召喚爺の異世界奇譚シリーズ第7話(カイセウ村)
カイセウ村に着いたマコト達一行、海沿いの村は結構活気があり道も綺麗に整備されていた。
ここまでの道のりも快適に来られた、多分交易路としても使われているのだろう。
この村に来た目的は海に異常がないか確認するためだ、ウインディーネにリバイアサンと連絡が取れないか聞いてみた。
ウインディーネによるとリバイアサンは深い海域で無いと来れないとの事、仕方がないまず村人や漁師に話を聞きに行く事にした。
何人か話を聞いて分かった事は深い海域と村外れに新しいダンジョンが出来た事、そのダンジョンに向かった冒険者が戻って来ない事だ。
ギルドに行きダンジョンと戻って来ない冒険者に付いて聞いてみた、ダンジョンは一月前に突如現れたらしい。
冒険者は全員がBランクの5人パーティーらしくC級ダンジョンなら問題無く攻略出来るはずとの事だった。
我々は今日泊まる宿屋を探し一旦休憩と今後の事を話し合う事にした。
夜になるとウインディーネがリバイアサンと連絡が取れるか海に向かった、我々の話の結果明日新しく出来たダンジョンに潜る事にした。
朝起きるとウインディーネがリバイアサンとの話を聞かせてくれた。
リバイアサンは元々イナ島海域を守護するのが使命でこの辺りは余り詳しく無いらしくここの海域に異変が有るか無いか分からないらしい。
それでも新しく出来たダンジョン辺りの海流が不自然な流れになっているらしい、詳しく無い海域の海流がおかしいと気付くのはさすがである。
ダンジョン近くに来た時大地の精霊ノームが言うには、リバイアサンが言った海流から良からぬ何かがダンジョンに流れ込んでいると。
リバイアサンやノームがそこまで言うので有ればこのダンジョンは危険なのかもしれない、気を引き締めてダンジョンに潜るとしよう。
ダンジョン1階層に着くと薄明かりの中迷路が続いている、慎重に先に進むとゴブリンが5体現れたが今のワシらの敵では無い。
あっさりゴブリンを撃破して少し進むと、開けた場所にでたら帰って来なかった冒険者らしき亡骸が有った。
このダンジョン何かおかしい、最初に出会った魔物がゴブリンでC級ダンジョンみたいだがなでBランクの冒険者の亡骸がある?
視認出来る範囲では3人の亡骸が有るが2人の亡骸が見当たらない、パーティー構成を聞いておけばよかったが今更である。
嫌な予感がするのでノームとシルフィードにこの辺りの探知をして貰うと、2精霊が同時におびただしい数の魔物群れがこちらに向かっていると。
ワシが言うより早くゴブリンの群れが現れた、よく見るとホブゴブリンやオーガまで混ざっている。
「皆一度撤退するぞ、殿はワシとジエイムスで受け持つ」
来た道はさほど広くなく囲まれる心配はない、それでも接近戦はキツイからワシは魔法攻撃でジエイムスは斧スキルの斧ハリケーンで対抗した。
何とかダンジョンを脱出したワシらは顔を見合わせため息をついた、さてこのダンジョンをどうするか悩みどころである。
一旦カイセウ村に戻りワシらはギルドに向かい新しいダンジョンに向かった冒険者の亡骸を発見したことを報告した。
それとこのダンジョンが異常で有る事、多分A・Sランクの冒険者数十人規模で攻略しないとキツイだろうと言う我らの考えを伝えた。
一方連絡係の兵士はランドンにいる領主の元にカイセウ村で異常なダンジョンが発見されたことを報告しに向かった。
ここのギルドに今いる冒険者でBランク以上の人数はどれ位居るのか、討伐隊を結成するのであれば参加するのもありかも。
討伐隊の話をしたが、この村に居るBランク以上の冒険者は数人しか居ないらしい。
確かにこの村はダンジョも無かったし冒険者には魅力が無い、それでも冒険者が居るのは商人の護衛と言う依頼が有るからだ。
討伐隊も無理みたいだしこの村で出来る事も無くなった、連絡係が戻って来るのを待てばいいのか我らがランドンに戻るか思案のしどころである。
皆もワシの考えと同じでこの村にとどまらずランドンに戻り王都からの連絡を待って居る方が次の行動が取りやすい。
意見が一致していたので早速ランドンに向けて出発し、道すがらあのダンジョに付いて皆の意見を聞いてみた。
「知っての通りワシは召喚されて日が浅いから、こちらのファンタジー的なダンジョの事もイマイチ良く分からないので誰か教えてくれる?」
「基本的にダンジョンはD~A級に区分されるが新しく出来たダンジョンが行き成りA級になるのは聞いた事が無い」
「それにダンジョンは成長していくのよ、最初はDからCにと言う風に段階を踏んでいくものよ」
ジエイムスとウインディーネの話を聞く限り、行き成りA級ダンジョンが生まれるのは異常なのだ。
だとすれば、あのダンジョンは明らかに何者かの力が加えられている事になる。
その何者かが魔族だとすればこの王国に取っては非常に不味い事になる、早くランドンに行き山岳方面に向かったマイケルの情報が欲しいところだ。
ランドンに着くと領主のジエイソンの所に行き何か情報が入っていないか確認をした所、マイケルが向かった村は今の所異常は見つかっていないらしい。
それと王都から2人の勇者と諜報部の長官がこちらに向かっているとの事を伝えられた。
ワシ以外の勇者か‼どんな人物か楽しみでも有るが今会うのも少し気が引けるこの爺を見てどう思うか気になる。
2人の勇者が到着するまで2日は掛かるらしいのでワシらは近くのダンジョンに潜る事にした。
この近くのダンジョンで言えば2か所ある、この前入った所とイリウ村に向かって半ば過ぎにB級ダンジョンがある。
イリウ村は今マイケルが捜索している村だ、異常が無いと報告があったのでこの後次の村シン村に向かうだろう。
そしてワシらはB級ダンジョンに挑戦する事に・・・B級は最初に潜ったC級と違い難易度が高い上魔物も強敵になる。
ダンジョンに着くと一旦休憩がてら作戦を立てる、まずジクロとジエイムスが前衛で後衛はワシとミーシアが受け持つ。
ここの1階層は少し明るく探索し易い様に見えるが油断禁物である、警戒していたシルフィードが顕現し皆に魔物接近を伝えた。
前方から5体のブラッドウルフが現れた、この魔物素早い動きで攻撃を当てるのも難しく下手をすればこちらが奴の鋭い爪や牙の餌食になる。
ジクロはミーシアを守りながらシールドアタックを駆使して交戦、ジエイムスは斧ハリケーンなど織り交ぜ確実に1体ずつ仕留めている。
一方ワシは攻撃が当たらず苦戦しているが魔法と剣で応戦していると、段々対応が出来て攻撃のタイミングを掴み何とか1体仕留める事が出来た。
ワシが1体仕留めている間にジエイムスが4体仕留めていた流石Aランク冒険者である、誰も怪我していない様なのでそのまま2階層を目出す。
2階層に着くまでにブラッドウルフ42体を討伐しているので疲れた、とは言えジエイムスが一番討伐数が多いのだが。
この2階層は薄暗くジメジメした空気が体に纏わり付く不快な階層である、警戒しながら進んで行くと何やらキラキラ光る結晶の様な物を見つけた。
キラキラ光る結晶は正式には魔鉱石と呼ばれ装飾品などで使われているらしく、これらも価値のある物なので良い稼ぎになる様なので採掘しておこう。
「お主達そろそろ採掘している場合では無いだよ魔物が近づいて来てるだよ」
ノームに言われて再度警戒して辺りを見てみると、奥の方から何かが近づいて来ているが薄暗く何なのか良く分からない。
その姿を確認できたのは5メーター位近づいた時だった、その正体はオーガである力が強く武器の扱いも優れた魔物だ。
オーガとまともに張り合えるのはジエイムスとジクロだけだ、ワシはオーガの攻撃をまともに受けたら吹き飛ばされるだろう。
オーガの攻撃を剣で受け流しながら隙を付き雷撃を打ち込んだ、その瞬間オーガが横に飛び雷撃を交わし態勢を整えた。
周りの様子を少し見てみると3体いたオーガは1体討伐されていた、残り2体あの2人なら心配ないが問題はワシの方である。
でかい図体の割に反応速度が速い、力勝負は論外で唯一ワシの特技?である攻撃魔法も交わされるとかなりキツイ。
仕方ない使える魔法を片端から使って見たが距離を置いての攻撃は交わされる、では0距離ならと思ったがこれは諸刃の剣である。
そうこうしてる内にジエイムス達の方が片付いたみたいでワシの所に来て参戦してくれた。
オーガの攻撃を素早くジクロが盾で防御してワシが剣に雷を付与して横から切りつけ背後からジエイムスが仕留める。
これで3体のオーガの討伐は終わったが問題も有る、ワシの攻撃魔法が当たらない限りこの先苦戦を強いられるだろう。
皆に何か良い対策がないか意見を聞いてみた。
「爺さん精霊達の力を上手く使えてなくない?」
ジエイムスが言うとジクロも続いて。
「あんたなで魔法を一つずつしか使わない、年だからか俺達より移動速度が遅い分風魔法でカバー出来るでしょう」
目から鱗である今まで二つ同時に魔法を使うと言う考えが無かった、ミーシアにも聞いてみたが攻撃に関しては分からないとの事だった。
次の戦闘で一度試して見るか、まずはこの階層に有るセーフティゾーンを目指して行こう。
薄暗い中を進んで行くと次はオーガ5体と遭遇した、今回はジクロ達の意見を取り入れて複数の魔法を同時発動して戦って見た。
風魔法で移動速度を上げて水火雷の攻撃魔法を駆使して対戦、前回と違い移動速度を上げた分ほぼ0距離で魔法を当てる事が出来た。
戦い方を変えた分戦闘が楽になった、この分なら油断さえしなければオーガに負ける事は無い。
次々とオーガを討伐して行き最後のオーガを討伐して戦闘終了した、この戦闘のやり方は他の魔物にも通用しそうだ。
セーフティゾーンに着くまでにオーガ42体討伐していた、とりあえずセーフティゾーンで魔力体力を回復して今のレベルを確認した。
レベルを確認すると全員がレベルアップしていた、ワシは60ジエイムスは72ジクロが57ミーシアは45に上がっていた。
レベルアップと共にステータスも上がり珍しいスキルが付いていた、固有スキル魔法連撃と言うのが新しくワシのスキルに加わった。
休憩とレベルの確認も終わり次の3階層に向かう、3階層に着くとダンジョンとは思えない程明るく道は1本道だった。
1本道を進んで行くとどうやら時計回りになっており時折少し開けた場所に魔物が集まっていた。
3階層の魔物はブラッディーバニーだ、見た目とは違い非常に凶暴で集団行動が得意な魔物だ。
しかし今のワシらはブラッディーバニーに遅れを取らない、移動速度を上げ魔法連撃と剣戟で討伐していく。
ジエイムスも斧ハリケーンで討伐してジクロもシールドアタックやシールドプレスで討伐していった。
これらを繰り返し最深部に着くと、転移門が無く有ったのは門?どうやらダンジョンボスの部屋らしい。
ボス部屋に入るとミノタウロスが待ち構えていた、ミノタウロスはワシらが入った瞬間斧を振り上げ襲い掛かってきた。
ジクロは素早く前に出て盾で防御した、ワシとジエイムスは左右に別れ攻撃を加える。
しかしワシの力では軽すぎてダメージが余り通らない、ジエイムスですら一撃で仕留め決めきれずにいる。
次の瞬間ミノタウロスの2撃目が横殴りに来た、ワシは後ろに高速移動して交わしたがジクロは盾で防御するも弾き飛ばされた。
ジクロの煽りをうけミーシアも一緒に飛ばされもんどりを打つ、ジエイムスは斧で防御しながら反撃のタイミングを計っている。
ミノタウロスがミーシア目掛け振り上げた瞬間ワシはサンダースピアーで攻撃ジエイムスは頭目掛けて一撃を入れた。
何とかミノタウロスを討伐したがこちらもジクロとミーシアが負傷、ジクロは左腕と左の肋骨が折れミーシアも右足首を捻挫している。
ミーシアは捻挫だけの様なので一安心したが問題はジクロで有る、複数の骨折となるとヒーリングも時間がかかる。
ミーシアとジクロの回復を待つ間このダンジョンを出た後どうするか話した、ランドンに行くよりイリウ村の方が近いのでイリウ村に行く事にした。