表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】結婚の約束をした幼馴染と再会しましたが、陽キャになりすぎていて近寄れません。  作者: 木山楽斗
夏休み編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

139/227

1.俺は夏という季節がどちらかというと好きではなかった。

 夏という季節が、俺はどちらかというと好きではなかった。

 暑いのが理由という訳ではない。むしろ、寒いよりは幾分か平気なくらいである。

 なら何故夏が嫌いなのか。その理由は、夏に起こり得ることに関係している。


「海に祭りに、俺には縁のないイベントだな……」


 一年前の俺は、確かそんなことを言っていたはずだ。

 振り返ってみると、ちょっと痛いような気もする。そうやって斜に構えていた俺は、できれば思い出したくないものだ。


「いや、春だって秋だって冬だって、俺には縁のない行事ばかりだった訳だが……」


 改めて考えてみると、去年までの俺は好きな季節なんてなかった気がする。

 強いて言えば、春か秋くらいだろうか。気温的に過ごしやすいということ以外、俺の季節の好き嫌いの判断基準はなかったのだ。


「といっても、別に今も行事で好き嫌いが決まるという訳ではないな。そもそも、俺はまだイベントのある夏を体験していない」


 そこで俺は、パソコンに表示されているゲームに意識を移した。

 それは所謂、恋愛シミュレーションゲームという奴だ。友人に勧められたこともあってやってみているのだが、一応有名なゲームなだけあってそれなりに面白い。

 ただなんというか、こういうゲームは以前までと同じようにプレイできなくなってしまっている。現実を知ったことによって、俺の心境に何かしらの変化が起こっているということだろうか。


≪どう?≫

≪まあ、面白いんじゃないか?≫

≪へぇ、実際に彼女がいる身でも面白いって思うもんなんだね?≫

≪別に彼女の有無は関係ないと思うが?≫

≪いやさ、由佳に悪いとか思わない?≫


 俺はスマホに表示されたメッセージを見ながら、頭を抱えていた。

 この友人は、俺にどんな反応を期待しているのだろうか。そもそもやるべきだと熱弁してきたのは、向こうだというのに。


≪人を浮気しているみたいに言うのはやめてくれないか≫

≪でも、今別の女の子と恋愛してる訳だよね?≫

≪ゲームの話だろう≫

≪ゲームでも同じじゃない? というか、浮気してる人は皆そういうよね? これは浮気じゃないって≫


 水を得た魚のように勢い付くメッセージに、俺は苦笑いをすることしかできなかった。

 しかし、流石にこれが浮気なんてことはないだろう。由佳は俺のこういった趣味に関しては、許してくれているはずだ。

 ただ、漫画やその他のゲームならともかく、恋愛シミュレーションというのはまずいのだろうか。なんだか、段々と自信がなくなってきた。


≪所で、誰を攻略してるの?≫

≪春香だが……≫

≪幼馴染じゃん≫

≪別に幼馴染というだけで選んだ訳ではない≫

≪ああ、ピンク髪だから≫

≪俺は黒髪の方が好きだ≫

≪いや、それはのろけじゃん≫

「……」


 メッセージを返しながら、俺は自分がドツボにはまっていることに気付いた。

 月宮のからかいを一々取り合ってはいけない。いつだったか水原に言われたことを、俺はそこで思い出した。


「敵わんな……」


 そんなことを思いながら、俺はふと窓の外を見る。

 一年前の俺は、きっとこんな風に友人とメッセージのやり取りをするなんて思ってもいなかっただろう。それだけでも、俺にとっては大きなイベントといえるのかもしれない。


「今年は暑い夏になりそうだな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ピンク髪のヒロインは地雷だって異世界恋愛のご令嬢たちが言ってたよ
[一言]  友人って月宮さんだったのか~w  てっきり立浪くんかと思って読み進めてました。  確かに揶揄い上手なイメージで、読み返してみたら違和感ないッスね。  今でも赤いメッシュ付けてるんでしょう…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ