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【連載版】結婚の約束をした幼馴染と再会しましたが、陽キャになりすぎていて近寄れません。  作者: 木山楽斗
after 二人の日常

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第124話 約束は少し先送りということになった。

「……そういえば」

「うん? どうかしたの?」


 そこで俺は、とあることを思い出した。

 テストの前に、俺は由佳と約束していた。いい点数が取れたら、彼女の言うことを何でも聞くと。

 結果として、由佳はいい点数を取った。ということは、その約束を果たさなければならない。


「由佳は、俺に何を頼みたいんだ? 望みを叶える約束だっただろう?」

「あ、うん。それはね。決まってるんだ……でも、もう少し後にしようかな? ほら、体育祭とか色々あるし」

「体育祭か……まあ、確かにそれが終わってからの方がいいのだろうか」


 現在、俺は体育祭に向けて特訓中である。その特訓の邪魔をしないように、例の約束を先延ばしにしてくれているのだろう。

それなら、その想いに応えなければならない。体育祭で、少なくとも人並みくらいには動けるようになっておきたいものである。


「あ、でも、ろーくんの方もお願いはあるよね? それはどうする?」

「え? ああ……」


 由佳の言葉に、俺も同じようにお願いができるという事実に気付いた。

 そのことについては、正直あまり考えていなかった。すっかり頭から抜けてしまっていたのだ。

 ただ、それは別に望みがなかったからという訳ではない。叶えてもらいたい望みが多すぎてまとまらず、結果的に結論を先送りにしていたのである。


「実は俺の方はまだまったく決まっていないんだ。頼みたいことが多すぎるからな……」

「あ、そうなんだ……別に一つじゃなくてもいいよ」

「いやいや、それは約束が違うだろう。俺も一つに絞るさ」

「そっか……」


 由佳はなんというか、俺の頼みをいくらでも聞いてくれそうな雰囲気だった。

 それに甘えたいという気持ちはあるが、それは流石にやめておいた方がいいだろう。

 一度由佳に甘えてしまうと、それから溺れかねない。欲望というものは、ある程度抑制するべきであるだろう。


「よく考えてみれば、そうなるよね。私の方はお願いしたいことがあって提案した訳だから、他の選択肢なんて考えなかったけど、私もろーくんに頼みたいことなんていくらでもあるし……」

「まあ、俺の方も由佳の頼みなら何でも聞きたいとは思うが……」

「あはは、ご褒美の意味がなくなっちゃうね……」

「それではいけないから、考えなければならないという訳だ」


 ご褒美というものは目標になる。これからも何かを成し遂げるためにも、こういった線引きは大切なはずだ。


「……もしかしたら、私とろーくんのお願いが一緒になるなんてこともあるかもしれないね?」

「む? 確かにその可能性もあるのか……それはなんというか、お互いに少し損をすることになるな」


 由佳の指摘に、俺は再び考えることになった。

 例えば、どこどこにデートに行きたいといった願いであるならば、それが一致するということもあるかもしれない。

 しかしそれでは、少しもったいないような気がする。せっかくなので、由佳のお願いとは少しずらした方がいいかもしれない。


「被るのを避けるためには、由佳のお願いを聞いてからお願いを考えればいいのか……」

「え?」

「それなら被ることはないだろう?」

「まあ、それはそうだけど……でも、別に被ってもいいんじゃない?」

「そうだろうか?」

「ろーくんと私がしたいことが一致しているなら、なんだか嬉しいもん」

「なるほど……」


 由佳の笑顔に、俺は少しだけ苦笑いをすることになった。

 これはもしかしたら、俺は願いを被らせなければならないのかもしれない。なんとなく、由佳が一番望んでいるのはそれな気がする。

 ただそれは、とても難しいことだ。被る可能性の方が遥かに低いのだから、被らせるとなると難題である。


「まあ、そういうことならゆっくりと考えさせてもらおうか。幸いにも、時間はそれなりにある訳だしな……」

「そうだね。体育祭まで、一週間はあるもんね」

「この土日はどうする? どこかに行くか?」

「ろーくんは行きたい? 今週は疲れていると思うけど……」

「それは……」


 由佳の言葉に、俺は言葉を詰まらせた。その指摘がその通りでしかなかったからである。

 正直、特訓によって今週はくたくただ。もちろん出かけられない訳ではないが、できれば家でゆっくりとしたい気分である。


「それなら、今週は家でゆっくりしよう? ああでも、土日も訓練するんだよね?」

「ああ、そうだな。ありがとう、助かるよ」

「別にお礼を言われるようなことではないかな。ろーくんと家でまったりする時間は楽しいし」


 由佳はそう言って、笑顔を向けてくれた。

 こうして俺達は、体育祭が終わるまではまったりとすることを選んだのだった。

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