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【連載版】結婚の約束をした幼馴染と再会しましたが、陽キャになりすぎていて近寄れません。  作者: 木山楽斗
第1章 幼馴染との再会

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第17話 幼馴染への対応は中々上手くいかない。

「……ろーくんは髪を染めたりしないの?」

「え?」


 写真と由佳を見比べていた俺に、彼女はそのような質問をしてきた。

 髪を染めるのは、由佳にとっては当たり前だ。だから、このように特に疑問を抱くこともなく質問してくるのだろう。


「いや、俺はそういうつもりはないな……」

「そうなんだ。ろーくんなら何色でも似合うと思うけど……」


 由佳はこう言っているが、俺は逆に何色でも似合わないだろう。自分で想像しただけで違和感がある。


「俺には似合わないさ。黒髪の方がしっくりくるしな」

「そうなの? 確かに黒い髪も似合ってるとは思うけど……」

「それに髪の毛を染めるのも色々と大変なんだろう? 気軽に変えられる訳でもないだろうし、俺はそこまでしようとは思わないな」

「そうなんだ……」


 俺の言葉に、由佳は少し悲しそうにしていた。そんなに別の髪色の俺を見てみたかったのだろうか。

 ただ、今の所髪を染めるつもりはない。由佳が喜んでくれるとしても、他の奴は色々と言ってくるだろうし、それには耐えられないと思ってしまう。


「まあ、由佳ならどんな色でも似合うんだろうな……」

「え? そうかな? ろーくんは、ピンク色の他はどんな色が見てみたい?」

「え? えっと、そうだな……」


 由佳の質問に、俺は少し考えることになった。

 由佳に似合う髪の色、それは色々とあるだろう。金髪でも似合うだろうし、赤でも青でも良さそうだ。


「でも、やっぱり俺は黒い髪が見てみたいな」

「え?」

「写真を見たからかな? なんというか、この頃のような由佳が見てみたいというか……」

「そ、そうなんだ……それなら、次は染めないようにしようかな」

「あ、ああ……」


 俺は思わず息を呑んでしまった。黒い髪の由佳が、結構楽しみだったからである。

 ピンク色はもちろん似合っているのだが、俺にとって由佳はやはり黒い髪なのだ。あの頃から正統に成長した由佳を、見てみたいという気持ちはある。

 もっとも、由佳の髪の毛が元に戻るくらいの時には、俺は既に失望されてしまっているかもしれないが。


「……なんだか、少し暑いね?」

「……うん?」


 そこで由佳は唐突にそのようなことを言い出した。今日は天気もいいため、日の光が部屋に入ってきてそれなりに温かい。だが、暑いという程ではないと思うのだが。


「カーテン閉めてもいい?」

「ああ、別に構わないが……」

「それじゃあ、閉めるね」


 由佳はゆっくりとカーテンを閉めた後、俺の正面に再び座った。

 彼女の顔は、少し赤くなっている。どうやら、本当に暑いと思っているようだ。

 なんだか、少し心配になってきた。もしかして、久し振りに俺と遊ぶことにテンションが上がって、必要以上に体が熱を帯びたのだろうか。


「由佳、大丈夫か?」

「あ、うん。大丈夫……でも、少し脱がないと」

「脱ぐ……そ、そうか」


 由佳は、ブレザーを脱ぎリボンを解きシャツのボタンを開く。すると当然、その胸元が見える。俺の視線はそこに奪われてしまう。

 見てはならない。そういう気持ちがあるのに、視線はそこに向いてしまう。男の性に逆らえない。


「ろーくんは暑くない?」

「あ、ああ、暑くはない……」

「そっか……」


 胸元に目を奪われていた俺は、なんとか由佳の顔を見る。やはり、彼女の顔は赤い。本当に暑さを感じているのだろう。

 それを理解して、俺は自分がとても愚かなことを考えていたということを理解する。由佳は今、普通の状態ではないのだ。それなのにやましい気持ちを抱くなんて最低である。


「由佳、とりあえず横になったらどうだ? 少しは楽になるだろう?」

「え? あ、そ、そうかな……」

「冷却シートの類は部屋にないのか? いや、今から俺が買って来ればいいか」

「あ、そこまでしないでも大丈夫だよ」


 俺は自分の頭を切り替えた。由佳を助ける。やましい気持ちを振り払って、それに集中する。

 由佳が今どのような状態かはわからない。風邪を引いている可能性もあるし、熱中症もあり得ない訳でもないだろう。とにかく、彼女が暑さを感じているなら、冷やした方がいいだろう。


「ろーくん、本当に大丈夫だよ。少し暑いって思っただけだから」

「いや、しかし……」

「……ろーくん、心配性なんだね」

「そ、そうだろうか……?」


 困惑している俺に対して、由佳は笑顔を浮かべた。その笑顔は、少し悲しそうだ。

 もしかして、俺は心配し過ぎてしまったのだろうか。あまりに心配する俺に、由佳は引いてしまったということなのかもしれない。

 昨日失敗したばかりなのに、また失敗してしまった。やはり、上手くはいかないようだ。俺は本当にどうしようもない。


「す、すまなかった……余計な心配をしてしまったな」

「ううん。そんなことないよ。心配してくれて嬉しかった。ありがとう」

「そ、そうか……」


 由佳の態度は、少しぎこちなかった。先程の俺の態度は、やはり失敗であったようである。気持ち悪かっただろうか。

 どうやら、俺が失望されるのは思っていたよりもずっと早そうだ。昨日も今日も失敗してしまった。由佳の中で俺の評価はかなり下がっているのではないだろうか。

 わかっていたことではあるが、それでも心にくるものはある。それだけ、俺は今由佳と一緒に過ごしている時間を、楽しいと思っているということなのだろう。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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