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一時の想い、届け君に【完結済み】

作者: 茶川彩華
掲載日:2026/10/06

初めまして、茶川彩華です。

「一時の想い、届け君に」をお届けします。

出会いと別れ、そして絆の物語です。

最後までお楽しみください。


「一時の想い、届け君に」


俺の名前は「双葉友廣」。

中学二年生。幼い頃から霊感が強くよく、妖怪という存在の者を見てしまう。


去年の冬に、親友が家に訪ねに来て妹の「双葉泰美」を紹介したら彼女の表情は曇り「ごめんね。」と言い、親友は悲鳴をあげて家を飛び出していった。


そう。泰美の正体は妖怪だったんだ。


「何でもっと、早く言ってくれなかったんた?」

「貴方に、嫌われるのが怖くて言えなかったの。本当にごめんなさい。」


泰美は何度も謝り、涙を流していた。


「泰美。頭をあげてくれ。落ち着いたら、事情を聴いてやるから今夜は、うちで泊まっていけよ。」

「……いいの? ありがとう。」


泰美は微笑んだ。


その表情はとても、嬉しそうだった。


(ああ。また真方に、借りができてしまったわね。)


私は、蜩という名の妖怪。

夏になると美しい声で鳴き、人々に夏を感じさせることが役目だった。

だけどセミは短き命、鳴き声が弱まり私は地面に落ちてしまったの。


そこであったのが、友廣。

彼は私を優しい手で包み込み、急いで双葉家に招き入れて「泰美」という素敵な名をいただき息をひきとった。


それから彼はお墓を作り、一晩中泣いていた。


「…神様、お願い。泰美を生き返らせてほしい。僕にはもう、泰美しか家族がいないんだよ!」


彼の想い、天からの贈り物かのように私は人の姿へと代わり、友廣に近づいた。

あれから現在まで、何ヶ月もの合間、私は彼に恩を返せずに追い出されてしまうのだろうか?


(何なら、借りを作ってばかりだ。)


友廣はもう、私の前世の姿を覚えてはいないだろう。


(人というものは、わからぬものよ。)


しばらくして、友廣は自室に戻ってきた。


「泰美。気分はどうだ。」

「ありがとう。おかげで大分よくなったよ。」


「なら、よかった。」

「そうだ、お兄さん。気晴らしに散歩にいかない?」

「あはは、一人で散歩にいくと気味悪がられるだろ。」


……私のせいだ。 友廣に友と呼べるものがいなくなってしまったのは。


「...友廣。夜がだんだんと深まってきますよ。ここから先は私共の活動時間になりますので就寝なさるといいでしょう。」


友廣は頷き、寝床へ入りそっと眠りについた。


「……お休みなさい。友廣。明日からは通常通りの朝日があなたを照らすでしょう。さようなら。さようなら。」


双葉家の窓から出ていった私は遠くの山里を目指して家を飛び出していった。


俺はその頃、夢を見ていた。


瀕死だった蜩に確か、泰美と名付けたんだっけな。

偶然かはわからないけど、迷い込んだ妖怪も泰美と名乗り住み着いたんだよな。

もしも、泰美があの時の蜩だったらどうだろうか?「蝉の奇跡の恩返し」と言うべきなのだろう。


だとしたら、嬉しいな。


この想い、君に届くかな。


「……おはよう、泰美。あのさお前に話したいことが... って。泰美?」


部屋中を見回しても、泰美の姿はなかった。 慌てて俺は家を飛び出し、 泰美を探しにいった。


「君達。蜩という妖怪で泰美と名乗るものを知らないかな。」


「さあな。ところで人の子よ。なぜお前はわしらの姿が見えるんじゃ?」


「...そうか。わかった。」



「ああ、待て!おい。声が聞こえぬのか? 足の早いヤツだ。」


探し回ったが泰美の有力な探し回ったが泰美の有力な手がかりを見つけることができなかった。


朝日は沈み、悲しい夕日が俺を照らす。 悔しくて、悔しくて、地面に肘をつき、泣き叫ぶ。


「……友廣。泣いてるの?」


優しく、俺の涙を吹き飛ばすような声は紛れもなく、泰美のものであった。

彼女の姿はいつもと違い、 薄くなっていた。


「友廣。夕日が綺麗ですね。私は好きですよ。あなたはどう思いますか?」

「綺麗だな。夕日。俺も大好きだよ。」


友廣は微笑んだ。

私は嬉しかった。


もう一度、最後に出会えたことに。


「あ、蠣。ほら、聞こえるだろ?」

「そうですね。友廣。蜩の鳴く声は好きですか?」


「ああ。好きだ。大好きだ。」

「ありがとう。それだけで私は満足です。」


「いいや。俺はお前に伝えなければならない事があるんだ! 聞いてくれるか。」


「はい、友廣。」


私は友廣の手を取り、夕焼けの景色を眺めながら話を聞いた。


「俺。思い出したんだよ。 子供の頃に拾った蜩の事を。ソイツの名は泰美。偶然にもほどがある。あの時の蜩はお前なんだろ。」


「はい。私は助けてくださったのが嬉しくて、あなたの願いを叶えるべく、人の姿になり、家族として友に暮らしていました。まあ。恩は返せてませんが。」


「お前は返せてるよ。恩。だって、幸せな一時を過ごさせてくれたじゃないか。これ以上。求めるものはなにもないよ。」


本当に。友廣は一人でも寂しくはない?

夏になって私を思い出さないで楽しく過ごせる。


(なら、よかった。)


「ありがとう、友廣。私はあなたに出会えて嬉しかった。」


「俺もだ。だから... いいや。大丈夫だよ。おやすみ。蜩。」


大事な妹よ、眠れ。


私は天に飛びだった。

その晩、友廣は私のお墓に一枚の友廣の写った写真をお供え物として飾った。

いかがでしたか?

夏の終わりに、ふと思い出していただけたら嬉しいです。

また次の作品でお会いしましょう。


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