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第111話 幼馴染はテストに手応えを感じているようだ。

「……なんだかすごく変な感じがする」

「変な感じ?」

「達成感みたいなのがある。手応えって言った方がいいのかな?」

「へぇ、それは確かに珍しいわね」


 テストが終わってから、由佳と四条はそのような会話を交わしていた。

 どうやら、由佳はテストに対してある程度の自信があるようだ。

 それはもちろんいいことである。教師役を務めた俺としてもなんだか誇らしい。


「でも良かったじゃない。頼りになる彼氏のおかげということかしら?」

「あ、うん。そうだね。これはろーくんのおかげだよ。ありがとう、ろーくん」


 そこで由佳と四条は、俺の方に目を向けてきた。

 ただ、そのお礼はまだ早いような気がする。なぜなら今日はまだテストの初日だからだ。


「由佳、お礼はまだ少し早いだろう。それは、後四日乗り切れたら聞かせてくれ」

「あ、そうだよね……まだテストはあるんだもんね」


 俺の言葉に、由佳のテンションは少し下がっていた。

 もしかして、俺は返答を間違えただろうか。ここは乗っかって、よく頑張ったと褒めるべきだったかもしれない。ここで気を抜いて後のテストに響くのも良くないと思ったのだが。


「ふぅん……」

「な、なんだ?」


 そこで四条が、俺によくわからない視線を向けてきた。

 それは俺を咎めているような気もするし、感心しているような気もする。一体、それはどういう意図の視線なのだろうか。


「あんたが意外と厳しいから少し驚いていたのよ」

「何?」

「もっと甘々な感じだと思っていたから、意外だったのよ」


 四条の言葉に、俺は複雑な感情を抱いた。

 彼女の中で、俺は由佳にどのような感じで接していると思われているのだろうか。

 それを考えると、なんだか少し気恥ずかしくなってきた。こういう時には、どういう反応をするべきなのだろうか。


「ろーくんはそんなに厳しくないよ。厳しさでいったら、涼音の方が上だと思う」

「涼音ね……そういえば、千夜は大丈夫だったのかしら?」

「どうだろう? まあ、涼音がマンツーマンで教えていたんだから、多分大丈夫だとは思うけど……」


 由佳的には、俺は水原よりも厳しくなかったようだ。

 もちろん、俺も厳しかったつもりはない。大切な由佳に厳しく接するなんて、余程のことがない限りは無理だ。

 ただ、俺は少し水原のことが気になっていた。月宮は彼女との勉強から逃げ出した訳だが、それはやはりスパルタだったからなのだろうか。


「まあ、そういうことは本人に聞いてみるべきよね……あっ」

「舞? どうかしたの?」

「千夜の嘆きが……」

「ああ、やっぱり自信はなさそうだね……」


 四条は由佳にスマホの画面を見せていた。恐らくそこには、月宮からのメッセージが表示されているのだろう。

 会話の内容的に、月宮は手応えを感じられていないようだ。それは少々心配である。赤点をなんとか回避できていればいいのだが。


「なんというか、由佳と千夜で随分と差がついたものね……」

「あ、それは確かにそうかもね。昔は千夜と一緒に嘆いていたもん」

「千夜も彼氏ができれば変わるのかしらね?」

「それはどうだろう? 人によるんじゃないかな?」

「……まあ、確かに千夜はそういう感じではなさそうよね。そもそも、あんまりそういうことに興味がなさそうだし」


 俺からすると、由佳が勉強にやる気が出せなかったというのは最早信じられないような事実である。

 テスト期間中一緒に勉強したが、彼女はとてもやる気に満ち溢れていた。集中して勉強していたし、勉強がそこまで嫌いだとはあまり思えなかった。

 ただよく考えてみると、俺も彼女と同じであるような気もする。俺もいつより勉強に集中できていた気がするし、やはりお互いの存在が良い影響を与え合っていたということなのだろう。


「さてと……すっかり話し込んじゃったけど、そろそろ帰らないとね。明日からの教科の勉強をしないと」

「あ、そうだよね?」

「由佳は今日も彼氏と勉強?」

「うん。ろーくんに最後まで教えてもらうつもり」

「ふふ、本当にやる気があるわね?」

「うん。いい点数だったらご褒美もあるし、やる気はかなりあるかな」

「ご褒美……まあ、そういうのは確かにやる気に繋がるかもしれないわね」


 四条はまたこちらに、楽しそうな表情をしながら視線を向けてきた。

 それに対して、俺は顔をそらす。やはりなんというか、気恥かしったのだ。

 しかし由佳は、一体何を要求しようと思っているのだろうか。もちろんできる限りは叶えるつもりだが、少々不安もある。

 ただ同時に楽しみでもあった。由佳の喜ぶ顔が見られるというのは、俺にとって何よりも嬉しいことだからだ。

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