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エピローグ 世界は進む

「え、ミスミくん、『魔王』になったの?」


 ものすごーく簡単に今までの流れを聞いて、私はまじまじと彼の顔を見つめた。

 多分、簡単に言っているけど、ここに来るまでに彼が辿った道は平坦では無かっただろうし、きっと辛いこともあったと思う。

 でもそこを深く聞かず、きっと私に気を遣わせたくないと思ったんだろう彼の気持ちを汲む事にした。


「あんまりそんな感じがしないわね」

「魔力を全部、体を新たに作るのに使っちゃったので、しばらくはちょっと魔力が強い騎士クラスでしょうか。まあ、それでもアレクには負けませんけど」

 そう言うと、ミスミはくるりと回ってみせる。見た目は、アレクと瓜二つ。というか、元々は同じ存在なんだし似ていて当たり前か。


「魔王って隣国を蹂躙してなかった……?」

「最初に同盟関係を結びましたので、偽の情報を流してもらってたんですよね。隣国は平穏無事です」


 私は気を遣って二人きりにしてくれたソフィアが居るはずの隣室に顔を向ける。

「昨日、僕が隣国の国王に用意してもらった信書を持って来たので、それまではソフィア殿下も知らなかったんですよ」

「それ、国同士の問題にならなかったの?」

「そこは、充分に僕からも『お願い』したので」

 いい笑顔だけど、一体どんな『お願い』の仕方だったのか。


「何とか女神に力を使い切ってもらって、最初に戻されない様にしないといけなかったので、大忙しでしたよ」

 笑顔のままのミスミ。

「だから、がんばった僕にはご褒美が必要だと思うんですよね」

「そう、わかったわ」

 私はミスミを引き寄せる。少し背伸びしないと届かない事にちょっと驚きながら、目を見開いている彼の唇に自分のそれを乱暴に重ねた。


「私ね、貴方が来なくなってから、ずっと調子が悪かったわ」

 顔を離して拗ねた様に言うと、ミスミの手が私の頭の後ろにそっと添えられた。


 大人しく目を閉じる。

 二度と離れたくないとでも言う様な、深い口付け。


「息、できない、わよ」

「そこはこう、上手に息継ぎしてください」


 それだけ言って、もう一度。


 酸欠と羞恥と、それから歓喜と。

 私はくらくらする頭を抱えて、大きく息をする。


「手加減して頂戴」

「無理ですね、僕、随分我慢したんですから」

「わかったわ、わかったから後で!」


 私が真っ赤な顔で必死に抵抗すると、ミスミはようやく体を離した。手は離してくれなかったけど。

「そういえば、さっき、アレクに何を言ったの?」

「男同士の大事な秘密です」

 ミスミはそう言い、それから本当に嬉しそうに私を見た。


「じゃあ、みんなで帰りましょう、僕たちの『城』へ」

「そうね、とりあえず帰りましょうか」

 私は同意して、ミスミと笑みを交わす。


 悪役のユリアは終わり。これからはどんな役でもない私自身として生きていく。


 それは、この上なく幸せである様に思えた。

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