そらまめのそらもよう 〜episode10 黄色〜
そらまめは、近ごろ早朝さんぽが日課です。
鳥たちが鳴き出す前の、まだうす暗い時間に、
畑の道をひとり歩いていました。
すずしい風がふいている、だれもいない道は、
ちょっとくすぐったくて、わくわくするのです。
しばらく歩いていると、
コーン、コーン
小さな声が聞こえてきました。
そらまめは声のする方へ行ってみました。
そこは、とうもろこし畑でした。
畑の前で、黄色くてまるくて四角い体の、小さな子が、
なみだをいっぱいにして、泣いていました。
コーン、コーン
そらまめが、よしよしと頭をなでても
泣きやみません。
そらまめは、黄色い子の前で
両手を大きくふって、変な顔をしてみせました。
ぐるぐるまわって、おどってみました。
黄色い子は、そらまめを見ていましたが
おどるのをやめると、また
コーン、コーン
と泣きだしました。
そらまめは、まじめな顔をして、
黄色い子に手をふると、
いきおいをつけて、くるんとバク転をしました。
1回、2回、3回、4回、連続です。
かくして、黄色い子は泣きやんで
びっくりして、そらまめを見つめました。
そらまめは、黄色い子を頭にのせて
ぴょんぴょんと、飛びまわりました。
コーン、コーン
黄色い子は、今度は楽しそうに笑いました。
そらまめは、そのまま畑のわきに流れでる、
小さな滝へやってきて、黄色い子をそっとおろしました。
滝の水を手のひらでくんで、黄色い子に水を飲ませてあげました。
黄色い子は、ゴクンゴクンと水を飲んで
ふぅーっと息をつきました。
そらまめも、マネをして、
ゴクンゴクンと水を飲んで
ふぅーっと息をつきました。
コーン、コーン、
黄色い子が笑いました。
太陽がのぼって、あたりはすっかり明るくなっていました。
仲良くなったそらまめと黄色い子は、
手をつないで、またとうもろこし畑へもどってきました。
コーン、コーン
黄色い子をよぶ声が聞こえます。
黄色い子は、そらまめの手をはなして、
声のする方へ走りだしました。
黄色い子は、無事におかあさんに出会えたようです。
黄色い子は抱っこされたおかあさんの肩ごしに、
そらまめを見つけると
コーン、コーン
と手をふりました。
そらまめもにっこり笑って
黄色い子に手をふりました。
そらまめは、それから、
鳥に見つからないように気をつけながら
家に帰りました。
すると、大きなあくびが出たので
ふかふかのさやのベッドで
ひとねむりすることにしたようです。
おしまい