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第43.5話 親友からの連絡⑤(舞視点)

≪それで、結局今日はカラオケはやめて、お昼ご飯食べて、ぶらぶら歩いて終わったんだ≫

≪それは残念だったわね≫

≪ううん。それでも楽しかったよ?≫

≪まあ、それなら良かったけど≫


 私は、由佳とメッセージのやり取りをしていた。

 今日彼女からメッセージが送られてきたのは二回目だ。一度目は朝送られてきた。その理由である私の友達は、ベッドの上でスマホをいじっている。


≪千夜はどう?≫

≪あんまり機嫌は良くなってないみたい。私に直接不満をぶつけたりはしないけど、ずっと不満そうっていうか……≫


 表面上は、スマホに夢中になっているように見えるが、恐らく今の千夜は画面なんてほとんど見ていないだろう。

 彼女は今、ずっと別のことを考えているはずだ。それは、千夜がここに来た理由がわからなかった時から、わかっていたことである。


≪やっぱり家のことを色々と考えているんだよね……≫

≪まあ、それだけではないような気もするけど≫

≪そうなの?≫

≪最近、涼音ともあんまり上手くいっていなかったでしょう?≫

≪ああ……≫


 千夜が荒れている原因は、家のことだけではないように思う。彼女にとって一番の友達である涼音との関係も影響しているだろう。

 一週間程前だろうか。涼音が千夜の連絡にまったく反応しないことがあった。そこから、二人の関係は少し微妙になったのだ。

 表面上はいつもと変わっていないような感じだったが、少しだけその関係は変わったような気がする。それはきっと、由佳も感じていたはずだ。


≪やっぱり、二人は微妙にいつも通りじゃなかったよね……≫

≪由佳もわかっていたのね。まあ、当然か≫

≪うん。でも、二人はいつも通りに振る舞っているから指摘もし辛かったし、二人はやっぱり独特な関係だから、口出ししない方がいいって思ってたんだけど……≫

≪それは私もそうよ≫


 千夜と涼音は、小学校からの付き合いである。そのため、二人の間には特別な友情があった。私と由佳では入れない領域があったのだ。

 だから、今回のことも私達はあまり触れていなかった。ただ、それが良かったかどうかは微妙な所である。


≪何もなければ、今回だって涼音を頼っていたはずよね?≫

≪うん。そうだよね。あ、でも家の事情とかあるから、敢えて頼らないということもあるんじゃない?≫

≪そもそも涼音は千夜の家のことを知っているのかしらね?≫

≪うーん……それは、どうなんだろう?≫


 千夜は、自分の家族や家のことをほとんど話さなかった。話したくなかったということはわかっていたので、私も由佳も特に詮索することはなかった。

 そのため、千夜の家のことはまったく知らなかったのだが、涼音もそうであるとは限らない。もしかしたら、長い付き合いの中で、千夜から聞いているかもしれない。


≪私達、意外とお互いに知らないことが多いんだね……≫

≪別に二人のことを知らないという訳ではないでしょうが。好きな色とか好きな食べ物とか、知っていることの方が多いはずよ≫

≪あ、うん。それはそうなんだけど……≫


 由佳は、少し落ち込んでいるような気がした。メッセージであるため、私の勘違いという可能性はあるかもしれないが、それならそれで別にいい。

 確かに、私達はお互いのある一面を知らない。それは、紛れもない事実である。だが、だからといって、私達がお互いのことを知らない訳ではない。数多く知っていることがあるという事実も、また見逃すべきではないと私は思う。


≪でも、知りたいって思うんだ≫

≪知りたい?≫

≪千夜と涼音のこともそうなんだけどね。ろーくんのこととか、もっと知りたいなって思ったんだ。二人は友達だし、ろーくんは……≫

≪まあ、そうかもしれないわね≫


 好きな人のことを知りたい。どうやら由佳は、そのように思ったようだ。

 由佳とあいつは、離れていた期間が長い。ある程度過去を話したとはいえ、お互いにまだまだ知らないことがあるだろう。

 それを埋めたいと由佳は思っているようだ。もっとも、あいつの方は由佳にそれ程過去のことを知って欲しいという訳ではないようだが。


 いや、それはきっとあいつだけに限った話ではないだろう。誰にだって、人に話したくないことの一つや二つあるはずだ。それは由佳もわかっているだろう。

 だが、それでも由佳は知りたいのだ。その理由はとても単純で、由佳があいつのことを想っているからなのだろう。


≪その辺りはデリケートな問題みたいだから、あんまりぐいぐい行かない方がいいかもしれないわよ≫

≪うん。それはもちろんわかっているよ。でもね、それでも知りたいって思っちゃうんだ≫

≪そうなのでしょうね≫


 先週、由佳はあいつから色々と話してもらったと言っていた。その内容を私は知らないが、きっとそれは由佳にとってとても嬉しいことだったのだろう。

 楽しいことでも辛いことでも、由佳はあいつと分かち合いたいのだ。一緒に喜び一緒に悲しみ、時には慰め合いたい。由佳はきっと、そんな風に想っているのだろう。


「……はあ」


 そこで私は、千夜がゆっくりとため息をついたことに気付いた。よく見てみると、彼女は既にスマホから手を離して、天井を眺めている。やはり、色々と考えているようだ。


「千夜、そろそろ寝る?」

「え? あ、うん。そうだね。そうしようかな?」


 私が声をかけても、千夜は生返事を返してくるだけだった。

 どうやら今回は、かなり重症であるようだ。しかし残念ながら、それを解決することは私にはできない。何かしたいとは思うが、多分私は何もするべきではないだろう。

 今の私がやるべきことは、いつも通り千夜に接することであるはずだ。変に何かを言うよりは、私は千夜の拠り所でいる方がいい。


≪まあ、千夜はしばらく家にいさせるからさ、その辺りのことは心配しないでいいわよ≫

≪うん。私が言うのも変だとは思うけど、千夜のことよろしくね≫

≪ええ、任せておきなさい≫


 私は、由佳にそうメッセージを打ってから千夜の方を向く。

 やはりあまり聞いていなかったのか、彼女は特に寝る準備などは始めていなかった。

 いつも明るい千夜が、このような状態であるというのは私も辛い。早く問題が解決して欲しいものである。

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