10.今年の誕生日は色々な人が俺を祝ってくれた。
「ろーくん、誕生日おめでとう」
「ああ、ありがとう、由佳……」
九月九日、由佳は俺の誕生日を高らかに祝ってくれた。
彼女からの祝いの言葉は、正直とても嬉しい。今日何度も聞いたが、それでもその喜びはそんなに変わるものではない。
「なんというか、今日は一日すごかったな……」
「すごかった?」
「ああいや、なんというか皆から祝いの言葉を貰ったからな……」
去年の誕生日、俺を祝ってくれたのは父さんと母さんくらいだった。
しかし今年の誕生日は、色々な人が俺を祝ってくれた。竜太に四条、月宮や水原、それに江藤や七海といった面々まで、俺のことを祝福してくれたのだ。
そんな誕生日が訪れるなんて、今まで思っていなかった。故になんというか、今日は一日不思議な気持ちだった。一日中、ちょっと浮かれていたような気もする。
「皆、ろーくんの誕生日が嬉しいんだよ」
「嬉しい?」
「だって、ろーくんが生まれた日だもん。その日がなかったら、出会えてなかったんだよ?」
「それがそんなに、祝福されるようなことだとは思えないんだけどな……」
由佳の言葉に、俺は少しだけ納得することができていなかった。
彼女の言わんとしていることはわかっている。しかし俺と出会えたことなんて、別にそこまで嬉しいことではないような気がしてしまう。
「そんなことはないよ」
「むっ……」
「私も皆も、ろーくんと会えたことはすごく嬉しいことだって思っているよ。ろーくんだってそうでしょう? 皆に会えたことは嬉しくない?」
「いや、そんな訳はないさ」
「それなら逆もそうでしょう?」
「……そうなのかもしれないな」
由佳に言われて、俺は自分から見た時のことを考えることになった。
確かに俺は、皆と会えたことを素晴らしい幸運だと思っている。故に友達を大切にしたいとも思っているし、その誕生日は祝福するだろう。
俺がそう思っているのだから、その逆が違うなんて言える訳がない。故に俺は、由佳の理論に納得せざるを得なかった。
「あ、それでね、ろーくん。お待ちかねかどうかはわからないけど……私からのプレゼントをあげるね?」
「もちろん、お待ちかねだったさ。これは……開けてもいいのか?」
「当然! 中身を見てみて?」
そこで俺は、由佳からのプレゼント受け取った。
彼女の許可を取ってから、俺はその包みを開ける。すると中には、あるものが入ってきた。
「これは……時計か」
「うん。時計だよ?」
「可愛らしいデザインだな……青い鳥か」
由佳からのプレゼントは、青い鳥を模した置時計であった。
可愛らしいデザインの時計を、俺はまじまじと見る。なんというか、俺好みのデザインだ。
「由佳、ありがとう。すごく嬉しいよ。大事にする」
「えへへ、そう言ってもらえると嬉しいな……」
俺のお礼に、由佳は笑顔を見せてくれた。
こうして俺は、最高の誕生日を迎えることができたのだった。