メッセージの名前は「ありがとう」
旅の終わり、最後の声が届いた。
メッセージが届いていた。
「ありがとう」
彼女からだった。
ありがとう…
何を言えばいいのか、何を思えばいいのか、わからなかった。
泣きたい…
どうして、こんなに嬉しいんだろう?
ぬいぐるみを見つめて、撫でて、キスをした。
私はやり遂げた。彼女にたどり着いた。それだけで、十分だった。
理解する必要はない。人生とは、時に理解できて、時にできないもの。
ソファに座ったまま、ぼんやりと考えていた。
不思議と、彼女がそこにいるような気がした。
「やっと会えたね」と私は呟いた。
「本当にありがとう。この旅で、たくさんのことを学んだよ」
ぬいぐるみを見た。
そのとぼけた笑顔に、思わず笑ってしまう。
「そのクマ、気に入った?」
「ショーウィンドウで見つけたんだ、ほとんど新品だよ…」と私は言って、指さした。
「…ガラスの魔法ってやつかな。なぜ割れなかったのかはわからないけど」
もしかしたら、すべてが運命だったのかもしれない。
私たちが出会うのは、肉体ではなく、魂のレベルだったのかも。
…でも、どうしてこんなに痛いの?
どうして涙が止まらないの?
君がここにいてくれたらよかったのに…
でも、それはきっと不公平。
君の声は記憶に残っている。
けれど、あんなに触れたかったその顔は、残っていない。
それが悲しいわけじゃない。嬉しいわけでもない。
君の声が、私を前へ進ませてくれた。
歩き続けること、生きること、私自身を見つけること…。
…君は、私の心に深く触れてくれた。
「どうして“ありがとう”って言ってくれるの?」と私は泣きながら言った。
「助けてくれたのは君なのに、導いてくれたのは君なのに…私を見つけてくれたのは君なのに」
この旅の間、私は何度泣いただろう?
たくさん…
それとも、一度も…?
これが「生きている」ということ?
…うん、きっとそう。
涙に疲れて、いつの間にか眠ってしまった。
春の朝、ほんのり暖かい光に包まれて目を覚ました。
家はまだ空っぽのままだったけど、私の心は満たされていた。
私は彼女に別れを告げて、外へ出た。
深く息を吸い込む。
世界はいつも通りだったけど、私はもう、昔の私じゃなかった。
そして、また歩き始めた。
今度は目的地もなく。
…だって、いつも目的があるとは限らない。
ときには、自分で見つけなきゃいけないんだ。偶然でも、自力でも、誰かの導きでも。
何がどう終わるのか、何が自分の中で変わるのか、誰にもわからない。
誰にも言えない。
だって、他人は私じゃないし、私も他人じゃないから。
彼女は一度も「変われ」なんて言わなかった。
でも私は変わった。良くも悪くも、それでいいんだ。
旅の仲間ってそういうもの。
無理に変えようとはしない。
ただ隣にいてくれる。
ときには、そっと距離をとってくれる。
それが「共に歩く」ということ。
彼女との旅は、もう終わった。
それでいい。
永遠なんて、どこにもない。
「永遠」でさえ、いつかは終わる。
彼女とのサイクルは、ここで終わり。
これからは、私だけのサイクル。
それをくれた彼女に、心から感謝する。
彼女がいなかったら、私はどうなっていた?
中途半端な私だったかもしれない。
過去と現在が混ざり合って、形にならないままの私。
でも今は違う。私は「今の私」になれた。
また会えるかどうかはわからない。
また声を聞けるかもわからない。
別の次元で?別の命で?それとも、もう二度と…?
それでも構わない。
彼女は、私の心の中にずっといるから。
彼女の家が見えなくなる前に、もう一度だけ振り返った。
最後の一目、最後のお別れ。
「さようなら」と手を振った。
そして、もう振り返らなかった。
振り返る必要なんてなかった。
彼女は私の中にいる。
私の魂に、永遠に刻まれているから。
最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。
この物語を最後まで書き切れたこと、とても嬉しく思っています。
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