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【連載版】結婚の約束をした幼馴染と再会しましたが、陽キャになりすぎていて近寄れません。  作者: 木山楽斗
二学期編

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24.その事実だけで俺はそう思えるのだった。

 とある休日、俺は由佳とともにランニングを行っていた。

 大分涼しくなってきたため、走るのにも丁度いい気候といえるだろう。もう少しすると、むしろ寒くなってくるというのがネックではあるが。


「おや、由佳先輩に藤崎先輩ではありませんか」

「あ、静良ちゃん」

「む……」


 そんな俺達は、再び高坂妹と出会っていた。

 もしかして、彼女のランニングコースと俺達のコースは被っているのだろうか。こうやってまた会ったというのは、そういうことなのかもしれない。


「いやはや、奇遇ですね。まさか、またお二人と会うなんて」

「そうだね。偶然なんだろうけど……」

「いえいえ、これは最早運命という奴ですよ」


 高坂妹は、へらへらと笑っていた。

 その笑顔に、俺は少し違和感を覚える。なんというか、含みがあるのだ。

 そこで俺は理解する。高坂妹は、俺達のことを待っていたのだと。

 きっとそういうことなのだろう。いくらなんでも、偶然が過ぎる訳だし。


「ああ、そういえば、由佳先輩にも伝えましたが、藤崎先輩にはお世話になりまして……その節はありがとうございました」

「あ、そうだったんだよね」

「別に世話をしたという程のことでもないがな……」


 そこで高坂妹は、俺に対してお礼を述べてきた。

 どうやら彼女は、そのお礼を言うために俺達を待っていたようだ。

 なんというか、律儀である。別にお礼なんて、必要なかったのだが。


「お陰様で、かなりすっきりとしました。高坂静良、これからも明るく元気に頑張っていきますよ」

「そうか。それなら何よりだ」

「静良ちゃん、なんだかいい顔してるね?」

「由佳先輩の彼氏さんのおかげですよ。仰っていた通りのかっこいい方ですね、藤崎先輩は」

「えへへ、そうでしょ?」


 由佳の言う通り、高坂妹はいい顔をしている。先日会った時のような憂いはなくなったようだ。

 それなら、俺の言葉にも少しは効果があったということだろうか。それなら本当によかった。なんだか俺も安心できる。


「さて、それでは私はそろそろ失礼しますね。お二人の逢瀬を邪魔する訳にはいきませんからね?」

「逢瀬という程のことではないんだがな……」

「静良ちゃん、またね?」

「ええ!」


 由佳の言葉に元気な返事を返しながら、高坂妹は駆けていった。

 その後姿を見ながら、俺は思わず笑みを浮かべてしまう。


「ろーくんも、なんだかいい顔しているね?」

「そうだろうか?」

「うん。静良ちゃんが元気になって、嬉しい?」

「そうだな。嬉しいとは思っている……なんというか、いいものだな」


 そこで由佳は、俺がニヤついていることを指摘してきた。

 なんというか、少し恥ずかしい。だがこれは、仕方ないことだ。

 高坂妹が元気になって、本当に良かったと思う。俺は今、とても晴れやかな気持ちである。


「ろーくんはやっぱり面倒見がいいよね」

「面倒見がいい? そうだろうか?」

「うん。昔から困っている人を見ると放っておけなかったでしょう?」

「そういう訳でもないと思うが……」


 由佳の言葉に、俺は少し困惑していた。

 俺はそんなに殊勝な人間だっただろうか。正直よくわからない。


「ろーくんのその優しさは、きっとこれからも色々な人を助けていくだろうね」

「あまり自信はないんだが……」

「大丈夫、ろーくんは自然とそういう風にすると思うから」

「な、なんだか自信満々だな……」

「だって自信があるもん」


 由佳はそう言って、眩しい笑顔を俺に向けてきた。その笑顔に、俺も笑みを返す。

 正直、由佳が言っている通りの人生を歩んで行ける自信はない。

 しかし、そうなる可能性もあるかもしれない。由佳が信じてくれている。その事実だけで、俺はそう思えるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

本作品はここでまた一区切りとさせていただきます。

次回の更新は未定です。機会があったらまた応援していただけると嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
うーんさわやかな締め でももうちっとだけ続くんじゃよ
[一言]  一区切りまでお疲れさまでした。  ほんわかとした安心感を感じながら楽しく読まれていただきました。  ありがとうございました。
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