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初めての屋上

「いいもの見せてあげる」一青は笑みを浮かべて言った。


何も考えてないんだろうな。と俺は思った。能天気なところは友達ににていると思った。だけど違う。こいつはポジションというものを理解できていない。立場というものを。


ゆっくりと一青は歩き始める。俺は一青の後ろについていった。


一青は廊下を通り階段を上り続けた。


部活にもう行ったか家に帰ったかで学校は静かだった。


「え?。。ここって」『立ち入り禁止』と書かれた屋上の入口だった。


「屋上だよ」一青はそう言ってドアノブをガチャガチャ揺らすするとカチャという音が鳴り扉が開いた。


開いた?鍵がかかってるんじゃ。。


「ここのカギね揺らすとはずれるんだよー」のんきに言った。


「ばれたら。。」「そんなの気にしない気にしない。どーせ屋上に来る人なんていないでしょ」そういって屋上に足を一青は踏み込んだ。


俺はすこし戸惑っていた。これで見つかったらどうしようと。だが、一青の言う通り、誰も屋上には来ないはずだ。大丈夫。俺は自分に言い聞かせて屋上に入った。


風が駿に吹き付けた。まぶしすぎて俺は目を細くした。目の前には一面に青い空が広がっていた。


誰もいない空間。違う世界みたいなような場所が広がっていた。空は雲一つないいい天気だった。俺は今日初めてそれに気づいた。


「すごいでしょ」一青が言った。


「うん。」俺は言った。屋上からグラウンドを見下ろす。


そこにはソフト部と野球部が練習に励んでいる姿が目に映った。


「あんま乗り出さないほうがいいよ。ばれるからー」一青はそう言いうと俺はそうかと思い見下ろすのをやめて屋上の中心に行った。


一青はいつの間にかスケッチブックを取り出して、何かを描き始めている。


「何かいてんの?」俺は一青に聞いた。


一青はこちらを見る。そして瞬時にスケッチブックを閉じた。


「教えない」いつもの楽しそうな笑顔で言った。


俺は、そこにあおむけに寝転がった。


一青はまたスケッチブックを開いて楽しそうに何かを描き始めた。


青い空にふよふよと雲が浮いている。昼寝ができそうな天候だ。一度も屋上に入ったことなかった俺は屋上というのはドラマでしか見たことがなかった。


「屋上気に入った?」一青が俺に話しかける。


「まあ。。。ここ、毎日来てるの?」


「日によるねー、でも毎回絵描きに来てる。」


「絵、かいてるんだ。」


「あ。ばれたw」


「何描いてるの?」


「言わないーい」


「美術部で、絵描くとかしないの?」


「しない、屋上で絵描くのがいいの。あ、だから天候の悪い日、とかはきてない。絵描けないからね」


「絵うまいの?」


「どうだろうねー」とぎれとぎれに終わりそうになる会話を俺たちはした。


いつの間にか一時間がたっていた。


太陽は傾き始めていた。


「俺もう帰る」俺はそう言った。


「私も今そう言うとした。」一青が言った。


俺は屋上から出た。


そして誰もいないことを確認する。


一青は屋上の扉をガチャガチャと揺らす。すると鍵がかかった。


誰もいないことを俺はもう一度確認する。そして俺は屋上への階段を下りた。


ここからはもう大丈夫。俺は胸をなでおろした。そして、一足先に自分の教室へ行った。カバンを持ち誰かが来る前に俺は学校を出た。



はじめての屋上。一青はなんであんな場所に毎回いっているのだろうか。その疑問が頭にこびりついて離れなかった。そして宿題にある課題にもあまり集中できなかった。



俺は次の日教室に入る。今日も友達三人は来ていなかった。


俺は小さくため息をつく。


多分誰にも聞こえていなかっただろう。


そう思ったが、バンっと背中をたたかれて俺はびくっとした。


後ろを恐る恐る振り向く。


後ろには一青がいた。


いや、一青がいるのは当たり前だ。


席は俺の後ろなんだから。


だけど背中をたたいてくるとは思わなかった。


俺は少しあたりを見回す。


誰も今のは見なかったようだ。


俺は胸をなでおろした。俺は一青にいかにも嫌そうな顔をして無視した。


一青の考えていることはわからないが、そのあとは何もしてこなかった。


俺はすこし、こころのどこかで一青にびくびくしながら過ごした。


いつもよりも距離を置いて、いつもよりもあいつから遠ざけた。部活仲間の友達と休憩時間話しているときに一青をチラ見した。


ニコニコしながら席に座って窓から外を見ていた。


まったく考えていることがわかんない。だけどあいつとかかわったら終わりだ。


俺はそれだけを知っていた。



だからできるだけ、できるだけあいつから遠ざける。


あいつからできるだけ遠ざけて約一週間がたった。


なんともないいつもの月曜の朝。俺は気分が乗ったので少しだけ早く学校に登校することにした。


家は学校に近いので友達とは基本的には誰とも一緒にはいかない。


俺は教室に入り、いつものように席に行く。クラスの2割が教室に来ていた。「


おっ、おはよー。今日は早いな。」インフルで休んでいた友達が言う。


「まあな。インフルどうだった?」俺は聞いた。「きついわ。もうかかりたくねー」友達アキトは言う。


「というかなんでお前だけかかってねーんだよ」ほかの友達ケイがいう。


「まじでそれな。」アキトはそれに答えた。


「別に俺だってくろーしてたよ」


「苦労って?俺たちこの一週間いなかったから補習あるんだぞ塾の。もうまじでめんどい。」アキトは言った。\


「お前ら部活ないから大丈夫だろ。」俺は言う。


「部活にも塾にも入ってない人い言われたくありませーん」アキトは言う。いつものんきな奴は誰かに似ている。おれはふとそう思った。まあいい。あいつのことは忘れよう。

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