13.自己申告の通り結構なお調子者であるようだ。
「いや、藤崎先輩はお噂の通りかっこいい人みたいですね。いや、実際にお目にかかれて光栄ですよ。本当に……」
「そ、そうか……」
高坂は、俺を舐め回すように見た後にそのようなことを言ってきた。
恐らくそれは、お世辞を多分に含んでいるだろう。その大袈裟な言動から、それが伝わってくる。
「ああちなみに、お二人がアベックになったというのも最近ある情報筋から把握していますよっ!」
「アベック?」
「あらあら、通じませんかね?」
ゆっくりと首を傾げた由佳を見てから、高坂はこちらに視線を向けてきた。
どうやら自己申告の通り、高坂は結構なお調子者であるようだ。それがまったく悪い感じがしないのは、本人の気質によるものなのだろうか。
「まあつまり、高坂は俺達が付き合っているということを誰かから聞きつけたという訳だな?」
「ええ、そういうことですよ」
「あーあ、それはやっぱり孝則君から?」
「あ、はい。そうですそうです」
由佳の口から零れた名前に、高坂は一瞬だけ顔を強張らせたような気がした。
孝則というのは、四条一派の一人である新見のことであるだろう。つまり高坂は、新見の関係者ということになる。
何度か話したりはしているが、俺は新見のことをそこまで知っている訳ではない。当然のことながら、交友関係なんてさっぱりだ。
「孝則君からなんて聞いたの?」
「由佳先輩の長年の恋が無事に実ったと聞きました」
「なんというか、すごく孝則君らしい説明だね?」
「あはは、まあ孝則先輩はそういう所、ボケたりしませんからね……」
あまり新見のことを知っている訳ではない俺でも、二人の言わんとしていることはなんとなくわかった。
新見は結構、真面目な感じだったはずだ。多分、そういうことをからかったりはしないタイプであるだろう。
「所でその孝則先輩は元気ですか?」
「あれ? 静良ちゃんは最近孝則君と会っていないの?」
「ええ、まあ、最近はあんまりですね。なんだか私、嫌われちゃったみたいで……」
「そ、そんなことはないと思うよ? ほら、孝則君部活やめたでしょう? だから、時間が合わなくなっちゃったとかじゃないかな?」
「そ、そうなんでしょうか?」
二人の会話に、俺はぼんやりと新見と高坂の関係性を理解していた。
恐らく二人は、部活関係の知り合いということなのだろう。
四条一派は誰も部活に属していないと聞いているが、一年生の時や中学の時は違ったのかもしれない。
それに恐らく高坂は、新見に対して特別な感情を抱いているだろう。
流石の俺でも、なんとなくわかる。今の表情は、ただの先輩に向けるような顔ではない。
ただなんというか、明るい雰囲気ではないことが気になる。これは後で、由佳に聞いてみた方がいいかもしれない。




