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第17.5話 親友からの連絡③(舞視点)

「それで、結局上手くはいかなかったのね……」

『うん。でも、そんなに悲しい訳ではないんだよ。ろーくんの優しさはわかったし』


 あいつを家に呼んだ由佳は、大胆な行動を取ったらしい。しかし、それをあいつは理性で跳ね除けたようだ。色々と勘違いはあったようだが。


「……難しい性格をしているとは思っていたけれど、結構手強い相手なのね」

『手強い……そうなのかな?』

「ええ、そう思うわ……一筋縄ではいかない相手というか」

『で、でも、ろーくんはすごく優しんだよ?』

「いや、別にあいつのことをけなしているという訳ではないのよ?」

『そ、そうなの?』

「ええ……」


 恐らく、あいつは由佳のことを本当に大切に思っているのだろう。今回の出来事からもそれはわかる。

 由佳の恋がすぐに叶わなかったのは残念だ。しかし、逆にあいつが安易な誘惑に乗らなかったという事実は、それなりに褒められることのように思える。

 もっとも、単に鈍感というだけともいえなくはない。ただ、悪い奴ではないことは確かだ。その事実に、私は少し安心している。


「はあ、でもなんだか悔しいわね」

『悔しい? 何が?』

「いえ、なんでもないわ。それは、こちらの話……」


 初めてあいつと会った時は、どうしようもない奴だと思っていた。

 由佳には、幸せになってもらいたいと思っている。だから、その相手に関しては少し心配していた。

 だが、あいつなら多分問題はないだろう。少なくとも、由佳のことを大切に思っているのは事実である訳だし。

 ただ、それを認めるのは少々癪だった。由佳の親友として、少々悔しい。


「まあとにかく、あいつは由佳のことを大切に思っている訳でしょう?」

『う、うん。それはそうだと思う。ろーくん優しいし』

「幼馴染だから当たり前なのかもしれないけれど、普通の友達よりも結構深い関係にはあるような気がするわね」

『そうだね……家族に近いのかな?』

「親戚くらいの関係なんじゃない?」

『そのくらいなのかな?』

「いえ、まあ家族でもいいけど……」


 由佳とあいつの関係性というのは、少々難しい。

 ただの友達ではないことは確かだ。それ以上の関係ではある。

 しかし、親友とはいえないだろう。由佳の親友といえるのは、多分私だ。

 だからといって、家族でもないだろう。離れていたことや時々しか会わないことを考えると親戚くらいの距離感のようにも思える。


「幼馴染といっても、色々な関係性がある訳だし、それも変よね?」

『幼馴染にも色々あるの?』

「由佳達みたいに親しい幼馴染ばかりじゃないわよ。というか、二人の関係が稀というかなんというか……」


 ひとえに幼馴染といっても、その仲の良さの度合いは色々と異なっているだろう。

 男女であるとも限らないのだし、その関係は千差万別であるはずだ。由佳達の関係が一般論である訳はない。


『私とろーくんは、舞から見たら親しく見える?』

「ええ、見えるわよ。なんというのかしらね……根本的な部分で、お互いをとても大切に思っているというか……」

『えへへ……』


 私の言葉に、由佳は笑った。恐らく、喜んでいるのだろう。

 口にしておいてなんだが、今のは言わなくても良かったような気もする。なんというか、妙に気恥ずかしい。


『でも、その大切だっていう思いが私を女の子だと思っているからかどうかは、わからないんだよね……』

「それは……」


 直後に由佳から聞こえてきたのは、少し弱気な言葉だった。

 やはり、不安なのだろう。あいつが、自分のことをどう思っているか、由佳は気になって仕方ないのだ。

 その不安を私は完全に拭うことはできない。あいつの気持ちは、結局あいつにしかわからないからだ。


『ごめん。少し弱気になっちゃった。舞が言っていた通り、ろーくんに女の子として意識していなくても意識させればいいんだよね』

「え、ええ……でも、一応今日だって反応はしていたのでしょう?」

『あ、うん。胸元を確かに見てた』

「それなら、異性としてはしっかり見られているわね。好きかどうかは謎だとしても、姉とか妹とかそういう存在とは思われていない訳でしょう?」

『あ、そっか……確かにそうだね。それがわかっただけでも、今日は大きな進歩かも』


 私の指摘に、由佳は明るい声を出した。

 あいつに女の子だと思われている。それだけでここまで明るくなれるくらい、由佳はあいつのことを想っているようだ。

 これ程に想っているのだから、その恋は実って欲しい。私のその想いも、強くなっていく。


「まあ、とにかくこれからは一々落ち込まないことね」

『落ち込まないこと?』

「ええ、今回だって一歩進めた訳でしょう? だから、とにかく色々とやってみた方がいいと思うわ。愚痴は後で私が聞いてあげるから、ガンガン攻めなさい。その方があいつの考えもわかると思うし」

『ガンガン攻める……わかった。頑張ってみる』


 とりあえず、私は由佳に発破をかけておくことにした。

 彼女は、あいつのことで一喜一憂し過ぎる傾向がある。想いが強い故に、そうなってしまうのだろう。

 ただ、細かい失敗などは気にしない方がいい。由佳が会えなかった期間を埋めたいと思っているなら、今はとにかく行動するべきだ。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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