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バレンタインも悪くない

作者: 坂巻くれは

 ※オタク・同人というような言葉が出てきます。不快感を感じる方や言葉の意味を理解出来ないという方は読むのをお控えくださいませ。

 愛というのは人生のスパイスだ。と、どっかの知らない人は言ったとか言わなかったとか。

 今日は2月14日。年内の行事でも学生にとっては特別盛り上がるであろう、所謂バレンタインデーとかいうやつだ。

 この起源はチョコレート製造会社の戦略だの何とか伯爵がどうのこうのだの――あぁ、伯爵云々はサンドウィッチの話だっただろうか。まあとにかく。そんな話だ。


 生憎私、幸村みやこには彼氏というものもいなければ、想いを募らせるような男性もいない。寂しい人生だとか言ってくれるな。これはこれで楽だし、楽しいのだ。

 だから、そんなバレンタインなんていう行事は私には何の関係もない。

 最近は友チョコだとかいって、女同士でチョコの交換をしたりしているという話もたまに耳にするが、私の友人というのは皆チョコを交換して微笑ましく談笑したり出来るような友人なんかでは決してない。

 その良い例がこいつ、園部綾香そのべあやかだ。


「みやこちゃん、今日はバレンタインだね。ということでさ、とりあえずサークルで企画やるんだけど、イラストで参加してくれない?いや、くれるよね?」


 こいつが頼みごとをするときに半強制的なのは今に始まったことではない。もう慣れてしまったこのやりとりに少しだけ溜息を吐く。

 この綾香のいう「サークル」というのは、もちろん大学のサークルなんかでは決してない。だって、まだ私達高校生だし。

 では何のサークルかというと。

 えぇ、お察ししてくださった方も少なからずいたと思いますが、同人サークルです。

 言ってしまえば本格的にメンバーとして入っているのはこの綾香だけなのだけれど、サークルの主催者さんが私のイラストを気に入ってくれたらしく、たまにゲストとして同人誌なんかに呼ばれたりしているのだ。

 今回はバレンタイン企画ということで、頼まれたからにはやるのが私の主義。早速構図を頭の中で整理する。


「二次創作はいつもやってるからさ、今回は創作ってことでって、主催者からの伝言ね」


 綾香よ、もうちょっとそういうのは早く言ってくれ。今良い具合に構図が出来上がってきていたのに。


 まあそんなこんなで、男っ気のない私なのだけれど、どうしてか綾香には彼氏さんがいるのだ。彼氏さんいわく、綾香のアニメ声にときめいてしまったのだとか。

 類は友を呼ぶというのはこういうことなんだろうな。いや、蛙の子は蛙というべきか。オタクの彼氏はやはりオタクだ。


 私は生憎アニメ声なんかでもないし、顔だって平凡あるいはそれ以下だから、そりゃあ彼氏どころか運命の出会いさえないわけだ。

 自分でここまで言っているのがとてつもなく悲しい。


 でも、私はアニメ声ではないけれど、歌だけは得意だ。小さい頃からずっと音楽が大好きで、まあその大半というか8割以上がアニメ関連の曲なのが虚しいけれど。

 最近ハマっているのは、アニソンではなくて、もちろんポップスでもなくて、ちょっとしたインディーズのユニット。

 女性ボーカルと男性のギターだけでメンバーが構成されている。


 画材を買いに行くと言って綾香の家を出て、今ちょうど交差点で信号待ち。何気なくそのユニットの曲を口ずさんでいる私。

 このユニットの出した曲は結構メロディが覚えやすいから好きなのだ。なのにすごくマイナーで、全然売れていないらしい。もっと評価されるべきだと思うのだけど。


 信号は赤のまま。ふと、横に人が並んでくる気配がした。背の高さからしてどうやら男性らしい。私は口ずさむのをやめる。


「続き、歌って」


 どうやら声の主は隣に並んだ男性らしかった。


「え」


 呆気にとられていると、男性は勝手にメロディを歌い始めた。

 この人もこの曲を知っているのだろうか。

 趣味の合う人が出来たような気がして、ちょっと嬉しくなった。


「その曲作ったの、僕なんだよ」


 男性は言った。

 失礼かとも思ったが、顔をちらっと見上げてみる。

 私の横に立っていた人はまさしく、そのユニットのギター担当の男性だった。名前は、よく覚えていないけど。


「歌ってくれて、ありがとう。お礼といっちゃあなんだが、はいこれ」


 男性は私に一つの箱を差し出す。綺麗にラッピングされた、まるでバレンタインチョコのようなそれ。


「これは?」


「チョコレート。今日、バレンタインでしょ。君にあげる」


 ふにゃっと笑って、男性はそれ以上何も言わずに青になった横断歩道を渡ってどこかへ行ってしまった。


 運命の出会い、というにはあまりに唐突すぎて、でも何だか彼とはまた会えるような気がした。


 画材を買って綾香の家に帰り、チョコレートの包みを開けてみると、そこにチョコレートとは別に連絡先の書かれた名刺が入っていた。


「連絡、しても良いってことだよね」


 バレンタインも悪くはないと思ってしまった私がいる。

 ベタな展開で激しくごめんなさい。今日は'10.2.14のバレンタインデーということで、バレンタインとは縁なんて欠片もない私ですが、短編を書きなぐってみましたww

 よろしければ辛口すぎない感想など、お待ちしております。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 拝読しました。 文章がテンポよく流れがスムーズで、抵抗無く読めました。ベタと仰いますがむしろ嬉しく楽しい、期待感の盛り上がるいいベタだったと思います。 [気になる点] 個人的にですが、もっ…
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