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ゴールデン・サークル〜Part1 黄金の魂〜  作者: NATE.K


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SATORIの門

こんにちわ。作者のNATE.Kネイト・ケイです。


前話では、久世太陽の平凡な日常が、一本の万年筆と「ブリキの兵隊」によって、一瞬で崩壊しました。


この第2話では、仕立て屋の主人・源次郎の口から、ついに世界の真実が明かされます。


・世界を裏側で支配する巨悪『ゴールデン・サークル』の正体。

・万年筆が持つ『業物ワザモノ』の力と、その代償。

・そして、太陽の親の死に隠された、冷徹な陰謀。


主人公・久世太陽は、「逃げの達人」としての本能に抗い、愛する日常とこの国の尊厳を護るため、『地獄への片道切符』を手にすることを決意します。


物語は、ここから本格的に始動します。ぜひお進みください。

I. 日常の残滓と覚めない夢

 久世くぜ 太陽たいようは、路地裏で公衆電話から救急車を呼び、美波を救急隊員に託した。美波の怪我が大事に至らないことを確認すると、彼の胸を覆っていた鋼鉄の緊張感は、一気に溶け出した。


 彼は、救急車のサイレンの音と、哲也が残した「逃げろ」という言葉を背に、自宅のアパートにたどり着いた。社員寮を避けアパートを借りた、この自由な空間だけが、彼の唯一の砦だった。


 彼は、玄関の土間に力尽きて脱ぎ捨てたスーツの上着を放置したまま、居間の布団に倒れ込んだ。昨夜の激しい精神的疲労が、彼の体を完全に支配していた。意識は闇の底へと沈み、彼は、一日の記憶をすべて飲み込むかのような、深い眠りについた。


 目覚めたのは、月曜の午前9時。朝の柔らかな日差しが部屋に差し込んでいる。商社勤めの彼にとって、出勤は午前8時厳守だ。完全に遅刻である。


 彼は、鉛のように重い体をよろめかせ、まず玄関に目をやった。床に横たわるスーツの上着。彼の胸ポケットは空だった。太陽は、昨夜の記憶を辿った。万年筆は、小さなローテーブルの端に、ひんやりとした重みを保って置かれていた。彼は、無意識のうちに、万年筆の安全を確保していたのだ。


 彼は、パニックと疲労が混じり合った顔で、アパートの共用廊下にある黒電話の受話器を取った。


「す、すみません。久世です。体調が優れず……本日は、午後から出社させていただきます」


 同僚の電話口の声は、遠くで聞こえる喧騒の中に溶けた。彼は、嘘をつくことに慣れていたが、今回は嘘の裏に、生々しい血の匂いが付着していた。


 彼は、この謎を解き明かすには、仕立てアトリエ・テーラーの主、源次郎げんじろうしかいないことを悟った。源次郎は、太陽、美波、そして哲也の三人の戦争孤児の「後見人」として、彼らが自立するまで目を配り続けてくれた、大切な存在だった。


II. ハンドラーの沈黙と業物の片鱗

 仕立て屋の扉を開けると、上質なウールと真鍮の匂いに混ざり、微かに焦げた火薬のような匂いがした。源次郎は、アイロン台の上の古い新聞を読んでいた。彼は、顔を上げず、新聞をたたみながら言った。


「美波は無事だ。病院には、こちらから手を回しておいた」


 源次郎の言葉は、彼の口調が持つ「見えない力」を改めて太陽に突きつけた。


「……源さん」


 太陽は、万年筆を強く握りしめた。源次郎はゆっくりと顔を上げた。その眼差しは、穏やかでありながら、昨夜の襲撃後に一睡もしていない疲労と、身内である太陽が襲撃されたことへの内なる苛立ちが、濃く滲んでいた。


「昨日、あんたは動いてたんだな。……あのブリキの兵隊は一体何で、この万年筆は何なんですか?」


 源次郎は、その万年筆を静かに手に取った。


「お前の親父が残した、"業物ワザモノ"の一つだ」


「業物……?」


「ああ。人の精神力や体力をエネルギーとして、超常現象を起こす特殊な道具のことだ。お前が書いた文字を実体化させる、あれもその一つだ。昨夜、お前は無意識のうちに、それを使った」


 源次郎は万年筆を太陽に返すと、その視線を奥に向けた。奥からは、微かに通信機器の作動音が聞こえてくる。


「さて、座れ。お前に聞かせるべき話がある。お前が信じている『明るい日常』の裏側で、この国がどう動いているかという、『世界の真実』だ」


III. 黄金の裏側:利権構造の真実

 源次郎は、壁に掛けられた世界地図を指差した。


「太陽。お前は知っているか?この国は、『成長』という美名のもとに、ある組織の『利権』によって、冷徹に構造化されている」


 源次郎の言葉は、冷徹な現実を突きつけた。


「それが、『ゴールデン・サークル』だ」


 太陽は息を飲んだ。ブリキの兵隊が探していた万年筆を奪おうとした、あの巨悪の名前。


「彼らは、戦後の混乱期に闇で富を築き、旧GHQの裏部隊とも連携し、日本の舵を握ってきた『超国家的な利権構造』だ。彼らにとって、この国は『成長という名の巨大な工場』にすぎん」


 源次郎は、鋭い視線で太陽を射抜いた。


「彼らは、この国の『成長』を信じ込ませ、その陰で、国民の命を紙屑のように扱っている。オリンピック、高速道路……その全てが、彼らの支配の血管だ」


「奴らの利権が絡む『帝都科学工業』では、工場の排液が原因で、人が精神を蝕まれ、理性を失うという異常な病が広がっている。まるで富(黄金)に目が眩んだかのように、神経が破壊されることから、我々はそれを『金星症きんせいしょう』と呼んでいる」


「さらに別の利権が絡む建設資材工場からは、『鋼骨熱こうこつねつ』という、全身の骨が激痛と共に脆くなる病が報告されている」


「奴らにとって、国民の命や健康は、『成長の摩擦熱』として、意図的に捨てていいものなのだ。お前の親父は、この利権構造と、万年筆という業物を使い、戦った」


「じゃあ、親父の死は……」


「空襲という名の舞台で演じられた、ゴールデン・サークルの暗殺だ。昨夜の襲撃は、奴らが親父の形見である万年筆、つまり業物を回収しに来た証拠だ」


IV. ハンドラーの問い:魂に火を灯す理由

「だからこそ、私たちは存在している」


 源次郎は、初めて「私たち」という言葉に重みを込めた。


「私たちの組織”SATORIサトリ”は、国の安全保障を守るための諜報機関だ。その中でも私は、防諜部門(対ゴールデン・サークル課)のハンドラーを務めている。ゴールデン・サークルは、今最も注視すべき巨悪だ。私の任務は、彼らの影の活動を阻止することだ」


 源次郎は、万年筆を太陽に差し出した。


「お前は、その『業』を継いだ。万年筆が、お前を選んだのだ。そして私は、お前に『選択』を促す」


 源次郎は、その傷跡のある顔を太陽に近づけた。その眼差しは、彼の魂の奥底を見透かすかのようだった。


「お前は、この万年筆という魂を、『逃走』のために使うのか?それとも、『真実』を切り開くために使うのか?」


「美波の安全は、私が最大限保障する。だが、お前が戦うことを選ばなければ、日常という名の仮面はいつか剥がれ、お前自身が奴らのターゲットとなる。お前がサラリーマンとして生きる『日常』を護るには、エージェントという『非日常』を生きるしかないのだ」


「お前は、商社のサラリーマンという『日常の仮面』を被りながら、奴らの構造の中に『潜入(ENTER)』することになる。これは、お前の親父の復讐ではない。お前の誇り、美波への愛、そしてこの国の『人間としての尊厳』を取り戻すための、地獄への片道切符だ」


 源次郎は、静かに、しかし鋼のような決意を込めて、最後の言葉を告げた。


「太陽。お前自身の『黄金の魂』に、火を灯す理由を見つけられるか?」


V. 黄金の魂、その決意

 太陽は、全身の血が熱を帯びるのを感じた。


 「逃げの達人」としての本能が、彼に叫ぶ。逃げろ。 しかし、彼の目の前には、亡き両親の真の死因、美波の傷の理由、そして「金星症」「鋼骨熱」に苦しむ人々の顔が浮かんでいた。


 彼は、源次郎の目を真っ直ぐに見据え、万年筆を強く握りしめた。


「源さん。俺は、もう誰の『落とし物』も、見過ごさない。そして、誰も傷つけさせない」


 彼は立ち上がった。その姿は、一瞬にして、昨日までの平凡な営業マンの面影を消し去っていた。


「俺は、この魂に火を灯して、奴らの計画を文字通り、ぶち壊してやりますよ」


 源次郎は、太陽の言葉を聞くと、微かに口角を上げ、静かに頷いた。


「ようこそ、太陽。お前の旅路が、真の光を見つけることを願う」


 太陽は、明日から、商社のサラリーマンとして、そしてSATORIのエージェントとして、二重の生活を送ることになる。


(第3話へ続く) 【第3話予告:拠点の秘密とエージェントたち】 SATORIへの参入を決意した久世太陽。彼が次に通されるのは、拠点である仕立て屋の奥にある秘密の場所だった。


分厚い壁の奥、さらに深い地下へと誘うエレベーターを下りた先にあったのは、高度経済成長期の東京の地下に広がる、広大な空間と最新のハイテクノロジーが融合した、SATORIの秘密拠点。彼はそこで、特殊な修行を強いられる。彼の「業物」を自由に扱うための試練、そして、彼と共に「日常の仮面」を被る、個性的なエージェントたちとの出会い。


太陽のサラリーマンとスパイの二重生活が、ついに始まる!

第2話『SATORIの門』を最後までお読みいただき、ありがとうございます!


この回で、ついに『ゴールデン・サークル』という巨悪の正体、そして彼らが国民の命を「金星症」や「鋼骨熱」といった病で紙屑のように扱う、その悪辣な構造が明らかになりました。


そして、久世太陽は「魂に火を灯す理由」を見つけ、SATORIへの参入を決意しました。


「お前がサラリーマンとして生きる『日常』を護るには、エージェントという『非日常』を生きるしかない。」


この源次郎の言葉通り、太陽のサラリーマンとスパイの二重生活が、いよいよ次話から始まります。


ーX (旧Twitter) での拡散をぜひ!ー

「面白かった!」「次が気になる!」と感じていただけたなら、ぜひX(旧Twitter)で作品の感想をシェアしてください。ハッシュタグ #ゴールデンサークル をつけていただけると、作者が大変喜びます!

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さて、気になる第3話では、SATORIの秘密拠点への潜入、特殊な修行、そして個性豊かな仲間たちとの出会いが待っています。


第3話は、近日公開予定です。 どうぞ、次話もお楽しみに!

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