13.運動部と俺を比べるなんておこがましい。
「そうそう、そうやって土踏まずのとこで蹴るんだよ」
「なるほど、これはなんだかすごいな……気分的には、プロのボールさばきだ」
昼食を終えた後、俺は何故か江藤と一緒に河川敷でサッカーをしていた。
特に行きたい場所が思い付かなかった結果、江藤の提案で彼の得意とするサッカーを学ぶことになったのである。
「ボールというのは、こんな風に操っていたんだな。初めてわかったよ」
「まあ、サッカーをやっていないとわからないことも多いからね」
「それはそうだな。俺なんて、体育の授業で少しこなしたくらいだ」
この炎天下の中でスポーツをするのはどうかとも思ったが、最近の俺は比較的運動に対する抵抗が少なくなったため、提案を受け入れた。
結果として、サッカーは楽しめている。江藤が教えるのが上手いため、以前より遥かにボールを操れるようになり、はしゃいでいるというのが現状だ。
「ただ、流石に少し疲れてしまったな……」
「まあ、この日差しだからね……」
気分的には、もう少し江藤にご教授願いたい所である。
だが、流石にやめておいた方が良さそうだ。さんさんと照り付けるこの日光は、俺の体から思っている以上に体力や水分を奪っているはずである。早急に水分補給をするべきだ。
もちろん、水分はちゃんと用意している。ちゃんとスポーツドリンクを購入していたのだ。
「はい、ろーくん」
「ああ、ありがとう」
俺は江藤とともに、近くのベンチに座ってスポーツドリンクを飲む。
しっかり運動をしたからか、ドリンクが体に染みる。やはり運動した後の飲み物はいいものだ。
「よく見てみると、周りに人もいないしね……」
「ああ、この広い河川敷に俺達二人というのも奇妙なだな……」
「やっぱり真夏だから、子供達も外で遊ばないのかな?」
「まあ、流石にこの暑さじゃなぁ……」
河川敷というものは、子供達の遊び場になっていたりする。特にここは、サッカーゴールもあることだし、そういう目的で来る者もいるはずだ。
だが今日は、俺と江藤の二人だけである。それだけこの暑さが、厳しいということなのだろう。
「運動部は大変だな。この暑さでも練習だろう?」
「それはまあ、そうだね。でも、ちゃんと気を付けているから」
そう言って江藤は、爽やかに笑っていた。
俺と比べると、こいつは疲れていないような気がする。まあ、運動部と俺を比べるなんて、おこがましいことこの上ないが。
「というか、そういうことならろーくんも気を付けた方がいいよ。こまめな水分補給を心掛けないと、室内でも熱中症になるんだから」
「確かにそれはそうかもしれないな。油断している分、俺の方が危ないか……」
江藤の言葉を、俺はしっかりと肝に銘じておく。
最近の夏は、本当に暑い。熱中症などでこの幸せな夏休みを失わないように、対策は心掛けておくべきだろう。
そう強く思える程に、俺はこれからの夏休みが楽しみだった。やはり今年の夏は、俺にとって特別な夏ということなのだろう。




