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第13.5話 親友からの連絡②(舞視点)

「はあ……なるほど」


 由佳からお昼休みにあったことを聞いた私は、ゆっくりとため息をついた。

 勇気を出してデートに誘ったというのに、あいつはそれを突っぱねたらしい。それも、訳がわからない理由で。


『……言い方が悪かったのかな? 素直に二人で出かけたいって言ってたら違う反応があったかもしれないし』

「どうかしらね。あいつなら、結局断っていたような気もするけど」

『でも、私が皆で遊ぶ前提で話しているって勘違いさせちゃったみたいだし……』

「まあ、多少のすれ違いはあったのかもしれないわね」


 由佳は、昼食の際のやり取りからあいつを二人きりのデートに誘おうとした。

 しかし、あいつの方は由佳が皆と一緒に出かけたいが、自分のために二人で遊ぼうと誘っていると考えたようだ。一体、どうしたらそのように考えられるのか、私には理解できないが。

 ただ、あいつも由佳のことを思ってそう言ったのは確かであるだろう。そこに悪意がないだけに質が悪い。


「というか、どうして引き下がったのよ? 強引に誘えばよかったじゃない」

『うっ……それはそうなんだけど、一度断られたらどうも誘う勇気が出なくて……』

「勇気ね……」


 由佳はあいつに一度断られたことによって、勢いを失ってしまったようだ。その気持ちは理解できない訳ではない。

 だが、あの男は面倒な性格をしている。そのため、多少なりとも強引にいく必要があるのではないだろうか。


「小学生の頃だったわよね? あいつが引っ越したのは」

『あ、うん。そうだよ』

「長い間離れていたものね……由佳は、その期間を埋めたい。その認識は、間違っていないわよね?」

『うん。その通りだよ』

「……それなら、多少なりとも強引に行くべきね。少なくとも、あいつは遠慮しているみたいだし」

『や、やっぱりそうなのかな……』


 あいつが遠慮している以上、由佳が強引に行かなければ二人の仲は進展しない。

 あいつには色々と思う所があるが、基本的に私は由佳の恋が実るように応援するつもりだ。そのため私は由佳になんとかして火をつけなければならない。


「そうね……とりあえず、明日家にでも呼んでみれば?」

『い、家?』

「そういう話が出たのでしょう? まあ、あいつの家に行くのでもいいけど、自分の家の方が準備もしやすいでしょ?」

『じゅ、準備……』


 由佳の声は、少し震えていた。流石に家に呼ぶのはまだハードルが高かっただろうか。

 だが、それくらいしなければあの男の心は動かせないような気もする。異性の部屋に招かれれば、流石のあいつも色々と考えるだろう。


『でも、大丈夫なのかな?』

「何か心配なことでもあるの?」

『実は今日のお昼ね、ろーくんが私の胸を見てたの』

「……胸?」

『うん。ろーくん、いつも顔を見てくれていたんだ』

「……そうだったのね」


 由佳の言葉に、私は少し驚いていた。

 意外にも、あいつは紳士的な人物であったらしい。いや、今日見ていたということは、そういう訳ではないのかもしれないが。


『やっぱりそういう所を見られるのは嫌だから、ろーくんのことすごくかっこいいって思ってたんだけど……』

「まあ、そうね……」


 由佳は、いつも男子の視線に悩まされていた。

 彼女の胸は人よりも少し大きいため、多くの者達はその部分に視線を集中させる。由佳が気づいていることもわからずに。

 当然、それは由佳にとって快い視線ではない。そんな所ばかり見る男達は、はっきり言って最低だ。

 だが、あいつは由佳の顔ばかり見ていた。それは私からしても一定の評価ができる事実だ。


『でも、段々悲しくなってきたんだ。もしかしてろーくん、私のことをあんまり意識していないのかなって……』

「なるほどね……」

『だから、今日は嬉しかったんだ。ろーくんにだったら見られても全然嫌じゃないし、むしろ見て欲しいって思ってたから』

「由佳も意外と大胆なのね」


 由佳があいつのことをどうして好きなのか、それが少しだけわかった気がした。

 彼女は、過去の幻想を追いかけている訳ではないのだろう。きちんと今のあいつを見ていることは、今の言葉を聞けばわかる。

 恐らく、由佳はあいつのそういう面を昔から知っていて、それが絶対に変わらないと信じていたのだろう。そしてあいつは、由佳が信じた通りの人間だった。そういうことなのだろう。


『でも、今日もすぐに目をそらしたし、やっぱりろーくんは私のことを女の子として意識していないのかな?』

「そんなことはないと思うわ」

『そ、そうなのかな?』

「まあ、仮にそうだとしても意識させればいいというだけのことよ」

『……そっか。そうだよね。舞、ありがとう。私、頑張るよ』


 由佳の返事は、力強いものだった。だから、きっと大丈夫だろう。彼女は、上手くやるはずだ。

最後までお読みいただきありがとうございます。


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