14.夏休みの宿題は一緒にやっている。
基本的に夏休みの宿題は、由佳と一緒にやることになっている。
同じ課題をするので教え合ったりできるというのもあるが、これに関しては由佳の監視という側面が強い。
「やっぱり、どうしてもやる気が出なくて……まあ、舞や涼音に言われるから最近はそうでもなかったけど、最終日が近くなってからやるタイプっていうか……」
「まあ、それは良くないな」
「うん。毎日コツコツやる方がいいよね、絶対……」
そう言いながら、由佳は苦笑いを浮かべていた。
しかし気持ちは俺だって理解できる。宿題なんて、もちろんやりたくはない。
とはいえ、やらなければもっと辛い日々が待っている。夏休みを楽しく過ごすためには、少しずつ片付けておく方が絶対にいいだろう。
「さて、とりあえず今日の範囲はこんなものだな」
「うん。今日もろーくんのおかげで、しっかり宿題ができたよ」
「それならよかった」
そんな話をしている内に、俺達はそれぞれ決めていた範囲を終わらせた。
こうやって由佳と一緒にすると、宿題もそこまで苦ではない。偶に話したり、わからない所を教えたり、それがあるだけでなんだか捗るのだ。
「このペースなら、夏休み後半はいっぱい遊べそうだね?」
「まあ、一応余裕を持って予定は立てているからな……」
「その方がいいもんね」
「問題は、読書感想文なんかか……」
「あーあ、それは確かにそうだよね……」
俺は予定を確認しながら、少しだけ考える。
問題集なんかの宿題は、恐らく大丈夫だろう。これはとにかくやればいい。例え間違ったとしても、きちんと取り組めば絶対に終わる。
しかし読書感想文となると、本を読んでその上で文章を作らなければならない。その文章が思い付かなかったら、かなり辛い作業になるだろう。
「本は一応読んでるけど、ちゃんと書けるか不安だなぁ……」
「それは、俺も同じだ」
「涼音とか得意そうだよね? いつも、すごい熱く作品を語ってくれるし」
「いや、あれはその……読書感想文で書いたらまずいだろう」
読書感想文というのは、どうにも苦手だった。いざ書こうと思っても、うまくまとまらないのだ。
せめて文字数が自由ならいいのだが、当然それは定められている。いざとなったら、適当なことを書いて誤魔化すしかない。
「でも、昔は本を読むことがまず無理だったから、それを思うと今はまだ少し楽かなって思うよ」
「それはそうだな。俺も確かに、活字を読むことに対する抵抗はなくなっている」
「これは美姫ちゃんのおかげだなぁ」
そこで由佳は、嬉しそうに笑顔を浮かべていた。恐らく、七海のことを思い出しているのだろう。
読書家である七海ならば、読書感想文も苦ではないのだろうか。
「でも、美姫ちゃんも読書感想文は嫌いだって言ってたな。感想を書くのはいいけど、それを縛られるのは気にくわないって、珍しく怒ってたっけ」
「七海がか? なるほど、読書家だからこそ許せないこともある訳か」
どうやら七海も、読書感想文にはそれ程いい印象を持っていないらしい。
ただ言われてみれば、その方がしっくりくるような気もする。なんとなくだが、七海はそういうことへのこだわりは強そうだ。
「しかし結局課題だからな。やるしかないさ」
「そうだよね……」
俺と由佳は、お互いに苦い表情で笑い合っていた。
結局逃れられないのだから、やるしかない。今の俺達は、そんな気持ちなのだ。




