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あなたのために空を見る

彼女は、ただ立ち止まり――思考にふける。


今日は曇り空。

雨の気配はないけれど、一日中グレーのインクで描かれたような空だ。


電波はない。でもそれは問題じゃない。

時には幸せからも休む必要がある。

息をするのは、ネガティブな感情に襲われた時だけじゃない。


これは「苦しいから深呼吸」じゃなくて、

「感じたことを噛みしめるための深呼吸」。


たぶん、今日の空が灰色なのはそのせいだと思う。

今の私はバランスが取れているから。

まだ笑えるし、まだ泣けるし、ちゃんと生きてる。


そして今、私は愛してる。ずっと愛し続けてる…。


私に足りなかったのは愛? それとも「生き方」?


どっちもだった。


愛したこともなければ、生きたこともなかった。

でも今は愛してるし、生きてる。

それが、世界が眠りについた後だなんて――人生の皮肉は時にあまりにも露骨だ。


だから私たちは、ただそれと共に生きていくしかない。

人生は勝手に進んでいく。私たちはその隣で「共に過ごす」だけ。


だからこそ、今日の曇り空は大切なサイン。

幸せの裏には、ちゃんと悲しみもあるんだよって。


暑すぎれば焼かれるし、寒すぎれば凍える。


嬉しいときは笑い、悲しいときは泣く。


じゃあ、人の「バランス」って何だろう? それは“曇り”のような心の状態?


でもその問いには、きっと答えなんてない。

だって、今日は物思いにふけってるけど、それだけじゃ答えにならない。

それもただの感情のひとつにすぎないから。


感情は無数にある。

それが、私たちがバランスを取れない理由かもしれない。


バランスって、たいてい二つの要素から成り立ってる。

だからこそ簡単に見える。

でも、要素が増えるほど難しくなる。

ときには、何かを失うことでしか釣り合いは取れない。


そう、それが人間というもの。

いつも何かを失い、また何かを求め続ける存在。


私なんて、いつも頭の中で答えを探しては、その中で迷ってばかり。


自分ひとりじゃ、答えなんて出せない。

でも、それでいいんだ。それが「人間らしさ」だから。

バランスを探し続ける限り、私は生きている証。


だから、泣いているときこそ、私は生きている。

ただ泣いている、それだけで――。


笑うときも、怒るときも、そう。

それが「生きる」ってこと。


じゃあ、どうして人はバランスを求めるんだろう?

どうして曇り空のようになりたがるんだろう?


暑さも寒さも嫌で、

泣きたくはなくて、でも笑いたい。


それって、自分自身をまだ見つけられていないからじゃないかな…。


私? 私は――まだ見つけてない。だから、わかるんだ。


今だって、ただ笑っていたいと思ってる。

でも、みんながずっと幸せだったら、きっとこの世界は退屈になる。


人は、問題があるからこそ成長できる。

それが誰も認めたがらない真実。だって、怖いから。


でも、それでいい。私たちは人間だもの。


わかってる。

いつか大切な人を失って、

夢を叶えられないまま終わって、

この世界を去る日が来る。


そしてそれを恐れるのは、当たり前のこと。


だって、私たちの空は、決して「ただの曇り空」なんかじゃないんだから。


だから私は空を見る。

誰かが、私のために空を見てくれるように――

私は、あの子のために空を見る。


いつかきっと、

誰かが言ってくれるはず。


「あなたのために空を見てるよ」って。


そのとき、きっと――幸せを感じられる。


春を隠した月

「なぜ?」と春は問う

「それが生きること」と月は答えた


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