま食べていたら胃拡張とかの熟練度があがりそう」
……ありそうだな。大食い用の技能とか。
魔物とかもそのまま食べるとかシステムであったら怖いぞ。
「ま、飯はこれくらいにして、昨日主を釣ったぞー」
「おめでとー!」
「おめでとうでござる」
「おめでとう」
さてと……と言う訳でヌシウナギをボンと出す。
「わー……でっか! ウナギデッカ!」
「大きいでござるな。オオウナギとも異なる大きなウナギでござる」
「そう」
っとまあ皆の反応を確認してから日の光を確認してウナギの解体に入った。
得物が良くなったお陰で解体はどうにか完了した。
途中で失敗するかヒヤッとしたけどな。
中級王者の皮、中級王者の鰭、中級王者の軟骨、中級王者の粘液、鰻の大皮、鰻の大軟骨、最高級鰻の肉になった。
「中級王者……ヌシのニシンが低級王者だったから汎用的な素材だな」
主の一部はこう言った同一規格の素材が入手出来るんだろう。
今まで変わった素材だったのは運が良かったのかはたまた……。
「お兄ちゃん、このウナギでうな重は?」
「アレだけ食ったのにまだ食うのか、お前は」
「だってー」
「それはこの素材が武具に使えるか否かを確認してからでも遅くない」
「ぶー」
本当、底なしの食いしん坊が!
「良い食後のパフォーマンスだったでござるよ」
闇影の謎の感想、別に見世物にしていた訳じゃないぞ!
「それじゃあ早速悪行河童のボスを倒しに行くのでござるな!」
「ああ、闇影、尻子玉を抜かれない様にな」
「だから拙者にだけなんで言うでござるか!」
だってな? 闇影がそのポジションだし。
なんて雑談しながら俺達は悪行河童のボスを倒しに行ったのだった。
結果だけで言うと悪行河童のボスは洞窟内の奥にあるオブジェクトを調べることで出現し、戦闘となった。
普通の悪行河童の三倍くらい大きい河童で、攻撃も苛烈だった。
ブレイブペックルを召喚して守りに専念させたので損害は軽微だった。
結構ブレイブペックルは耐久が高いので助かる。
俺は近づかずに釣竿のスキルであるルアーダブルニードルで援護をし、硝子や紡、しぇりるの猛攻と、闇影の強力な魔法でボスは倒す事が出来た。
尚、闇影が尻子玉を2回ほど取られた事はここに記述しておく。
魔法反応の魔物だからだろうって事だったが、闇影の被弾率をどうにかした方が良いかと思うな。
「大きな河童だったでござるなー」
「そうだな」
尚、解体した際の素材は大河童と付いた河童素材であるだけで普通の悪行河童と素材に関してそこまで差は無かった。
「歯ごたえは十分ありましたね。次の関所を抜けた先が楽しみです」
「そうだね! 次はどんな魔物と戦えるかなー」
かなり順調な行程を踏んでいるな。
なんて思いながら次の関所を越える事になった。
手形を見せるとNPCが門を開いてくれて進む事が出来た。
道なりに進んで行く。
まずは泊まれる所を確保するのが大事だよな。
なんて感じで半日程道なりに皆で雑談しながら歩いて行くと新たな街と言うか前回と同じく、宿と一部の設備がある中継地点に到着した。
今回は……お祭り会場みたいに出店が並んでいる中継地みたいだ。
「わーなんかお祭り会場みたいだね」
「まんまそれみたいだぞ?」
祭囃子が聞こえてくる。
入口に居るNPCがお祭り町みたいな説明をしていた。
「かき氷とか売ってるな」
「りんご飴もあるでござるよ。提灯がぶら下がっていて楽しそうでござるな!」
「問題は俺達しかプレイヤーがいない所為かNPCを入れてもやや簡素な感じな点か」
賑やかな雰囲気ではあるのだけどお祭り独特の人が多過ぎるって雰囲気ではない。
どっちかと言うと寂れたお祭り会場って雰囲気が悲しいな。
祭の賑やかさって子供や人の賑やかさだって聞いた事があるけれど、本当かもしれないな。
まあ、ここもいずれは人が沢山来る事になるだろうけどさ。