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【連載版】結婚の約束をした幼馴染と再会しましたが、陽キャになりすぎていて近寄れません。  作者: 木山楽斗
after 二人の日常

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第101話 未来のためにも今は勉強しておくべきである。

「由佳、現実から目をそらしても仕方ない。再来週が中間テストであるということを自覚しよう」

「……やだ」

「やだじゃないだろう……」


 俺の言葉に、由佳は口を尖らせて抗議してきた。

 その仕草はとても可愛らしいのだが、俺は頭を抱えてしまう。

 どうやら由佳はかなりテストが嫌なようだ。もちろん気持ちはわかる。しかしそれで追試になったり落第したりしたら目も当てられないので、ここは心を鬼にするしかないだろう。


「由佳、俺は由佳と一緒に三年生になりたいと思っている。由佳はそうじゃないのか?」

「それはもちろんそう思うけど……」

「それならちゃんと勉強はしよう。追試に追われるのは由佳だって嫌だろう?」

「うん……」


 俺は由佳をゆっくりと抱きしめながら説得した。

 ただ少し気になることはある。彼女は今まで大丈夫だったのだろうか。一年の時も、当然テストはあったはずだが。


「……一年の時はどうしていたんだ?」

「涼音が勉強を教えてくれてたの……涼音は頭がいいから」

「水原か、なるほど……」


 水原は四条一派の中で最も真面目と噂されている。その噂に違わず彼女は、それなりに成績がいいみたいだ。

 そういう存在が近くにいたため、今まではなんとかなっていたようである。それなら今回も、水原に頼るということでいいのかもしれない。口振りからして、水原に勉強を教えてもらっていたのは由佳だけではないのだろうし。


「それなら四条一派で勉強会という訳か?」

「いつもはそうしてる」

「それなら今回もそうするか?」

「……ろーくんが教えてくれるならそうしてもらいたいかな。三人に教えるのは、流石に涼音も大変そうだったし」

「なるほど、心得た」


 俺は、由佳の頭を撫でながら彼女の要請を受け入れた。

 当然、俺が教えることも考えていたことではある。ただ四条一派で勉強した方が捗るのではないかと思って、それは提案しなかった。しかし水原の負担を考えると、俺が由佳に教えるべきだろう。


「ろーくんは勉強できるの?」

「人並みにはできる方だと思う。成績的には中の上くらいだっただろうか?」

「私はいつも中の下くらいだったから、ろーくんに色々と教えてもらいたいな」

「もちろんだ」


 由佳の成績は、そこまで悪いという訳ではないようだ。中の下なら基本的には大丈夫だろう。

 もちろん、油断したら大変なことになる可能性はある。というか俺だって別に安泰という訳ではないのだから、しっかりと備えておかなければならない。


「あ、でもテスト期間は月曜日からだよね? だから今日と明日は遊んでもいいんじゃないかな?」

「由佳、気持ちはわかるが思い立ったが吉日ということもある。まあ、今日は引っ越しの片づけがあるからともかく、明日からはテストの準備を始めよう」

「ううっ……やっぱりそうなるんだね」


 俺の腕の中で、由佳は明らかに落ち込んでいた。

 罪悪感が押し寄せてくるが、俺はそれを振り払う。

 結局勉強せずに遊んで追試になったら、結果的に遊ぶ時間は減るのだ。未来のためにも、今は勉強した方がいいに決まっている。


「あ、でもそれなら今日の夜から始めない?」

「今日の夜から? それはもちろん構わないが、急にどうして?」

「ろーくんの家に泊まれないかなって思って……引っ越したばかりだし、図々しいお願いのような気もするけど……」

「なるほど……それなら今日は泊りに勉強会ということにしようか」

「えへへ、嬉しいな……」


 自意識過剰かもしれないが、どうやら由佳は俺と一緒にいられるという事実によって、勉強にやる気を出してくれているようだ。

 別に勉強会という口実なんてなくても、由佳を泊めることはまったく構わない。しかしそれを今言うと彼女のやる気を削いでしまうかもしれない。そのため、ここは黙っておいた方がいいだろう。


「でもろーくん、少しくらいは遊んでもいい? 勉強ばかりじゃなくても、息抜きも必要だと思うんだけど……」

「それはもちろんだ。まあ由佳の言う通りまだテスト期間ではない訳だし、今日と明日は緩めに勉強するとしよう」

「それなら全然大丈夫かも。ろーくんと遊べるって思ったら勉強も頑張れそう」

「そうか。それなら良かった」


 先程までと比べて、由佳はかなりやる気を出してくれているような気がする。

 ちなみに俺も、結構やる気が湧いてきていた。普段は億劫でしかない勉強も、由佳と一緒だと思うと楽しみとさえ思える。

 そこで俺は改めて理解した。由佳と一緒なら、本当になんでも楽しめるのだということを。それが例え勉強であっても変わらないのだ。彼女と同じ時間を過ごせるというだけで、俺は普段嫌なことでも楽しみになるのだろう。

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